第60回   東日本大震災で思うこと
2011年3月18日  
 
   始めに、この度の東日本大震災に際し犠牲となられた方々に深い哀悼の意を表します。又被災され今も心身共に苦しまれておられる皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 このような大災害に当たり、私が勝手な私見を述べるなどは、被災された方々には、不要、不快で、返って不謹慎の誹りを受けるかもしれません。しかし、この時期にコラムを書く者としてこの未曾有の大震災の話題を避けて通るのも無責任な気がいたします。
 そこで、少し視点を変えて、今回の大震災の悲惨な被害状況の中でも、見えてきた多少でもホッとする話題を拾ってみました。
 さて、平成23年3月11日午後2時46分。東北太平洋沿岸にマグニチュード9.0、震度6強の大地震が発生しました。そして15分後には第1派の津波が襲い掛かり、以後次々と、しかも10mを超える、以前に我々が経験したことも無いような大津波が押し寄せて来たのです。余震も震度5クラスの大型なものが続発しました。名古屋でも震度4を観測したとのことです。
 丁度私は帝王切開の手術中で、赤ちゃんを取り出そうとする瞬間でした。足元がふらつき、姿勢が不安定になりましたので、“大きな赤ちゃんを持ち上げたのでふらついたのか?(実際には2854gと大した重さではなかった)私も年取ったな”と一瞬思いましたが、すぐ大きな地震だと解りました。しかも結構長く揺れていましたので、手術室中に緊張が走り、手術機器が倒れたり、停電になったりしたらどうしようと不安がよぎりました。
 一方、私は清潔ですので、何かに掴まるわけにもいかず、目まいの様な感覚にとらわれながら、不安定な姿勢で踏ん張っていました。その時、清潔ナースもムカムカして吐きそうになり、器械台(これは清潔シーツで覆われている)に掴まっていたそうですが、機械台その物が可動性で動くので余計気持ちが悪くなり、船酔いのようだったと言っていました。幸い余震は軽く、停電もしませんでしたので、手術は順調に終わり、2時51分生まれの彼女(女の赤ちゃんでした)も元気でした。
 昨日、産婦人科のMLで見たのですが、宮城県の被災地の産婦人科でも同じ時刻に帝王切開をしていて、こちらは建物こそ倒れなかったものの、手術機器は飛び散るヮ、停電にはなるヮで大騒動になったそうですが、後は手探りで何とか手術を終え、母児ともに無事だったとの事でした。良かった!結果が良くて何よりです。
 手術後、テレビをつけて見たら、各局とも地震報道をしていましたが、その状況を観て唖然としました。世界一の防波堤と云われる釜石の防波堤をいとも簡単に破った想定外の大津波の規模の強大さを考えれば、結果は推測されます。防災大国日本の中でも、特に防災システムが進んでいると云われた東北地方の防災力でも防ぎきれず、結果は未曾有の大災害となってしまいました。人智を超えた自然の猛威に言葉もありません。
 あらためて、被災された全ての方々に深い哀悼の意を表します。

 毎日、各国のメディアもトップニュースで報道していますが、被災地の惨状の他に、このような大惨事にもかかわらず、日本人の冷静沈着な対応に、礼儀を忘れない文明的な人々だと一様に称賛していました。確かに避難所でも社会秩序が保たれ、弱者優先で助け合っています。強奪、暴行とか云った不足の事態は報道されていません。ここからは3月14日付の中日新聞からの抜粋ですが、中国の記者は“信号機が停電し、交差点に警察官も立っていないのに、ドライバーはお互いに譲り合い混乱は全くない”(中国のドライバーは我先にと突っ込んできて怖いです)と驚きを隠さず、“そこから再建の希望が見える”と伝えています。又、“民衆の冷静さは国家として最良のPR”(中国紙)とか、“先進国の尊厳を保持している”(台湾紙)と絶賛しています。一方で、見るも無残に破られたにもかかわらず、日本の防災対策は高く評価されていました。“母なる大地の急襲を切り抜けるため、日本人がどれほど立派に備えてきたか解る”(米国紙)とか、“日ごろから災害への備えを万全にした上で起きた人智を超えた地震”(フランス紙)とか。そして、“日本人には苦難に立ち向かう力がある”(ロシア紙)、“日本には失われた20年を耐え抜いた社会資産がある”(英国紙)“日本は今も偉大な産業力を有している”(米国紙)等々、日本が復興に不屈の精神で臨むことを期待する記事で溢れています。
 こんな事態の時に誉められてもあまり嬉しくもありませんが、国民の真価が問われるこんな事態で、日本人が世界の称賛を受けたのはやはり誇らしいことです。今、救助活動が国家プロジェクトで機敏に行われています。又、全国の支援の輪の立ち上がりの早さ、広がりも過ってないものです。義援金の額も膨大なものになると云われています。困った時の助け合い精神、共助、公助の意識が発揮されて、日本人も未だ捨てたものではないと思いますが、この冷静さ、秩序も何時までもは続かないでしょう。たぶん現地では不安、不平が出ていることと思います。
 今回は日本産婦人科学会、日本産婦人科医会も素早く行動しました(何時もは腰が重くて我々会員がイライラしている)。義援金の募集、被災地の妊婦さん、及び産婦人科医、産婦人科施設に出来るだけの支援を約束し、被災地へ派遣する産科医の募集や、被災地の妊婦さんの受け入れ可能病院をまとめています。因みに、当院は医者を派遣する余裕はありませんので、妊婦受け入れ病院に応需しました。尤も、最近は当院での私の働きが悪いので、“ボランティアで出かけても影響ないかも”と云われました。ちょっと寂しいですネ・・・。 
 そんな中で、東京電力福島第一原発の爆発事故は残念です。1号機はともかく2号機以降は何とかならなかったでしょうか?。2次災害のような形で更に被害が増えないかと心配です。それにしても輪番停電による首都圏の大混乱は大変ですね。東京は地震に対する1次災害はあまり無かったのに変わった形の2次災害ですね。
 最後に、一日も早い被災者の方々の安否確認と、被災地の復興を願ってやみません。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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