第140回   コウノドリが復活した!
2017年11月20日  
 
   産婦人科の病院を舞台に生命の神秘をテーマにした“コウノドリ”と云うテレビドラマが2年程前に放映されました。毎回様々な妊娠・出産のケースが取り上げられ、それに対する周産期医療チームの真摯な活躍、家族の苦悩、葛藤などが感動的に描かれ涙なしでは見られない感動の医療ドラマとして巷では大好評でした。産婦人科医の私から見ても、妊娠の異常、胎児の疾患などが医学的に正確に捉えられていて、しかも我々が患者さんに説明するのと同じニュアンスで描かれていましたし、状況を知らされた患者さんの反応も実際の現場の雰囲気と大差なく自然でしたので違和感がありませんでした。逆に我々には見えないところで患者さんや家族に葛藤や苦悩が有ることを教えられて勉強になったことを覚えています。
 そのドラマが金曜日の夜に“コウノドリ2”として復活しました。金曜日の夜は意外と外出することが多くて(何で〜? 内緒!)全部は見ていませんが、見た範囲で云えば今回も素晴らしい出来栄えです。2年前とは少し違って産科や新生児科の人員不足など周産期病院の実情にも触れていますし、SNSなどで氾濫する情報の中で患者さんの不安、困惑、あるいは歪んだ知識、思い込みなどに対する医者の対応の大変さも織り込まれていて現場の医者としては共感するところが多いドラマです。
 以前にも書きましたが(第117回 理事長コラム)、このドラマは鈴木ユウが男性誌「モーニング」に連載した漫画“コウノドリ”が原作です。彼が「漫画コウノドリは、僕に子供が生まれたときに感じた“人生においてこれ以上ない感動”から生まれました。僕も出産に立ち会って人生が変わった一人です」と云っていますが、生命の誕生の神秘に触れて感動した作者が赤ちゃんが無事に生まれてくることは当然ではなく、実は妊娠・出産にはさまざまなリスクや危険があり元気に無事に赤ちゃんが生まれてくることは奇跡の連続であり“命”の現場では医療側、患者側双方に様々な葛藤があることを決して大げさではなくリアルにしかも感動的に描いています。
 さて、第4話は何かの原因で前回帝王切開で出産した妊婦が我が子を愛せていないのではないかと不安になっていて、それは自分がお腹を痛めて産まなかったためだと考えるようになり今回は何が何でも陣痛を体験して経腟分娩で産みたいと思い帝王切開後の自然分娩(トーラック)が出来る病院をネットで調べて、サクラ(主人公の産科医)の病院を訪れてきます。妊婦の希望を優先してあげたいサクラと、ただでさえ人員不足なのに子宮破裂の危険があり緊急事態を巻き起こしかねないトーラックはリスクが高すぎると考える四宮先生(産科医)とは意見が対立しますが、何か異常の微徴が起こればすぐ帝王切開に切り替えることを条件にトーラックを引き受けます。
 補足ですが、このトーラックは1/200位の確率で子宮破裂を起こすと云われています。もし子宮破裂が起こればほぼ赤ちゃんは駄目ですし、母親も大出血の危険に晒され、たぶん子宮は摘出することになりそれどころか命の危険も伴います。しかも200人に1人と云う確率は非常に高いものですので、当院でも15年程前から実施しておりません。現在は既往帝切の妊婦さんは陣痛が来る前に予定帝切で安全に娩出するよう対応しています。
 ドラマに戻ります。やがて陣痛が始まって入院しますがなかなか分娩が進行しません。前回は陣痛前に帝王切開をしたようで子宮口の開きも悪く陣痛も今一強くなって来ません。しかし、頸管拡張や陣痛増強薬は子宮破裂を助長しますので使えません。一昼夜が過ぎて赤ちゃんの心音が落ちてきました。もう限界だとさすがのサクラも帝切変更を勧めますが妊婦さんは経腟分娩に固持しています。“もう30時間以上もお腹を痛めて赤ちゃんを自力で産もうと頑張りました。それは充分赤ちゃんに伝わったと思います。ここまで来て帝王切開で産むか経腟分娩で産むかは大した意味はなく、最後は元気な赤ちゃんを産むことが大切です”と云うサクラの説得に納得して結局帝王切開で出産し母子ともに無事でハッピーハッピーでしたが、その間の家族の葛藤とか医者同士の討論とかに結構感動しました。
 余談ですが、産婦人科病院の息子が研修医として産科で研修していました。彼が産科にあまり興味を示さないので先輩の女医さんに「あんた産科のジュニァでしょう。やる気あるの!」とハッパをかけられて、ボソッと「産科の息子だからって、産科になるとは限らない」と云っていました。私も産婦人科の息子でしたが産婦人科に興味が持てなかった過去があるので“そうだ!そうだ!別な科で頑張っても良いぞ!!”と変な所で共感して声援を送っていました。
 第5話はIUFD(子宮内胎児死亡)と云う大変重いテーマでした。現在の産科学ではIUFDは予測出来ないことも時としてありますが、でも1週間前の健診で「赤ちゃん元気ですよ」と云われたのに、次の健診で「心臓の鼓動がありません」と云われても妊婦さんや家族は急には納得出来ないと思います。長くなるのでストーリーは省略しますが、その辺の患者側、医療側の葛藤を見事に演出していて思わず涙が出てしまいました。
 ドラマはもう少し続く様ですので、これから妊娠・出産を考えている人はもちろん、そうでない人も是非見てください。感涙を流すはずです。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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