2019年2月20日
第155回
女性に取って月経は大事なもの?!
 平成30年の人口動態推計値が発表されました。それによると出生数は92万1000人で前年より2万5000人の減少です。平成28年に出生数が100万人を切り話題になりましたが,この分で行けば1~2年後には90万人も割ってしまいそうです。ちなみに死亡数は136万9000人で前年より2万9000人増加し、人口は44万8000人減でした。
 今後もしばらくはこの程度の人口減少が続くのでしょうが、果たして今の合計特殊出生率から行って人口減少は止まるのでしょうか?。毎年人口動態統計を見る度に心配になります。
 しかし、統計上は減少しても、一方で幾らAIが発達しても、人類が続く限りお産は無くならないと思います。産科医としては個々の症例に対して、それこそAIを駆使して安全で快適なお産を提供するよう日々努力するのみだと考えます。

 先日、月経困難症、および子宮内膜症に伴う疼痛改善のための低用量ホルモン配合剤の勉強会がありました。この薬は従来の毎月月経を来させる低用量ホルモン治療薬と違って最大120日飲み続けることが出来ます。即ち、その間ずっと月経を止められる可能性があると云う訳です。理論上は4ヶ月間月経を経験しないで済むと云うことですから、その間、月経痛も無い訳で月経困難症の患者さんに取っては有難いことだと思います。現実的には120日間月経を抑えることは難しいようで、大体80日位で飲んでいても破綻出血(月経様の出血)が起こってしまいますが、それでも3ヶ月位は伸ばせます。又、この薬は自分の都合に合わせて自由に月経をコントロールすることも出来、フレキシブルに使える薬です。
 このように月経を長期に止められるので、女性が月経の苦痛から解放されて非常に良いことだ、福音だという雰囲気でこの勉強会は進んで行きました。
 しかし、私は果たして女性に取って月経は有っても無くても気にならないものなのだろうかとその場の雰囲気に違和感を感じました。会場には多数の女性医師もいましたが、疑問も反論もありませんでした。確かに、子供さんを産みあげたある程度年配の女性は月経なんて痛いし、めんどくさいし、来なくて良いと思っていらっしゃるかもしれませんが、女性が皆そう思っているのでしょうか。私は男ですので、女性の本音の所が解りませんが、女性に取って一番良いのは、毎月きちんと月経は有り、しかも痛くないのが理想では無いのかなと云う気がします(男の勝手な思い込みかな?)。
 そこで、女性がどのように思っているのか、当院の職員やこの治療を受ける患者さんに聞いてみました。子供を産みあげた人では、生理なんか来なくても平気と云う人と、女性で無くなるようで嫌だと云う人と半々でした。一方、これから妊娠をしたいと云う人は、長期に生理が来ないのは、妊娠出来るかも含めて何となく不安と云う人が多いようでした。
 今は、やっぱり多くの女性はサイクリックな月経が有って、しかも痛くないのが理想のようです。
 しかし、極端な発想の転換をすれば、未来の女性は、月経をほとんど経験しないで済む時代がくるかもしれません。初潮が来たら、今よりもっと進化した低用量ピルで月経を止めて月経困難症などの煩わしさから解放され、妊娠したい時だけ休薬して妊娠し(妊娠中は当然無月経)、授乳中も無月経で、そろそろ月経が来そうになったら又ピルを次の妊娠まで飲む。そして生みあげたら閉経までピルを継続すれば月経は来ないまま閉経となる。そんな時代になれば、女性も月経が無くても何の違和感も無くなるかもしれません。
 皆さんはどのようにお考えでしょう?!