第30回   パートナーに依存しない避妊で人生設計、健康管理を!
2008年9月22日  
 
  猛烈に暑かった夏も過ぎて、秋風が漂い、さすがに朝夕は少し涼しくなりました。特に今年の夏休みは、猛暑だけではなく、北京オリンピックの熱戦に燃え、若い人たちに取ってはそれよりももっと熱いひと夏の恋に身を焦がした事でしょう。そして今、つわもの共が夢のあとの季節になりました。輪を掛けるように福田首相の突然の辞表などもあり、ますます侘しさが募ります。この季節、一人で、夕日が落ちる頃に、夏の間ビーチパラソルが咲き乱れ、熱く華やかに輝いていた海浜の浜辺を訪れると、あの頃の喧騒が夢のようで、なんともやるせなく、一層うたかたの物の哀れを感じます。もしこの時期、恋人と一緒に再びあの思い出の浜辺を訪れる事が出来たとしたら貴女は本当に幸せ者です。おめでとう、後はゴールを目指して突っ走るのみ、頑張れ!! 
 しかし、現実はきびしくて、産婦人科にはひと夏の灼熱の恋の後始末の季節がやって来ました。悲しい事ですが、この時期は、若い未婚の女性の中絶希望の患者さんが一番多い時期です。実らぬ恋の、或いは、ひと時の火遊びの付けは、何時も女性に来ます。精神的には男も同じように悩み、苦しむかも知れませんが、少なくとも肉体的な負担は女性のみが負うことになります。勿論、肉体的な痛みだけではなく、心の傷として、一生トラウマになることでしょう…。それでも過激で刺激的な性教育の成果が多少はあったのでしょうか、実数は10年前に比べれば、随分少なくなりました。只、今年は気になるケースが幾つかありました。例えば、どうすれば妊娠するのか良く解ってない中学生、或いは、付けてくれなかったとか、途中で取れたとか、コンドームに関する失敗、そうかと思えば、未だ性行為の経験はなく膣外射精を許しただけで妊娠してしまった等々です。今の性教育の過激さについて行けず性教育の現場から撤退した私ですが、この現実を見ると、中学生低学年からの具体的な避妊教育、性病対策教育もやっぱり必要かなと実感します。今更婚前交渉の是非を説いてもコンセンサスは得られそうもありませんので、望まない妊娠を避けるための知識の習得を進めるのが先決の様です。それにはパートナーに依存しない避妊法を会得する事が大切だと思います。
 重要な事は女性が自らの健康を管理し守るためには、妊娠と云う不確実な健康要素を自分のライフデザインに合わせてコントロールするような意識を持ち、避妊方法や避妊期間を自己決定して、パートナーに関係なく実践する事です。そして、我々産婦人科医は女性だけで決定出来る種々の避妊法を正しく安全に使用して貰う様サポートする事が大事だと考えます。と云う訳で現在使用されている避妊法の中で、比較的安全・安心と思われる物についてお話します。只、このコラムは夏休み前に書くべきだったと反省しています…。
 今私がもっともお勧めするのはピル(経口避妊薬)です。日本人のホルモン嫌いが原因してか、以前から中々普及しませんでしたが、9年前に低用量ピルが国内承認となって、やっと少し服用者が増えてきました。ホルモン剤を長期に服用する事で、副作用が起こるのではないかと云う不安があるのだろうと思いますが、低用量になったことで、子宮がん、乳がんなどの発生頻度は、服用してない人と差がありません。又よく云われた肥満もほとんど無くなりました。それよりも、正しく飲めば、避妊効果はほぼ100%ですし、妊娠・出産歴に関係なく、幅広い年齢層に使用出来、使用中止も簡単で、使用期間も特に制限が無いのが特徴です。一日1錠の内服はやや煩雑ですが勤勉な日本人にとっては慣れてしまえばさほど困難な事ではないでしょう。一方このピルには、若い女性の悩みを解決する幾つかの副効用があります。その一つが、月経痛の改善です。2〜3ヶ月も続けると、毎月辛かった月経痛が随分楽になります。そして月経過多の人も月経量が減って来ます。又、にきびが減ると言った副効用もあります。もし避妊が必要ならば現在の所、第1選択はピルだと思います。
 次はIUD(子宮内器具)の装着です。この方法は経産婦で出産間隔を2〜3年あけたい人には最適だと思いますが、以前は避妊率に多少問題がありました。しかし、最近は銅附加型、ホルモン剤添加型等があり、避妊効果も増強されました。しかも1度装着すれば、後は操作の必要が無くその点でも優れています。しかし未産婦には挿入し難い事、子宮外妊娠は防げない事等不都合な点もあります。
 一方、事前の避妊が出来ていなくて危険な場合に、排卵、或いは着床を防ぐ手段として、緊急避妊法があります。これは中絶ピルと云われる黄体ホルモン剤を飲む方法で、アメリカやヨーロッパではそれ用のピルが認可されていますが、日本では未だ承認されていないので、代用として中用量ピルを大目に服用する事になります。その為嘔気が強く、嘔吐してしまう事もあり、副作用は強い様です。いずれにしても、この方法は緊急避難であり、推奨されるものではありません。
 最後にコンドームですが、日本では一番普及している避妊法であることは間違いありません。しかし、避妊効果は、使用方法にもよりますが、一般に考えられているよりもかなり低く、しかも性交の度に使用する緊急的な避妊法ですので不確実です。そして最大の欠点は女性が自分の意思だけでは決められない避妊法だと云う事です。相手次第と云う事になれば、リスクの高い(あまり親しくない、妊娠したくない)相手ほど、言い出し難くリスクが上がると云う事になります。欧米では、コンドームは避妊より、むしろ感染予防として使用する傾向が強く、夫婦や親しいパートナー間では、好まれていない様です。性感染症予防には、コンドーム以外に簡単な良い方法がありませんので、その心配がある時は、避妊とは別にコンドームも使用した方が良いでしょう。
  女性にとって妊娠は、人生設計上も、健康管理上も重要な課題であり、おろそかにする事は出来ません。激しく燃えたひと夏の出来事で、大事な健康や人生が狂わないように、ぜひ避妊は男性に依存せず自己管理で対処してください。そして望まれた妊娠をして、幸せな人生を謳歌してください。出来れば出産は当院でお願いします!!
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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