第36回   衝撃!≪梅毒患者急増≫
2009年3月19日  
 
   先日、患者さんから梅毒のクイックテストについて質問されました。当院では採用していないので、信憑性について細かい事は云えませんが、もし陽性に出たのなら、TPHA定量検査など精密検査をしたほうが良いでしょうとお答えしたのですが、もう少し詳しく調べておこうと、ネットで検索していたら、毎日新聞のこんな衝撃的な表題の記事が眼に留まりました。
『梅毒患者急増・・・・・20〜24歳女性は4年で3倍超』
 記事の内容は
『梅毒患者の報告数がここ数年、急増していることが国立感染症研究所のまとめで分かった。感染を知らずに出産し、子供が先天梅毒になるケースもある。同研究所は予防と検査を呼びかけている。感染研によると、梅毒患者数は抗生物質など薬剤開発により戦後減少傾向だったが、03年以降、再び増え始めた。03年に509例だった報告数は06年に600例を超え、07年737例、08年823例と毎年100例近く増え続けている。男性では35〜39歳、女性では20〜24歳の割合が高い。20〜24歳の女性は03年15例だったのが、07年には49例と3倍以上に増えた。母子感染による先天梅毒は06年に10例、08年は7月末現在で7例報告。妊娠中に夫から感染したと見られる症例もあった。先天梅毒の子供の4割は妊娠中か生後1週間までに死亡するといい、感染症情報センターの多田有希室長は「妊婦検診を必ず受け、感染が判明したらきちんと治すことが大事だ。妊娠後期に2回目の検査もしてほしい」と警告する。梅毒は細菌「梅毒トレポネ−マ」が引き起こす性感染症で、国内では99年以降、感染を確認したらすべて保健所に届け出るよう義務付けている。性感染症に詳しい斎田幸次・斎田マタニティークリニック院長は「不特定多数と性行為をする風潮が原因ではないか。(感染を防ぐ)コンドームの出荷数も減少しており、感染増加との関連が示されている」と話す。【関東晋慈】』
 この記事を読んで、正直びっくりしました。まだ絶対数は少ないですが、それでも20〜24歳女性が4年で3倍超の増加と云うのは大変由々しき問題です。10年ほど前から性感染症が風俗関係の女性だけでなく、一般の女性間にも増加していると云われていました。しかし、それはクラミジアとか、淋菌感染が主な病気で、梅毒までは云われていませんでした。梅毒については戦後しばらくはしばしば見られる疾患でした。感染者が妊娠すると子供に悪影響を及ぼし、胎児が先天梅毒に罹ります。先天梅毒の胎児は周産期死亡率が高く、胎内死亡や、生後1週間以内の死亡率が40%くらいといわれています。それ故戦後最初の妊婦初期検査の必須項目が結核と梅毒検査でした。結核も戦後しばらくは多い病気で、妊娠すると産後増悪するので妊婦さんには厄介な病気でした。しかし両方とも抗生物質など薬剤開発の進歩により、急激に減少し、今では滅多にお目にかからない疾患になったはずでしたのに・・・。当院でも昔はたまに梅毒反応陽性の人がいましたが、大抵は先天梅毒で本人は何の罪も無いのに親のせいで罹ってしまった気の毒な人でした。『親の因果が子に報い・・・』ではありませんが、親が犯した悪い行いの結果、梅毒に罹っても、親は自業自得で仕方がありませんが、何の罪も無い子供がその報いを受けて先天梅毒になってしまうと云う悲惨なめぐり合わせになります。但し孫まではその累が及びませんので、貴女のお子さんは大丈夫です。などと話した覚えがありました。そう云えば、最近妊婦初期検査で梅毒検査陽性の方がみえました。しかし、この方は先天梅毒ではなく、初期感染の人でした。前述のクイックテストの患者さんはどっちだったのでしょう? 最近チラホラ梅毒検査陽性の患者さんがいます。やはり梅毒感染が増え始めて来た予兆でしょうか・・・?
 原因は記事の中で、斎田先生が云っておられる様に、不特定多数と性行為をする風潮が風俗関係の女性だけでなく、一般の子女にも波及しているという事だと思います。しかも彼女たちは感染予防にも疎いので余計感染が広がるのでしょう。
 同じく記事の中で、感染症情報センターの多田有希室長は「妊婦検診を必ず受け、感染が判明したらきちんと治すことが大事だ。妊娠後期に2回目の検査もしてほしい」と警告する。と書かれていました。これは初期検査で梅毒陰性でも安心出来ない、妊娠の途中で梅毒に罹る可能性があるから、後期にもう一度検査しなさいと云うことだと思いますが、それはどう云うことですか? 夫が外で拾って来て妻にうつしたと云うこと? あるいは妊娠中に妻が梅毒感染者と浮気したと云うこと? 今若者の間ではそんなに性行動が乱れているのですか。ひょっとして乱れている、貞操観念がまるで無いと感ずるのは、私のような古い考えの人間だけで、若者たちの間では、これが普通の性習慣になっているのでしょうか・・・?
 やぶ蛇ですが、梅毒が歴史上に突発的に出現したのは15世紀末の事です。あの大航海時代にコロンブスの探検隊がアメリカ大陸に上陸し、原住民の女性と交わってそれまで当地に限局していた梅毒をヨーロッパに持ち帰り、以後世界中に蔓延させたという説が有力です。交通が未発達なあの時代にも関わらず、数年後には東の果ての日本にまで侵襲してくるとはその伝播力の早さに驚嘆しますが、それはとりもなおさず、当時も性的交流が、民族間の垣根を越えてまで、如何に盛んであったかを物語るものです。こうして考えてみると、性的な不特定、多方位交流は昔も今も少しも変わっていないのかも知れません。これでは『今の若いものは・・・』とあまり偉そうにも云えませんが、それでもしかし。今や、先進国でHIV(エイズ)の罹患数が増加しているのは日本だけだと云われて恥ずかしい思いをしているのに、更に梅毒まで加えなければならない破目になりました。これで果たして日本は文化的にも医療的にも本当に先進国なのでしょうか。若い日本人の性病に関する危機意識の欠如が心配でなりません。
 せめてこのコラムの読者の皆さんだけでも、良識ある節度をわきまえた性行動をして下さい。そして健やかで可愛い子孫を残して下さい。お願いします!
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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