第31回   初めて!夫婦仲良く学会旅行
2008年10月20日  
 
   10月11日(土)・12日(日)の二日間、日本産婦人科医会学術集会が北陸ブロックの担当のもとに福井市のフェニックスプラザで開催されました。この学術集会は、日本全国の産婦人科医会の各ブロックが毎年持ち回りで開催するものですので、主催ブロックが前回に負けないように結構力を入れて計画します。その為、何時もメインテーマには関心の高い旬な話題を選び、趣向を凝らしたシンポジュウムに構成されています。しかも、内容も基礎的な研究よりも、臨床的な講演が主で、我々、開業医には直接役に立つ演題が多く人気の高い学会です。又、懇親会にはアトラクションがあったり、奥様用の観光ツアーが付いていたりして、かなり豪華なものになっています(今は、昔ほどではありませんが)。今年は福井市で開かれたので、北陸の美味しい料理に惹かれて、(これだけでは動機が不純です。勿論学術研修のために)家内共々参加しました。学会に家内を連れて行ったのは初めてで、私もとうとうそんな年になったかと感慨深いものがありますが、誘われた家内もびっくりしていました。若い頃の私にとっては、学会は病院からも、家庭からも開放される唯一の機会でしたので、夫婦同伴等と云う発想は全くありませんでした。講演が終われば早速夜の街に繰り出して命の洗濯をしたものです。当時、年配の先生方がご夫人を伴われて、夜の懇親会などに仲睦まじく参加されているのを見て、いずれ私もあ〜なるのかなと漠然と思っていましたが、今まさにそうなってしまいました。これが、別に悔しいとか悲しいとか云っている訳ではありませんが(でもやっぱり何となく寂しい)、時の流れと云うか、世代の移り代わりをひしひしと感じます。さて、北陸の味覚の中でも最も期待した越前蟹ですが、解禁が11月6日からだそうで、残念ながら懇親会の食卓には現れませんでした。それでも海の幸は日本海独特の風味があり、大変美味でした。それからアトラクションで登場した“OTAIKO座明神”と云う和太鼓のグループの演奏は迫力満点で、流石能登半島は和太鼓発祥の地(?)だけの事はあると感心しました。いつの間にか夜もふけて、しかし、現地で会った友人、知人たちの誰からも繁華街に繰り出す話題も出ず、仕方なく家内共々ホテルに帰り、マッサージを頼んで早々と休みました。なんとも味気ない平和な学会の夜のひとコマでした。これが年相応という事でしょうか。
  どうも、学会の本題よりもつまらない年寄りの愚痴話ばかりが先に出てしまいましたが、今年のメインテーマは、一日目が“前置胎盤・癒着胎盤の取り扱い”。二日目が“妊娠中の急性腹症“の2題でした。前置胎盤・癒着胎盤は、ご存知の方も多いと思いますが、大野病院事件と云って、手術した産婦人科の医師が逮捕された事件の原因となった病気です。この事件については私も同じ産婦人科の医師として色々思う事、云いたい事がありますが、それはさて置き、とに角、無罪になって良かったと心から胸を撫ぜ下ろしています。この事件が、最近医学生が産婦人科を志望しない大きな理由の一つになっていたことは間違いありません。もし有罪になっていたら、医学生のみならず、私も含めて日本中の産婦人科の医師はお産から撤退したでしょう。幾らなんでも、必死に治療しても結果が悪ければ、罪人にされる様ではあまりに報われません。そんな病気を扱う産科は誰でも敬遠したくなると思います。
  こんな風に書くと、皆さんはお産が怖くなって益々産み控えになってしまうかもしれませんが、それでも敢えて云います。お産の安全神話などありません。あれは一時期、妊婦専門雑誌などが広めた虚構です。このコラムでも、再三書いているように“お産は女性にとって一生に2度か3度の命を賭けた大事業です”。頻度は低いですが、未だに命に関わる事もあるのです。そこを理解した上で、それでも愛する人のため、人類存続のためになさねばならない女性だけに託された崇高な事業ですので、ぜひチャレンジしてください。現在の産科学では未だ完全とは云えませんが、不幸な結果を防ぐために我々産科医は全力を挙げてお手伝いします。
 さて、今回のシンポジュームの結論を要約しますと、前置胎盤の診断は比較的容易で、周到な準備をして臨めば結果も良好ですが、癒着胎盤を併発しているかどうかの診断は術前には予測出来ない事もあり、術中に初めて解かった時の対応が重要であるとの事です。色々子宮温存の工夫は考案されていますが、上手くいかないと手遅れになってしまうので、今の段階では早めに子宮摘出を決断するのがベターだと云う事でした。
 もう一つの妊娠中の急性腹症について。これは妊娠中に急にお腹が痛くなった時に、陣痛など子宮収縮の痛み以外に何を考えるかという事ですが、妊娠中の虫垂炎が、意外に診断し難いと云うことで話題になりました。妊娠子宮の増大によって、虫垂の位置が定型的な場所からずれる事、妊娠中のため放射線検査などを遠慮しがちな事、確定診断が付かないので外科が手術をためらう事などが重なり、穿孔性虫垂炎の頻度が非妊時より高くなって結果的に重症になることが多いので注意を要するとの事でした。又腸閉塞は妊娠後半期に多くみられ、これも胎児への影響を考慮するあまり診断が遅れる事があるので要注意との事です。この他、卵巣腫瘍の破裂、茎捻転、急性膵炎、HELLP症候群など、急性腹症を呈する病気は色々有りますが、いずれも胎児への影響を配慮するあまり、診断が遅れがちになり重症化することがあるので、血液検査や超音波検査だけでなく、レントゲンや、CT、MRI等の検査も積極的にして早く診断を確定し、迅速に処置を行うことが重要であると結論されました。
 蛇足ですが、私がシンポジュームに没頭している間に、家内は奥様ツアーで秋の北陸路を満喫していました。久しぶりに女房孝行も出来、初めての夫婦水入らずの学会旅行は大成功(?)でした。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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