第54回   昔、夏バテ。今は秋バテ?
2010年9月22日  
 
 

 今年の夏の暑さは尋常なものではありませんでした。皆さんと交わす挨拶も、「今日は」ではなくて「今日もめちゃ暑いですね。」が常套句のようになっていました。そんな会話がつい先日まで続きましたが、9月も半ばを過ぎて、やっと朝夕は秋の気配が少し感じられるようになりました。ふと空を仰げば、何時の間にか入道雲に変わっていわし雲がたなびいています。
 コラム愛読者の皆さんは、この長かった猛暑を体調も崩さずに上手に乗り切られましたでしょうか。私も酷暑のうちは、何とか体調を保って耐えていましたが、多少凌ぎ易くなったここに来て、逆に体調が崩れてきました。とうとう油切れになったのでしょうか、遅ればせの夏バテのようです。
 先日昼食時、病院の食堂で「今頃になって夏バテかなあ〜。食欲がなくて、体がだるい」と愚痴っていましたら、隣の席にいた若い内科の女性医師から「理事長先生、そう云うのを最近は、“秋バテ”と云うんですよ」と指摘されました。「へえ〜、知らなかった。なかなか面白い表現だね」と素直に知らないことを認めましたが、これがむつけき男性医師から云われたなら、きっと「へん〜、そんなこと知ってるよ!」と見栄を張るところでした。何時まで経っても意地っ張りで、しかも、若い女性には大甘、寛大で、えこひいきな、大人気ない私ですね。でも女性に優しいのは良いことだ・・・。
 さて彼女によれば、“秋バテ”とは、夏の間の疲労の蓄積や、体力消耗が基になって、秋口に現れる症状で、倦怠感や食欲不振などの体調不良を起こす状態だと云うことです。原因としては夏場の冷えが挙げられます。最近は日常的に冷房の中で暮らし、又、特に今年のような極暑の夏では、ビールやアイスクリームなど冷たい飲食物を取りすぎて、体を冷やしすぎた結果だそうです。冷房などによる温度差の激しさが自律神経を乱し、倦怠感を起こしやすく、冷たい飲料水の飲みすぎが胃腸機能を低下させてしまいます。
 余談ですが、乳業会社の人から聞いた話を一言。夏の気温が1度上がるとアイスクリームの売り上げが数%上がるそうです。その年の夏場の暑さを正確に予測して、如何に適量のアイスクリームのストックを作るかが社員の腕の見せ所だと云うことです。今年は猛暑を予想して多めにストックしたそうですが、それでも在庫不足になって残念だったと嬉しそうに話していました。しかし本業の乳児用ミルクの売れ行きが伸びないと嘆いてもいました。裏を返せば、我々の母乳指導が上手く行っていると云うことになります。乳業さん、営業に協力出来なくて御免なさい。
 余談ついでにもう一言。同じ猛暑と云っても、気温が人間の体温である37度を超えるか超えないかで、人体に及ぼす影響はずいぶん違います。元来人間の体温は視床下部にある体温中枢によって一定に保たれていますが、高温、多湿の環境の中で気温が体温を超えると体温中枢の働きが極端に悪くなって、体温を37度以下の正常に保つ事が難しくなります。これが熱中症の原因の一つである熱射病ですが、特に高齢者は、炎天下でなくても、部屋の中でも罹ることがあるので要注意です。冷房も掛けずに、窓も締め切っていると体温の上昇と脱水が起こります。しかし、どうしても老人は体温上昇の感じ方が鈍く、又発汗作用も若い人に比べて悪いので、それを気がつかずに居て、熱射病を起こしてしまいます。今年の夏は救急車で運ばれた熱中症の高齢者のニュースが随分ありましたが、気温が体温を超えていた日が沢山ありましたので、それも頷けます。
 話を本題に戻して、本来、夏バテは、真夏に高温多湿の気候の影響で心身にストレスがたまり、睡眠不足や、運動不足も加わって体調を崩し、倦怠感、食欲不振、下痢などの症状が出て体調不良となりますが、秋になって暑さが和らげば、食欲の秋の例え通り、食欲も出て元気が回復するのが普通でした。しかし、最近は冷房などによって何とか夏をバテずに乗りきることが出来るようになりましたが、その分秋に反動が来るようで、これを“秋バテ”と云うのだそうです。 
 対処法は先ずおなかを温めてやること。それには胃腸に優しいおかゆなど温めの朝食を取ることが大事だそうです。又ぬるめのお湯につかり、副交感神経を刺激して胃腸の働きを活発にすることも良いとのことです。38度程度のお湯に汗ばむまでつかると疲労回復にも効くようです。冷房対策も大事で、オフィスなどでは体を冷やし過ぎないように気をつけること。また、もう就寝時は冷房を使わずに休みましょう。と云うことでした。
 この話を聞いていた小児科の医師が、「最近小児科にも、同じような症状の子供さんが来るよ」話し出しました。「食欲不振、下痢、倦怠感、発熱などの症状は同じだが、子供の場合、夏バテ、秋バテでは無くて、寝冷え症候群ですね」とのことです。確かに子供が夏の暑さでバテることはまず無いでしょう。暑い夏の間、布団を蹴飛ばして寝てた子が、今だにそうしているのでお腹が冷えるのだと思います。冷房などつけていれば尚更でしょう。我々の子供の頃は金太郎腹掛けをして寝かされたものですが、「今でも腹巻が一番の予防法だ」と云うことで一件落着しました。
 一方「新学期が始まっても、学校へ行くのが嫌で、学校へ行こうと思うとお腹が痛くなってしまう。“ストレス性寝冷え症候群”?の子もいます」とのこと。所謂登校拒否児ですがこんな子も増えてきたと云うことです。これは腹巻では治らない深刻な病気です。
翻って、私の“秋バテ”についてよくよく考えてみますと、実は先週4日間、国税局の税務調査がありました。念のために云っておきますが、これは5〜6年に1回の定期的な調査で、脱税の疑いでマルサが入った訳ではありません。でも不備な点をいろいろ指摘されるのではないかと、随分神経を使いました。ところが調査が無事終了した木曜日の夕食から急に食欲が出て、倦怠感も薄らぎ週末にはゴルフをする元気も出て行ってきました。
 どうやら私も“ストレス性秋バテ”?だったかもしれません。
 いい加減なものですね・・・。

 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
▲PageTop  
 
産婦人科・内科・心療内科・小児科・再生医療科(歯科口腔外科・形成外科)
医療法人 東恵会 星ヶ丘マタニティ病院
〒464-0026 名古屋市千種区井上町27番地
TEL : 052-782-6211(代表)
Copyright (C) Hoshigaoka Maternity Hospital All Rights Reserved