第114回   産前・産後の子育て支援が充実!?
2015年9月18日  
 
   今年の夏は例年以上の猛暑でしたが、残暑も無く、気がつけばいつの間にか秋の気配を感ずる今日この頃です。灼熱の夏の喧騒が過ぎ、秋風が吹き始めると何となくセンチメンタルな気分になりがちですが、皆さんは如何でしょう?
 充実した実りの秋を迎えた人は幸せですが、実はこの時期、ひと夏の出来事の結果が心配で産婦人科を訪れる若い女性が多いのです。まだ医療機関を訪れてくれれば対処もアドバイスも色々出来ますが、親にも言えず、友達にも相談出来ずに、一人で何時までも悩んでいる人が多いので心配です。たとえ予期せぬ妊娠でも芽生えた命は尊いものです。何とか誕生させてあげたいと望みます。最近はそんな妊婦さんはもちろんですが、少子化対策の一環として産前産後や、子育ての支援をしてくれる自治体が増えました。
 政府も少子化の現状は社会経済の根幹を揺るがしかねない危機的な状況だと指摘し、今後5年間を集中取り組み期間と位置づけて、“少子化社会対策大綱”の見直し案を今年の3月に発表しました。それについての詳細はこのコラムでも以前に触れましたが、主に各自治体への努力喚起に留まっていて、何時まで経っても出産や育児手当金などの具体的な支援数値が示されていないのが不満だと解説しました。そんな中で“若い男女に出会いの場を提供し、結婚、妊娠、出産、子育ての切れ目のない支援をする自治体を現在の14%から70%に増やす”と云う項目がありましたが、実は愛知県も名古屋市も14%の中に入っていて既にある程度の支援をしています。妊婦健康診査(妊婦健診)の公費助成補助は皆さん良くご存じだと思いますが、それ以外の支援事業については、ご存じないらしくあまり利用されていない現状です。
 そこで、今回は名古屋市の産前・産後の子育て支援施策の幾つかを紹介します。
先ず、“なごや妊娠SOS”と云う電話相談事業があります。これは052-933-0099に電話していただくと担当の助産師さんが相談に乗ってくれます。尚メールでも受け付けています。主に妊娠について悩んでいる人が相談して欲しいシステムで、冒頭で述べたような人はぜひ連絡して欲しいと思います。医療機関、区役所、コンビニや薬局などに電話番号カードが置かれていて、最近は月平均15件位の相談があり、適切な助言によって無駄な中絶や妊娠性不安、乳幼児虐待などが防げた事例も出ています。只、医療機関や保健所など適切な機関を紹介しているのですが、実際にそこへ行ってくれているかは把握出来ないことが多く、うまく次につながっているか心配な面が残ります。
 次に、“産前・産後ヘルプ事業”について説明します。妊娠中から出産後6ヶ月以内の家庭に1日4時間以内ですが公費負担でヘルパーが派遣され、家事・育児のお手伝いをしてくれる制度です。平成26年度実績は産前60例、産後632例で、総利用時間数15,025時間とのことでした。この制度は核家族や親の援助を得られない人に取っては有難い制度だと思いますが、あまり知られていないのか意外と利用者が少ないようです。予算を増額するそうですので利用してください。
 次は“特定妊婦訪問支援事業”です。精神的、経済的など何らかの事情で妊娠中から支援の必要な妊婦を特定妊婦と定義していますが、そんな妊婦さんを保健師や助産師が継続訪問して支援する制度です。現在愛知県や名古屋市では妊娠届出書の下段に13項目の妊娠に関連した質問事項を載せ、回答してもらうことにしています。それをスコアリングすることによってハイリスクの妊婦さんをある程度選別することが出来ます。これは産婦人科医療機関、保健所双方で把握できますが、それを基に保健師が家庭訪問し支援を続けるかどうか決めます。しかし、家族関係が複雑だったり、精神的不安定さが強かったり、本人の同意が得られなかったり、なかなか継続支援出来ないのが実情のようです。でも、10代の若年妊娠とか、経済的に困っている人とか、出産まで支援を続けないと不幸な転帰になる可能性が有る妊婦さんには必要な支援だと思います。
 最近始めた事業が“産後ケア事業”です。出産直後は慣れない育児や家事などの負担が重なり、心身ともに不安定となりがちで、この時期に家族などから十分な育児サポートが受けられないと、育児不安や孤立などから産後うつ病や乳児虐待に繋がり易くなります。このような育児困難感がある出産後4ヵ月未満の産婦および乳児を医療機関又は助産所で宿泊又は日帰りケアを実施すると云うものです。病名がついて保険入院するほどでもないが、一人でほって置いては心配だと云う、ハザマの所を公費負担補助で支援すると云う意味で発想は素晴らしいと思いますが、入退院は保健所の保健師に権限があるとか、診療では無くてケアなので医師では無くて、助産師が担当するとか、助産所ならまだしも、医療機関では部屋貸しのような感じになりますし、実務上解決しなければならない問題が幾つかある様な気がします。
 その他、保健師の新生児・乳児訪問。3ヶ月児健康診査など公費助成で行っています。
 又、どうしても育てられない人のために里親委託制度も実施しています。平成21年度から開始していますが現在登録里親数150件,委託児童数68名になりました。
 このように名古屋市を始め地方自治体ではそれぞれの方法でかなりの産前・産後支援をしていますので、妊娠したらたとえ予期せぬ妊娠でも、望まない妊娠であっても、勇気を出して出産して下さい。芽生えた命を大事に育てましょう!
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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