第77回   熱狂!! 深夜のロンドン・オリンピック
2012年8月20日  
 
   愛読者の皆様、大変お疲れ様でした。ロンドン・オリンピック、深夜のテレビ観戦とこの暑さでフラフラになられた方も多いと思います。
 私もついついライブで見てしまい、翌日の仕事に支障を来していましたが、仕事(当直)もしていないのに“眠い。疲れた!”と云う訳にもいきませんので、あくびを噛み殺して翌日(当日かな?)の仕事を頑張りました。
 元々ロンドンとは8時間の時差があるので、あちらでのゴールデンタイムはこちらでは未明になるはずですが、何故か(世界的な視聴率を考えてか?)少し早い時間に試合が始まり、まだ起きている時間なのでつい見始めてしまいます。すると何時の間にか時は過ぎ、フト気が付くと午前3時過ぎになってしまうと云う訳です。でもあのライブでの緊張感、ドキドキ感、ハラハラ感は結果を知ってから見る録画ではとても味わえません。
 今回は自称万能スポーツ評論家として、そうまでしてライブで観戦する価値について少しお話ししたいと思います。
 例えば、体操男子個人総合の試合の場合。翌日の新聞では“内村航平見事優勝、田中和仁は6位”の見出しで優勝した内村については演技批評やその他諸々エピソードが書かれていましたが、田中については順位以外ほとんど記事がありません。しかし、実は6種目中4種目を終わった時点で内村1位、田中2位、しかも3位以下に1.5以上の点差をつけていました。ここに来て、内村優勝はもちろん、ヒョットすると田中が2位に食い込んで、ワンツーフィニッシュをするかもしれない。と大興奮しながら、田中の次の種目の床運動を期待したのですが、彼も緊張したのか、通常ではありえない様な尻餅を着く大失敗をしてしまいました。“ええっ!まじかよぉ!”と思わず私も大声を上げてしまったのですが、それでも僅差でまだ2位を保っていました。唯、田中にとって不運だったのは、最後の種目が最も失敗し易く、しかも彼にとってあまり得意でない“あん馬”だったことです。演技前の表情が映し出されましたが、顔面蒼白、体はガチガチ、演技台に上がる姿も前のめりで突っかかりそうでした。思わず、“田中頑張れ!落ちるなよ!15点台を上げて何とか銅メダルは取るぞ〜!”と励ましたのですが、私の期待もむなしく、落下してしまいました。それも解説者が“大丈夫です。一番難しいところを過ぎました”と云った直後でした。本人も難所を突破してホッとしたのかしれませんが・・・。その結果無念の6位となってしまいました。結果だけ見れば田中の実績からみて6位でも実力以上に良くやったと云うことでしょうが、その田中がメダルを取るかもしれないと云う期待感、この興奮とハラハラ感、落下した後の落胆はライブで見ていなければ味わえません。
 フェンシング,男子フルーレ団体の準決勝。ドイツ戦の最終試合、エース対決もライブで見ていた者には生きた心地のしないラスト数分間でした。日本のエース太田雄貴が次々と失点し、それまでの貯金を使い果たし、ついに試合終了6秒前には2点のビハインドとなってしまいました。“何やってんだ、太田!お前、日本のエースだろう!しっかりしろ〜!”と罵声を浴びせながら、でも、さすがに私も負けを覚悟しました。ところが2秒前に1点返し、さらに怒涛の突きで1秒前に同点に追いついてしまったのです。正に奇跡です。しかもそれから延長戦で微妙な判定を2度も覆し、とうとうサドンレスの1点を先にとって勝ってしまいました。こんなフィナーレは小説でも無いでしょう。否、嘘くさくてとても書けません。でもスポーツの世界ではあるのです。この感動はライブで見ていないと味わえません。翌日のテレビで幾ら解説者が丁寧に再現しても、あの瞬間の血が頭に昇り、思わずガッツポーズしてしまう興奮は湧きません。そこに睡眠時間を削ってまでライブで見る価値があるのです。 
 なでしこジャパンの準決勝フランス戦。“2対0になったところで安心して寝ました。後で1点入れられたみたいですね”と翌日看護師がケロッとして云っていました。“あそこで寝たとは不届きな!いやそれが正解かな? あれからどれだけ攻められたことか。PKまで取られて・・・、もしあのPKを外してくれなかったらおそらく最後は負けていただろう”。しかし、あのヒヤヒヤ、ドキドキ感を味わえなかったとは不幸な奴だ。いや、やっぱり幸せな奴かな・・・?
 余談ですが、スポーツにはツキと云うか運、不運が付きまといます。なでしこジャパンの試合でもフランス戦はツキも味方して勝ったような気がしますが、逆に決勝のアメリカ戦は明らかなハンドを審判が見落としたり、何本かのシュートがポストに阻まれたり、勝負の女神が完全にアメリカを向いていて振り向いてくれないので、試合内容は圧倒的に日本が勝っていたのに勝てなかった気がします。でもあの試合は朝の6時まで見ている価値のある良い試合でした。
 まだまだあります。女子バレーの3位決定戦、下馬評では韓国の方が強いと云われていました。私もたぶん負けるだろうと思いながら、前日の男子サッカーが韓国に負けたこともあって、どうしても勝ってほしいと必死で見ていました。思いがけず、第1セットを取りましたが、まだその時点では勝てるとは思いませんでした。ところが、第2セットを8-1とリードした時に、“今日の韓国は調子が悪いぞ。これなら勝てるかもしれない”と私自身にちょっとした油断が出ました(応援団の私が油断しても選手には関係ないと思いますが・・・、それ位真剣と云うことです)。そうしたらそれから追いつかれてとうとう延長戦に入り、緊張の極致になりましたが、何とかこのセットも取りました。結果的には3セット連取した圧勝でしたが、試合が終わるまでハラハラ感の連続でした。
 因みに、ウサイン・ボルトが陸上100m、200mを連覇したのをライブで見ていても、すごいなと思うだけで、スタート前に緊張したり、試合後興奮したりはしませんでした。
 やっぱり、オリンピックはナショナリズムが懸っていますね。でも国同士の争いはオリンピックだけにしたいものです。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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