第22回   初夢は 快適、和痛、短時間分娩?!
2008年1月18日  
 
   理事長コラム愛読者の皆様、明けましておめでとうございます。
  新年のご挨拶が遅くなりましたが、今年初めての掲載が今日ですのでご容赦ください。
 何はともあれ、今年も引き続きお付き合いの程よろしくお願いします。
 月日の流れは早いもので、今年の4月で我、星ヶ丘マタニティ病院も開院30周年を迎える事になりました。弱冠38歳で大志を抱き、この病院を開設以来、波乱万丈、紆余曲折の30年に、私としては大変感慨深いものがあります。その悲喜交々に関しては4月以降に改めてお話しさせていただく積りですが、いずれにしても、今年は区切りの年として気分も新たに尚一層の飛躍を目指してスタートしたいと思っています。
 そもそも私が30年前に開業したのは、当時の患者不在、妊婦無視の産科医療に疑問を抱き、「患者さんに優しい周産期病院の確立」に挑戦してのことでした。それから30年、医療的にも、アメニティの面でも様々な改革、改善を実践し、当時に比べれば今は妊婦さんに取って随分快適な分娩が出来るようになったと思います。しかし、最も肝心な妊婦さんの分娩時の苦痛からの解放と云う大命題が未だあまり解決されていません。勿論、マタニティビクスとか、アロマセラピー、ラマーズ法等の和痛分娩、硬膜外麻酔による無痛分娩、陣痛促進剤の効果的使用による分娩時間の短縮等、それなりに成果も挙げてきましたが、まだまだ、苦痛に耐え切れずに帝王切開になる人が少なからずいます。最近は高齢出産が多くなった分、帝王切開が増えた印象すらあります。
 苦痛の原因は色々あるでしょうが、私の経験した数多くの妊婦さんの状況を総括すると、陣痛の痛みと、分娩時間の長さの二つに集約されると思います。陣痛の痛みに関しては短時間なら耐えられるが、長引くと我慢の限界を超えてしまうと云う事ですので、結局は分娩時間を短くすることが究極の目標になります。
  分娩が始まってから、あまり痛みも感じないうちに数時間で子宮口が全開大し、児娩出期には少しは陣痛の痛みを感じるが(出来ればこの時期でも痛みを感じないで)短時間で娩出し分娩が終了する。
 実はそんな夢のような分娩が出来るようになりそうなのです。それはプロスタグランディン(PGE2)の膣錠を使う方法です。陣痛促進剤として既に一般的に使用されているプロスタグランディン(正確にはPGE1,PGE2,PGF2αの3種類)と云う薬がありますが、この薬は経血管投与(注射剤)や、経口投与(内服剤)より、直接膣や子宮頚管内に投与した方が効果が優れていることが解っています。しかもPGE2の頚管内投与の場合は子宮頚管軟化作用が著明であることも解ってきました。文献によれば、絶対的帝王切開術適応症例を除く、24例の初産婦にPGE2膣錠(1mg含有)1錠を後膣円蓋部に挿入する事によって、全例経膣分娩に成功し、しかも分娩所要時間が2〜6時間台に集中した。又、新生児のアプガールスコアも正常で、過強陣痛も起こらなかった。一方全く自然に経過した20例の分娩時間は最短6時間5分、最長39時間5分とバラバラで平均16時間を要した。しかも胎児の状態悪化による帝王切開が4例もあった。と報告しています。又別の文献ではPGE2の強力な頚管軟化作用によって和痛効果が生じ、陣痛の痛みをそれほど感じないと報告しています。ですから、この方法が普及すれは分娩の苦痛を軽減し、お産に対する女性の恐怖心を和らげ、挙児希望が増えて、少子化対策にも役立つでしょう。一方、分娩時間の短縮だけでなく、分娩時間の予測も出来ますで、日中計画分娩には最適な方法です。例えば、朝9時に入院して、治療を開始すれば6時間以内の午後3時までには分娩が終了することになりますから、スタッフの多い日勤時間帯の分娩となり、異常の起こった時でも患者さんにとっては安全ですし、産科医、助産師不足で医療崩壊状態にある、産科医療にとっても過重労働を少しでも減らせることになります。上手に活用すれば、妊婦さんが楽なだけでなく、産科医療に大きな福音をもたらす有益な方法になるだろうと期待されます。ただ残念な事に未だ日本ではこの膣錠は発売されていません。分娩促進剤に対する厚労省のヒステリックなまでの神経質な対応の為、未だに認可が下りないのです。プロスタグランディン開発に関して日本は先進国でしたが、厚労省の消極的姿勢のため、研究が進まず、今では外国に遅れを取ってしまいました。折角日本で研究された方法なのに日本の妊婦さんに活用出来ないとは残念な事です。
  他方,こうした完全な管理分娩に異論を唱える人もおられると思います。勿論、フリースタイルなど、自然分娩を望んでいる妊婦さんは、陣痛の痛みにも耐えられるでしょうし、分娩時間が長引いても我慢出きるでしょうから、それはそれで頑張ってもらえば良いと思います。しかし、安全でしかも快適な分娩を目指す当院としては、この計画的日中分娩法を早い時期に取り入れて、患者さんに優しい周産期病院を名実共に確立したいと考えています。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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