第103回   今や人口減少は政治的問題だ!
2014年10月20日  
 
 

 皆さんもご存じのとおり、日本は十数年前から出生率が低下し始め、とうとう数年前からは人口そのものが減少傾向にあります。ところが日本政府は以前から抜本的な少子化対策が必要と声高に叫んではいましたが、具体的な施策をほとんど取って来なかったために今になって深刻な事態を引き起こしています。
 嘘か本当かは知りませんが、政治家にとって高齢者対策は票になるので一生懸命予算措置を図りますが、少子化対策は票にならないために、後廻しにしていると云う噂です。確かに、高齢者は寝たきりの人も認知症の人も1票を持っていますが、赤ちゃんには選挙権がありませんので、そんなうがった見方も有るかなと勘ぐってしまいます。
 それは兎も角として現実は少子高齢化に歯止めが掛かっていません。合計特殊出生率を見ても、2013年で1.41と多少上がってはきましたが、これでは夫婦2人で1.5人弱しか産まない訳ですから確実に次の世代は人口が2/3に減少します。厚労省の試算ではこのまま少子化が進めば2040年には全国の7割の市町村で人口減少率が20%を超えると予測しています。
 同じように少子化傾向が顕著な欧米先進国の中で、フランス、イギリス、デンマークなどヨーロッパの一部の国では少子化対策の成果が出て合計特殊出生率が2まで上昇しました。これら出生率が上がった国の特徴は、女性の労働力が高い。GDPに対する家族関係支出が高く家族政策が充実している。結婚の形態を取らない婚外子が多い。などが挙げられています。女性が働いていると出生率が上がると云うのは一見矛盾しているような気がしますが、今や女性の労働力は必須ですので、逆に働いていても若い内に子供が産める環境を作ることによって出生率を上げようと試みた結果です。事実フランスでは最初の出産の時期が早くなっています。そのための家族政策として、状況、所得の如何に関わらず出産・育児は経済的負担が掛かると云う観点から女性の選択肢に合わせて、子供が多い家族ほど充実した家族給付がなされています。妊娠中はもちろん、産んでからでも育児と労働が両立出来るように、経済的にも職場環境にも政策が施されているのです。この政策は婚外子でも適応されています。因みに、家族関係支出の対GDP比は出生率の高いフランスが3.2%、イギリス3.8%、スウェーデン3.8%と多くの予算を割り当てていますが、逆に日本は0.9%と低い水準に留まっています。しかも、この家族関係支出の内訳を見ると、イギリスでは高齢者関係約30%、育児関係約15%に対し、日本では高齢者関係約48%、育児関係約4%と高齢者対策により比重が掛かっています。
 残念ながら子供の数も金次第と云うことのようですので、人口減の克服を骨太の方針として掲げている政府は、今すぐにでも、出生率先進国の家族政策を見習って、大幅な予算措置増額を図ってもらいたいものです。
 唯、合計特殊出生率が2以上に上がっても、既に分母(妊孕力のある女性の数)が20年前の約6割になっていますので、人口増はなかなか望めませんし、ましてや生産年齢人口と云うことになれば、赤ちゃんは一気に成人しませんので、何十年か待たねばなりません。“こと既に遅し”の感はありますが、それでも国として一日も早い施策を望みます。
 一方、我々産婦人科医としては、妊娠適齢期について男性も含めた若い世代の人を如何に啓発するかに掛かっていると考えています。ここに興味深いデータがあります。妊娠・不妊の知識について18ヵ国の男女に質問した結果、正解率が日本は男性16位、女性17位と惨憺たるものでした。(調査国は欧米だけで無く、中国、インド、トルコなどアジアの国も入っています)。多かった不正解は、“子供は何時(何歳)でも出来る”。“出来なければ体外受精をすればすぐ出来る”などでした。ところが、体外受精をしても、生産率は20才代で20%、40才で8%、45才では0.8%。逆に流産率は20才代後半で16%、40才で35%、45才では59%に増加します。これは“体外受精をしても、そんなに簡単には子供は望めませんよ。体外受精は万能ではありませんよ”と云うことを示しています。
 私が何時もこのコラムで書いているように、“初産年齢を早くしてください。出来れば20代で産み始めてください。高齢になってからの初産は母児共に危険が増加しますよ。”と云うことに外なりません。
 是非、皆さんも妊娠適齢期に最初の出産を目指してください。唯もう過ぎてしまった人は不妊治療をしても良いですから少しでも早く妊娠してください。期待しています!

 

 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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