第150回   座位大腸内視鏡検査でイグ・ノーベル賞
2018年9月20日  
 
 

 今月前半はテニスの全米オープン女子シングルスで優勝した大坂なおみ選手の関連報道で大フィーバーでした。これで、日頃テニスに興味のない人も彼女のことは知ったと思います。
 私も自称辛口スポーツ評論家として、全米オープンのセリーナ・ウイリアムスとの決勝戦については、このコラムで論評しようと思っていましたが、連日のテレビなどでのテニス以外にも及ぶ根掘り葉掘りの過熱報道で、今更感がして言及を回避しようか迷っていた時、目にしたのが、日本人が12年連続でイグ・ノーベル賞受賞の記事でした。

朝日新聞によれば、イグ・ノーベル賞の発表が13日、米ハーバード大(マサチューセッツ州)であり、今年は座った姿勢で大腸の内視鏡検査を受けると苦痛が少ないことを自ら試した昭和伊南総合病院(長野県駒ケ根市)の堀内朗医師(57才)が、医学教育賞を受賞したと報じていました。
 受賞理由は「座位で行う大腸内視鏡検査」を自分で試した業績に対してです。
 通常、大腸がん検診などで受ける内視鏡検査は、横に寝た状態で肛門から管状の内視鏡を体内に入れていくのが普通ですが、堀内先生は、痛みや不快感を減らす方法を探していて、座った姿勢のままで受ける方法を思い付き、椅子に腰掛けて少し股を開き、口径の小さな内視鏡を自分の肛門にゆっくり入れてみたところ「驚くほど容易にできた」と、2006年、米消化器内視鏡学会誌に体験談を発表しました。右手で内視鏡の端をつまんで肛門に挿入しながら、左手でカメラを動かすつまみを操作。モニターに映し出された自分の腸内を見つめる姿をイラスト付きで紹介しましたが、この時は失笑を買った発表をイグ・ノーベル選考委員会は評価した訳です。
 なぜこの研究(?)が「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられるイグ・ノーベル賞の対象になったのか、ただ自分の肛門に内視鏡を突っ込んでいるだけなので、あまり可笑しくも無いし不思議な気がしますが・・・。
それは兎も角、大腸は内視鏡検査で大腸ポリープを切除することが出来、大腸がんの発症を9割は抑えられることが解っており、堀内先生たちの病院では、日帰りで手軽に検査を受けてもらおうと鎮静剤を用いるなど色々な工夫をして、検査数は地方の病院としては異例の年1万5千人に達しているそうで、日々真剣に取り組んでおられます。
 ただ皮肉なことに、折角可能になったのに、座った姿勢で医師が内視鏡を入れる検査は、恥ずかしがって受けたがらない人が多く、未だ採用していないと云うことです。
 余談ですが、産婦人科の内診と云う形の診察は医師と患者さんが向き合った対面方式で行いますので、この検査法とよく似た形になります。間に目隠しのカーテンは敷きますが、産婦人科ではごく普通に行われている診察方式です。もちろん、患者さんは恥ずかしいと思いますが・・・。

 イグ・ノーベル賞は1991年、ユーモア系科学雑誌のマーク・エイブラハムズ編集長がサイエンス・ユーモア雑誌『風変わりな研究の年報』を発刊する際に創設した賞で、面白いが埋もれた研究業績を広め、並外れたものや想像力を称賛するために始めたノーベル賞のパロディーです。
 時には笑いと賞賛を、時には皮肉を込めて授与され、このようにインパクトのある斬新な方法によって、脚光の当たりにくい分野の地道な研究に、一般の人々の注目を集めさせ、科学の面白さを再認識させてくれることに貢献しています。
 授賞式もユーモアとウィットに富んでいて、その最たるものが、受賞者のスピーチが60秒の制限時間が過ぎると、『ミス・スウィーティー・プー』と呼ばれる進行役の8歳の少女が登場し「もうやめて、私は退屈なの」と連呼しますが、この少女を贈り物で買収することが出来れば講演を続けることが許されるそうです。但し、旅費と滞在費は自己負担で賞金も無いとのことです。
 こんなユニークな賞を日本人が12年連続で取ったことにも改めて驚かされます。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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