第79回   山中伸弥教授、ノーベル賞受賞に感激!!
2012年10月19日  
 
   京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学生理学賞を受賞されました。ノーベル賞は日本人として19人目で、医学生理学賞としては25年ぶり2人目だそうです。ただ、前回の利根川博士はお医者さんでは無いので、医者としては日本人で初めてになります。
 実は私は、彼とは知り合いどころか、まったく面識もありませんが、同じ医者と云うだけで、何だか親しい仲間か、親戚が賞を取ったような気がして、今までのノーベル賞受賞の報を聞いた時とは、全然違って数倍浮かれた嬉しい気分になっています。
 不思議ですねぇ・・・、勝手な同業者意識でしょうか。山中教授にはハタ迷惑なことかも知れませんが、まあ目出度い話ですからお許しください。
 それにしても、異例に早い受賞でしたね。ヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作製してたった6年のスピード受賞ですから・・・。普通は最初の基礎的な発明なり発見が成されて、それが社会に評価されてから、しばらくしてやっと受賞するケースが多いので、すでに現役を離れた名誉教授的な、今や功成り名遂げたお年寄りが対象者のような気がしていました。しかし、今回は違います。現役バリバリの若き50才の教授が、まだ臨床的には患者の役に立ってない時期に受賞したのです。よっぽどこのiPS細胞は将来の実用化を期待されている素晴らしい研究なのでしょう(iPS細胞の無限の可能性については新聞などで解りやすく報道されていますのでここでは省略します)。
 その辺は、本人も自覚しておられて、NHKの最初のインタビューでも、"感謝と責任"と云うことを強調されていました。ただ、"感謝"の対象に、京大の仲間や、家族だけでは無く、"日本全体で支えてもらった。日の丸がなければ受賞できなかった。まさに日本と云う国が受賞した賞だ。"と日本を強調されたのにチョッと驚きました。しかし、考えてみれば、今までの受賞者は、自分は日本人ですが、研究そのものはほとんど外国、特にアメリカでしている人が多く、しかもアメリカの施設やスタッフ、さらには研究費まで使って業績を残し、名誉だけ日本へ持ち帰るようで負い目を感じていました。今回、山中教授は基礎的な基盤はやはりアメリカ留学で築かれたようですが、iPS研究に関しては日本の施設で日本の研究費で成し遂げた仕事だと云う自負を込められたように思います。
 一方、"責任"に関しては、"一日でも早く実用化して患者さんに届けるのが今後の使命だ。明日からでも研究に戻りたい。"と言葉強く述べられていましたが、ある意味今回のノーベル賞はそれを催促されたようになりました。又これに呼応するかのように、文科省が研究費をiPSの臨床研究に10年間で200〜300億円付けると云うことです。これも今まであまり聞いたことのない異例の話です。今までは、評価が確立し成果が出た後での受賞でしたので、研究費の話などは無くて、お金の話と云えば、ノーベル賞の賞金が1億円だとか、最近はユーロ危機で少し減ったとか、複数で受賞すると人数割するから少なくなってしまうとか、どちらかと云えば下世話なことが話題になっていました。
 下世話ついでに、下衆の勘繰りですが、山中教授はこの偉大な知的財産をどのように守るのでしょうか。これだけの財産ですから、特許を取って利益を得ることも出来ます。しかし、彼は"自身の利益は全然考えていないが、外国に特許を独占され、日本の医療費が高くなるのも避けたい。日本発の技術をメイドインジャパンで活用したい。"と云っています。確かに外国のメジャー製薬会社が資金力に物を云わせて、最初に新薬を開発して特許を取って大儲けしても腹立たしい気がしますが、一方で、少しでも早く研究を進めるためには一部を公開することも必要でしょうし、その辺の折り合いをどのようにつけるのか心配です(そんなこと、私が心配しなくても優秀な彼は充分考えていると思いますが・・・)。
 新聞にも"偉ぶらぬ超人""衰えぬ使命感"とありましたが、受賞後の彼のコメントが何時も謙虚で、しかも如何にも医者らしい夢を語っているのに好感が持てます。一方でナショナリズムをくすぐるような発言には共感出来ますし、又全てが優等生ではない若い頃のエピソードにも親近感を感じます。
 例えば、若い時手術で"じゃまなか"とか、"アシスタントでは無くてレジスタント"と云われたそうですが、私も先輩に同じようなことを云われて育ちました。外科系では誰でもそんな時期を乗り越えて一人前になるものですが、彼はそこで基礎医学の研究一筋に方向転換したところが凡人と違うところでしょうか。
 全くの無駄話ですが、私だって若い頃は大研究者を夢見て研究していました。当時(40年ほど前)産婦人科で最も最先端だった染色体グループに所属していましたが、飲み会などで"もし染色体異常が妊娠初期に胎内診断出来たらノーベル賞ものだね"と仲間同士夢を語り合ったものです。ところが10年位してそれが現実となり、胎児の染色体を羊水培養によって検索する方法が世界中のあちこちで発表されました(少し遅れて、我々のグループでも成功しました)。そして今ではごく普通に羊水検査が受けられるまでに普及しましたが、未だに誰もこの研究でノーベル賞を取っていません。どうやら大した研究ではなかったようで、夢もしぼんでしまいます。
 話題を戻して、ちょっと自慢ですが、当院の再生医療科では、これからiPS細胞を使って実用化しようとしている再生医療の部門と同じような治療を歯槽骨としわで、すでに6年前から実施しています。いずれも自己細胞を特殊な方法で培養して目的細胞に増殖させ、それを疲弊組織に移植して再生させる技術です。具体的には、歯槽骨移植は骨髄液にある幹細胞を培養し、歯槽骨細胞を選択的に増殖させて歯茎へ移植し、移植した歯槽骨細胞が化骨し歯茎を太く丈夫に再生してインプラントが打てるようにします。又、しわ治療は自分の皮膚又は口腔粘膜から線維芽細胞を培養増殖して、しわの部分に注入し、コラーゲンなどの細胞外基質を産生させて、皮下組織の再構築をうながし若いころの肌を再現するものです。今後、iPS細胞を利用すればこのような治療がすべての細胞、組織に応用できると期待されている訳です。
  山中教授並びに日本のiPS細胞研究者、皆頑張れ!!
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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