第98回   油断大敵。紫外線。
2014年5月22日  
 
 

 今の時期は、やっと太陽がさんさんと輝き、気候も穏やかで、1年のうちでも最も爽やかな季節ですので、外に出て太陽を一杯浴びたい気分になります。しかし、この優しそうな太陽の光の中で、紫外線が夏に向けて密かに強くなっている季節でもあります。愛読者の皆さんの中でも、若い女性は紫外線に対して特別な神経を使っていらっしゃると思いますが、男性や熟年の皆さんの中には無頓着な人が意外と多いように感じます。しかし、油断禁物です。それは紫外線が我々に重篤なダメージを与えるからです。
 先ず、紫外線とはどんなものなのかについて少し考えてみましょう。実は私も良く解らなくて付焼刃の知識ですので、適切でない部分が有るかと思いますが、そこは大目に見てください。
 紫外線とは、地球に到達する太陽光線のうち、波長が可視光線より短い不可視光線の電磁波で、光のスペクトルで紫よりも外側になるのでこの名が付いたと云うことです。英語のultravioletを略してUVと呼ばれています。紫外線はその波長の長さによってA波(UVA)、B波(UVB)C波(UVC)に分けられます。UVCはオゾン層に阻まれ、地上には届きませんので、地上に届くのは、UVAとUVBという2種類の紫外線です。太陽から地球に到達するまでに紫外線は、成層圏オゾン、空気分子、エーロゾル(大気中の浮遊微粒子)、雲などによる吸収や散乱の影響を受けてしだいに減衰します。そのため、地上での紫外線強度は上空のオゾン量やエーロゾル量、雲の状態により変化します。因みに、紫外線は1年のうちでは夏、1日のうちでは昼頃、地域的には低緯度で強くなります。 又、オゾンが減ると強くなり、標高が1000m高くなると約10%強くなります。近年、紫外線を浴びすぎると皮膚がんや白内障などにかかり易いことが明らかになっており、さらにオゾン層破壊によって地上に到達する紫外線が増加していることから、世界保健機関(WHO)ではUVインデックス(UV指数)を活用した紫外線対策の実施を推奨しています。 UVインデックスとは紫外線が人体に及ぼす影響の度合いを指標化したもので、環境省の“紫外線環境保健マニュアル”の中でもUVインデックスに応じた紫外線対策の具体的な例が示されています。又、気象庁では、日々の紫外線対策を効果的に行えるように、UVインデックスを用いた“紫外線情報”を提供しているそうですので、気になる方は利用されると良いと思います。
 さて、これからが本題ですが、紫外線を過度に浴びると、皮膚や眼に障害を受けます。先ず、紫外線の皮膚に与える影響ですが、これには、急性反応と慢性反応があり、急性反応は日光曝露後数時間後〜数日後に出現するもので、サンバーン(紅斑反応、いわゆる日焼け)、サンタン(黒色色素沈着)、免疫能低下などがあげられます。一方、慢性反応は日光の反復照射により数カ月〜数十年後に出現するもので、皮膚腫瘍の発生、しみ、しわなどの光老化による皮膚障害があげられます。いずれも、皮膚の表皮細胞の遺伝子DNAがUVBやUVAを吸収して、障害を受けることが主な原因だと云われています。もともと人体にはこの紫外線による遺伝子の障害を修復する機能が備わっていますが、慢性的に何度も紫外線を浴びているうちに遺伝子の損傷が蓄積されて、しみの出現や、悪性、良性を含めた皮膚の腫瘍が発生します。 また紫外線は、DNA損傷以外に、直接的に細胞質や細胞膜に作用して真皮内の線維芽細胞を刺激したり、活性酸素を発生させたりします。これにより、皮膚のハリや弾力性を担っているコラーゲン線維を切断する酵素を生成することで、しわが誘発されます。これらの慢性的な紫外線による皮膚の退行現象を光老化と言いますが、もともと皮膚は加齢による生理的な退行変性もあり、これに光老化が重なって、年齢を重ねるにつれ皮膚は衰えていくことになりますので、皆さん美容のためにも、健康のためにも“日焼け”は避けましょう。一方で、普通の人が浴びても問題のない程度の普通量の紫外線でも健常皮膚に発赤や浮腫あるいは発疹など、太陽光にさらされた皮膚にかゆみを伴う皮疹ができるのが特徴な病気に紫外線(日光)アレルギーがあります。薬剤や化学物質などが原因となる外因性光線過敏症と、代謝障害や遺伝子異常など生体内の異常に伴って出現する内因性光線過敏症とに大別されます。以前は赤ちゃんには日光浴をさせるよう、母子手帳にも記載されていました。それはビタミンD生成のためでもありましたが、現在は指標から外れました。理由の一つは“色素性乾皮症”と云う病気のためです。この病気は、生まれて太陽光線を浴び、しばらくすると皮膚に強い紅斑や水泡などの症状が現れ、高い確率で皮膚がんを引き起こす、予後の悪い遺伝性の病気です。現在の所では根本的な治療法は、紫外線を浴びないことしかないと云う難病です。
 次に眼の病気ですが、紫外線の曝露により、角膜炎・結膜炎がみられます。とくに、雪・氷上作業者にみられる角膜炎・結膜炎を雪眼炎と云い、紫外線に曝露した6〜24時間後で、夜間に激烈な眼痛、まぶしさや涙が流れ、眼があけられなくなる症状が出ます。又、翼状片と云って、白目の組織細胞が異常に増殖して黒目に食い込んでしまうものや、水晶体の混濁を来す白内障を起こすことがあります。
 いずれにしても、生活している限り、紫外線を完全に遮断することは不可能ですので、この紫外線をいかに防御するかということが重要になってきます。紫外線対策としては頭、顔、首など上半身を防御するには日傘をさすことが有効です。帽子もツバの広いものなら有用です。眼の防御も重要でUVカット加工のサングラスが有効です。しかし、皮膚への紫外線防御として最も効率が良いのは日焼け止め(サンスクリーン剤)を直接皮膚に外用することのようです。

 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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