第66回   分娩の摂理は変幻自在!?
2011年9月20日  
 
   当コラム愛読者の皆様、残暑お見舞い申し上げます。
9月も半ばを過ぎたと云うのに何時までも真夏日が続き、これでは折角夏を乗り切ったのに今年も“秋バテ” になりそうです。皆さんは大丈夫でしょうか?(秋バテについては、去年9月の第54回 理事長コラム。“昔、夏バテ。今は秋バテ?”をご参照ください)。
 特にこの時期、油断ならないのが熱中症です。35度を超えるような高温ではありませんのでつい油断しがちですが、多湿が災いして意外と簡単に熱中症になるようです。お子さんの運動会や、炎天下の外出にはご注意ください。テントや日傘は有効です。もちろん、水分補給もお忘れなく・・・。
 さて、先日ある妊婦さん達の集まりで、赤ちゃんは産道の中を理に適った形で上手に回転しながら出てくるという話をしたら、思いの他受けました。どうも皆さん、あの狭い産道を上手に出てくる自然の摂理の素晴らしさ、又赤ちゃんの頭の変幻自在さに感動されたようです。
 そこで今日は、愛読者の皆さんにも自然の摂理の素晴らしさに感動して貰おうと二匹目のどじょうを狙ってみました。(最近どじょうが流行っていますが、二匹目はダメかな?)
 陣痛が始まると赤ちゃんの先進部(頭位の場合は児頭)は産道(骨盤)の中で、通常4回の回旋をしながら下降し、娩出されます。分娩の約96%が頭位分娩ですので、今回は頭位分娩の場合でお話します。まず基礎知識として、児頭は横径より前後径の方が長い。骨盤は入口では横径が長く、出口では前後径の方が長い。又赤ちゃんの背中はお母さんのお腹の左側か右側かどちらかの横向きに入っている。と云うことを覚えておいてください。
 さあ、陣痛が始まると児頭は第1回旋と云って、顎をグッと引き、前方に強い屈曲回旋をします。そうすると先進部が頭頂部となり、これは小斜径周囲と云って頭の内で最も狭い面なので、産道を通過し易くなります。しかも、頭は横向きで骨盤入口に入って来ますので、頭の長い方、前後径と骨盤入口の長い方、横径が一致し、益々骨盤入口通過に合目的となります。骨盤入口に進入した児頭は顎を引いたまま、お母さんの肛門の方へ90度回旋しながら下降し骨盤出口部に向かいます。これを第2回旋と云います。皆さんすでにご推察のように、骨盤出口部では頭で長い前後径と骨盤出口で長い前後径が一致します。見事な展開でしょう。児頭が骨盤出口まで到達し、児頭の頂部が恥骨結合下縁に達すると、これを支点に今度は顎を上げるように反屈運動をして頭頂部、顔の順番に娩出されて来ます。これを第3回旋と云います。硬くて動かない恥骨を支点にして比較的動き易い尾骨や、会陰部を延すように出てくるのも見事です。更に最後に肩回旋と云ってもう一度元に戻るように90度回旋して横向きになり肩、胴体が出てきます。云うまでも無く、肩は前後より横の方が広いので骨盤出口部の長い前後径に合わせて出てくるのです。これを第4回旋と云います。それだけではありません。第2回旋で頭が下を向いて骨盤出口に達した頃、丁度肩は横向きで骨盤入口に入ります。ここでも長い同士が一致しています。全く見事としか云いようの無い調和ですが、これで感心していてはいけません。まだ、まだあります。児頭は回旋だけでは無くて、頭その物を変化させてしまいます。一つは応形機能と云って産道の抵抗によって通り易いように形状を変化させる機能で、後頭位(正常な胎位)では小斜径がより短縮し長頭蓋(烏帽子型)と成ります。皆さんもそんな頭の赤ちゃんをご覧になった事があると思います。もう一つは、骨重積と云って、頭蓋骨が重なり合い、頭の体積を小さくする機能です。ビックリでしょうが、赤ちゃんの頭蓋骨は未だお互いに固着してなくて、ある程度自由に重なったり離れたり出来るのです。もちろん生まれれば元に戻って、脳に障害も残しません。凄いでしょう。一方で母体にも応形機能はあります。まず全ての難産道が柔軟になり伸展が良くなって児頭の進行を助けます。又、骨盤出口が狭い時は尾骨の一部が可動し、広がります。この様に狭い骨盤を潜り抜けるため、幾重にも施された見事な自然の摂理には驚嘆する外はありません。素晴らしいでしょう!!
 しかし、こんな素晴らしい機能が備わっているのに、実際には全ての赤ちゃんが上手に出て来れるとは限りません。この素晴らしい機能からはずれてしまう子が少しですがいます。
 原因となるのは、まず児頭骨盤不均衡。児頭が骨盤より大きくて骨盤に侵入出来ないか、或いは骨盤出口が狭くて色々な応形機能が作動しても出れそうに無い場合です。残念ながら帝王切開で出すより仕方がありません。
 次が回旋異常。回旋異常も色々ありますが、一つ目が、反屈位。通常は第1回旋で顎を引いて屈曲位になる所を、顎を上げてしまって反屈位になり、そのまま進行してくる場合です。反屈の程度によって、前頭位、額位、顔位、頤位などがあります。よく、ペラペラうるさく喋る人を、口から先に生まれたみたいだと揶揄することがありますが、顔位、頤位のように本当に口から生まれてくる人もいるのです。二つ目が、第2回旋で90度お母さんの肛門を向く所を上(恥骨)の方を向いてしまう異常です。最終的には顔がお母さんの尿道口を見ながら出てきます。男の子の場合、スケベになると云われますが、理由はよく解りません・・・。ご想像に任せます。その他、低在横定位と云って、第2回旋をしないままに横向きで下がってしまい、骨盤出口部で頭の長い方の前後径が骨盤出口の狭い方の横径と合ってしまい、分娩の進行が停止する場合があります。これらの異常は、いずれも難産に成り易く、鉗子分娩などの産科手術が必要になることが多いです。
 如何でしょう。自然の摂理の素晴らしさ。一方でそうならないことのある難しさ・・・。これからお産を迎える方々は、見事な自然の摂理通りに分娩が進んで、安産に成って欲しいと切に願っておられると思います。
 我々もそうなるように精一杯お手伝いします。共に頑張りましょう!!。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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