第152回   風疹が大流行の兆し
2018年11月20日  
 
 
 日本産婦人科医会から『妊婦さんへ風疹からの緊急避難行動のお願い』と云う風疹に関する注意喚起文書が送られてきました。
 要点は”今、大人同士の風疹が流行っており、軽微な症状の患者さんは医療機関を受診せずに感染力を持ったまま行動している場合があるので、妊婦さん(20週未満)が風疹に巻き込まれないよう注意、指導して下さい”と云うものでした。
 確かに今、関東地方を中心に風疹が流行っています。2012年、2013年にかけて、成人男性のワクチン未接種者を中心に大流行が発生して以来、5年ぶりの大流行の兆しです。
 昔から風疹は5〜6年周期で流行すると云われていましたが、乳幼児が定期接種の対象となってから、1992年の大流行を最後に暫く発生していませんでした。しかし、又流行がぶり返したのは、定期接種の制度が色々変わった歪が原因だと思われます。
 今年の第1〜43週の風疹患者累積報告数が1,692人となり、去年同時期の報告数79人の約21倍に増加しました。そして今月も増え続けているようです。
 本来、風疹は、風疹ウイルスによる発熱、発疹、リンパ節の腫れなどが主症状の急性熱性発疹性感染症です。伝染力は、インフルエンザよりは強いが、水痘(水疱瘡)、麻疹(はしか)よりは弱く、別名「三日はしか」とも云われ、乳幼児が罹患した場合は麻疹より短い期間で治癒する普通はあまり重篤な病気ではありません。唯、特効薬的な治療法は無く、発病すれば症状に応じた対症療法を行うことになります。唯一の発症防止策は風疹ワクチンの予防接種のみです。
 では何故、風疹が問題になるかと云うと、妊娠初期に妊婦が感染した場合、胎児にも感染して、眼、耳、心臓に障害をもつ先天性風疹症候群の児が生まれる可能性があるからです。幸い今回はまだ先天性風疹症候群の報告はありませんが、前回2012〜2013年流行時には45人が発病しました。
 先天性風疹症候群の発生を防ぐためには、妊婦さんへの感染を防止することが必須です。しかし、妊娠中は風疹ワクチンの接種を受けられませんので、出産希望の女性及び妊婦さんの周囲の人達の感染防止が重要になります。風疹ワクチンの定期接種が混乱していた、現在30〜50代の男性、同世代の女性の一部に風疹抗体陰性の人が多いので、風疹の感染拡大を防止するためにはこの世代の人達に注意喚起、即ちワクチン接種を促す必要があります。
 女性は妊娠2ヶ月前までに風疹ワクチンを受けておくこと。又、妊婦さんの周囲の人、特に30〜50代の男性で風疹に罹ったことがなく、風疹ワクチン接種歴の不明な人は、早めに風疹ワクチン接種を受けることです。
 風疹は風疹ワクチン接種でしか予防出来ない感染症ですので、現在、各自治体によって風疹ワクチン接種に対する公費負担をしています。ぜひ活用してください。
 余談ですが、前回流行時、愛知県産婦人科医会の会長をしていた私は、風疹ワクチン接種の公費負担に関して、愛知県や名古屋市と折衝したことを思い出します。折衝の詳しい内容に興味のある方は、第87回理事長コラムをご覧いただきたいと思いますが、要はワクチン接種だけではなく、抗体検査も公費負担にするよう要望したのですが、中々理解してもらえず、苦労したことを思い出します。
 今回の風疹の流行を受け、日本医師会は11月15日、感染の中心になっている30〜50代男性を含む全ての人への予防接種が可能になるよう対策を求める要請文書を厚生労働省に提出しました。厚労省は善処すると云っていますが、果たしてそれだけの予算が組めるか疑問です。又大量のワクチンがすぐ供給出来るのかも心配です。
 さて10月22日、アメリカ疾病予防管理センターは、日本の風疹警戒レベルを3段階中の2番目である「勧告」に引き上げ、アメリカ合衆国は妊娠中の女性に対して、風疹の予防接種を受けてない人は、感染の拡大が収まるまで日本への渡航をやめるよう勧告を出しました。日本が予防接種後進国であることは認めざるを得ませんが、ここまで云われるとまるで未開の地みたいで悲しい気持ちになりますね〜・・・。
 でも現在日本では風疹ワクチン(実際には風疹、麻疹両用のMRワクチン)を1才と小学校入学前1年間の2回公費負担で定期接種して風疹予防を徹底しています。又、妊娠適齢期の女性には抗体検査をして抗体の無い人、低い人はワクチン接種を受け、妊娠が成立する前に風疹ウイルスに対する免疫を獲得するよう推奨しています。
 最後に、厚労省は「早期に先天性風疹症候群の発生をなくすとともに、平成32年度までに風疹の排除を達成すること」を宣言していますので期待しましょう!?。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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