第9回 師走私的雑感(この一年を振り返って) 2006年12月20日  
 
  今年もまた年の瀬がやって来ました。
この頃一年の過ぎるのが早いように感ずるのはやはり年を取ったせいでしょうか。
それはともかく、今年のトピックスは当院的には、なんと言っても院長交代です。4月1日付を持って私が理事長に就任し、石丸先生が院長に昇格しました。石丸新院長以下若返った新執行部は4月以来、現今の厳しい医療事情に対応すべく、又患者様の多様な要望に合わせた病院に変革すべく日夜頑張ってくれています。しかしながら開院以来20数年に及ぶ実績と伝統を踏まえながらの変革なので苦労も多く、幾つかの問題は来年に持ち越しのようです。心なしか石丸先生の白髪も少し増えたような気がしてチョット申し訳ない気もしています。彼のことだからきっと今まで以上の病院に仕上げてくれるでしょう。私も応援するので思い切って行動してください。
一方その分、私は肉体的にも精神的にも楽になりました。これは大変有難い事のはずですが、なぜか寂しい気分がするのは贅沢と云うものでしょうか。別に私は現役を退いた訳では無く、医療法人東恵会全体の経営責任者である理事長と言う重責に就いたのですから、昇格したはずなのですが、なぜか退いた気分になっています。そんな実感がこの暮れにもひしひしと感じられます。例年は12月に入ると一段と忙しくて、気ぜわしくなり、その名の通り師走だなぁと思いながら慌ただしく過していましたが、今年はそれほど忙しくありません。昨年までは、午前中の診察を終えると昼食もそこそこに午後の検査、手術に入り、その合間を縫って院内会議や打合せを済ませ、それとは別に大学医局などの挨拶回りの予定を組み、そして夜の外来診察までに戻ると言う、それこそ分刻みの日程をこなしていました。また忘年会も厳選して、特に平日はどうしても出なければならないものだけに絞って、夜の診察を代わってもらい、気兼ねしながら出ていました。ところが今年は午前中の診察は例年通りですが、午後の検査や手術は原則的には入らなくても良くなり、院内会議や打合わせも細かいものには呼ばれないし、挨拶周りも院長の仕事なので、お役御免となり、すっかり暇になってしまい、こうしてコラムを書く余裕が出来ました。また夜の診察も免除(このことは大変嬉しいのですが)になりましたので、忘年会出席だけは昨年に比べて大幅に増え、今年は気兼ねなく都合12回行くことにしました。ひがみっぽい話はこの位にしましょう。
もう一つのトピックスは再生医療科を新設したことです。再生医療とは簡単に云うと、自分自身の細胞を使って、機能障害や機能欠陥に陥った組織を再生させる治療法です。具体的には自分の体細胞の中の幹細胞を目的に合わせて培養し、必要な組織(細胞)を作りあげ、患部に移植して機能させようと云うものです。これは異物で間に合わせていた今までの移植方法と違って、アレルギーや拒絶反応も起こらず、しかも長期に機能しますので、夢の先進治療と云われ期待されています。今回当院では最初の試みとして先ず、歯槽骨としわ治療の2種類の再生医療から始めました。詳しい内容については7月の理事長コラムや病院のホームページに案内してありますので省略しますが、これは画期的な治療法で普及すれば多くの患者様の福音となる筈です。実は約3年前から名古屋大学の口腔外科のグループとクリニックレベルでの適応について検討を重ねて来ましたが、幾つものバリヤァーがあって、なかなか進展しませんでした。なにぶん初めての試みなので当たり前と云えば、当たり前ですが、技術的な面、設備的な事項、コストの関係、人材面等々難しい事ばかりでした。時期尚早かと諦めかけた時もありましたが、少しでも早くこの最新医療の恩恵を多くの患者様に享受してもらいたいと云う我々の強い思いがこのプロジェクトの種々の困難を乗り越えて実現させたと思います。今年の3月に実行計画書が出来上がり、突貫工事で院内を改築し、7月には開設の運びとなりました。しかしやはり初めての事なのでテストランに思いの外時間が掛かり、実際に患者様をお受け出来たのは9月の末でした。第1号の患者様はしわ治療の方でしたが、すでに治療が終了して1ヶ月位経ちます。現時点では効果は良好で患者様の満足度も合格点ですが、果たしてこの治療の特徴である3〜5年の長期効果が維持していくか内心心配しています(もちろん、大学の実績や外国文献では実証済みですが)。しわ治療は人気が有って、現在すでにインキュベーターがいっぱいの状態になりました。女性の美に対する欲求は一際ならぬものがあると今更ながら感心しています。ところがメインの歯槽骨治療は申し込みも少なく、しかも適応が難しくて(再生医療をする必要の無い人、又は効果の期待出来ない人)やっと一人治療が始まったばかりです。本当はインプラントが出来なくて入れ歯で悩んでいる人をこの再生医療で治療するのが主な目的で、しわ治療は婦人科の病院だから患者さんサービスの一環でくらいのつもりだったので、少し戸惑いを感じています。いずれにしてもこの部門も来年持ち越し部分が多いです。
その他、些細な事ですが開院以来続けた元旦当直はしなくても良くなりました。ただし書初めは免除されませんでしたので、年末に書初めだけして、正月は初めて格好良く海外旅行と洒落込もうかと考えています。
世の中に目を向けると、産婦人科全体としての今年のトピックスは、産科医の減少、それに伴う産科医療の崩壊、そしてお産難民発生の危機等、重く、暗いニュースが話題となりました。この辺の事に付きましては、別の機会に私見を述べたいと思います。
政治的には、小泉内閣の交代。改革、改革と叫んで結果的に格差社会を残し、聖域無き改革とか云って医療や教育の分野にも踏み込みましたが、成果どころか、病院閉鎖等の混乱のみを残した小泉政策はだいっ嫌いでしたので、交代してほっとしていますが、変わった  安倍さんがその容貌とは裏腹にかなりタカ派なのが気になります。また、今年の一字漢字が“命”と決まりましたが、我々も新しい生命の誕生に立ち会う仕事をしている身として、重く受け止めなければいけないと肝に銘じました。
このコラムの愛読者?の皆様、今年も一年、下手な長文にお付き合いいただきまして真に有難うございました。出来ればこれに懲りずに来年もご愛読の程宜しくお願いします。
それでは、皆様 良いお年を!
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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