第12回  子宮頚癌は予防の時代へ! 2006年2月20日  
 
   今回はセンセーショナルなタイトルですが、先日開催されたある学会のセミナーに上記のような演題が付いていましたのでそのまま転用してみました。
 一昔前は演題名にはどちらかと言うと控えめに、誇大表現にならないように気を使って付けたものですが、最近は考え方も変わってきた様で、医学の世界でも如何に人を引き付けるか、アッピールするかが大事な事のようです。そう云う私も、この演題名に引かれて行った一人ですのでアッピール効果は充分だったと云うことです。しかしこの傾向が過熱して何処かの国の教授の様に捏造までしてしまっては論外ですが、、、。
さて、このコラムの大部分を占める若い愛読者(?)の皆様は、まだ私は癌年令では無いと考えていらっしゃると思いますが、油断大敵、子宮頚癌の場合は若年化が進み、今すぐの予防的健診が重要と云うことでしたので、セミナーのポイントを要約してお話します。
  癌の多くは未だに原因すら明らかになっていませんが、日本人女性に多い子宮頚癌に関しては、その原因が性交渉で感染するヒト・パピローマウイルス(HPV)であることがすでに解っています。HPVには100以上のタイプがあり、そのうち30タイプ以上が生殖器に感染します。これらは高リスク型と低リスク型に分けられ、13種類ほどのいわゆる高リスク型のグループが子宮頚癌を誘発します。HPVは性交経験のある女性では誰でも感染しうる、ごくありふれたウイルスで、50〜80%の人が一度は感染すると云われていますが、その多くは自己免疫力により自然に排除されます。約70%は1年以内に、約90%は2年以内にウイルスが消滅すると報告されています。しかし約10%の人に感染が長期化し、HPVの持続感染を起こして、子宮頸部の細胞に異常(異形成)を生じることがあります。その多くはやがてウイルスが消失し、異形成も治癒しますが、ごく一部が10年以上の歳月を経て異形成から子宮頚癌に進行します。
ここで問題なのは、近年の初交年令の低年令化に伴い、HPV感染が若年化していることから、20〜30才代の若い女性に子宮頚癌の発病が増えたことです。普通HPV感染から子宮頚癌に進行するまでには10年以上と報告されていますので、初めて性交渉を持った若い頃からHPV検査を始めれば、例えHPV感染が発見されてもその時点で癌になっていることはまずありません。しかし30才以上になって初めて検査したHPVが陽性の人の中には、子宮頚癌が見つかることは稀ではないのです。又、悪性病変が無くても、HPV感染が持続するようなら、その人は将来癌になるリスクがあることを意味します。
それではどうすれば良いのか、それは若いうちから子宮癌検診を受けましょうという事になります。それも初交年令から5年以内にHPV検査を始めて下さい。それでHPV陰性ならば、子宮頚癌の心配は無いと考えて良い訳ですが、ここで従来からの細胞診を併用することで正診率がほぼ100%に近づくと云うことでした。具体的にはHPV陰性、細胞診陰性なら、当分の間は子宮頚癌や前癌病変を引き起こす可能性はほとんど無いと考え、米国ガイドラインでは次回健診は3年後で良いとされています。HPV陽性、細胞診陰性の時は、初感染の場合と持続感染化している場合がありますので、6〜12ヵ月後再検査、その結果HPV陰性、細胞診陰性なら、初感染だったという事ですので3年後再検で良し、HPV陽性、細胞診陰性又は擬陽性なら、持続感染化している可能性がありますので子宮頚癌のリスクありと考え、精密検査が必要(コルポ診、組織診等)、その結果軽度異形成までの病変なら経過観察として、6ヶ月毎の検診を続けますが、高度異形成や上皮内癌であれば、浸潤癌になる前に円錐切除術等の前癌治療を行います。子宮頚癌の治療的手術は子宮、卵巣の全摘は勿論、リンパ節までも郭清する大手術で、妊娠どころか生理も止まり、排尿もまま為らないような悲惨なものですが、この円錐切除術だけで済めば、癌を予防できただけでなく、子宮も卵巣も温存出来るので妊娠、出産も通常どおり可能です。
 そんなこともあって、厚労省は子宮癌検診の年令を30才からいっきに20才に下げました。ただし残念なことに公費負担の内容は従来どおり細胞診だけで、HPV検査は未だ入っておりません。いずれ近い内に子宮癌検診は細胞診とHPV検査の併用となると思いますので、是非検診を受けてください。と言うのも、現在日本の子宮癌健診率は16%位で欧米諸国に比して極端に低いと云うことです。特に若い人の受診率が悪く、これでは折角の健診事業も効果が薄いと嘆いていました。折角予防が出来るようになったのですから、自分自身の怠慢で子宮頚癌に成らない様に気をつけましょう。
 
 
 
 
 
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