第26回   今時の五月病患者さん
2008年5月20日  
 
   5月に入ってゴールデンウィーク過ぎた頃から、体調を崩した若い患者さんが来院されます。産婦人科での、主訴は月経不順の訴えが主ですが、大抵精神的な不安を伴っています。これは、昔から俗に五月病と云われているもので、元々新入生が新しい学校に馴染めず、入学後1ヶ月を過ぎた頃から気持ちが落ち込む症状を指していました。しかし、現在では学生だけでなく、新しい職場に馴染めない新入社員などに見られる症状であり、仕事が本格的になる6月にも症状が起こりやすいと言われています。新しい環境に胸躍らせ、一方緊張を強いられていた気持ちが緩み、環境の変化に心身が付いて行けず、ストレスとなって体や心に変調をきたすものです。
 先日も、「月経異常と食欲不振」が主訴の若い女性が来院されました。症状を詳しくお聞きすると、彼女は今年の3月に富山県で地元の短大を卒業し、難関の就職試験を突破して、晴れて名古屋の大企業に就職が決まり、この4月から名古屋にワンルームマンションを借りて一人住まいで通勤しているとの事でした。ところが4月の生理が狂って、その後生理以外の性器出血があったり、周期が不順となり、そればかりでなく、体調も不調で朝起きにくく、食欲不振で、一日中元気が沸かず、気分が滅入るとの事でした。親元を離れて大都会での初めての一人暮らしと、慣れない会社での仕事、相談できる友人や、知人が未だ出来ないことなどのストレスが溜まり、典型的な、五月病の症状を呈していると考えた私は単に婦人科的な診察に留まらず、心のケアもしてあげようと、体調不良についてアドバイスをしていたのですが、段々話を聞いている内に、妊娠の心配もしている様なので、何!友人が居ないどころか、早ばやとそんな関係の恋人が出来ていたのか、それなら、「五月病」では無くて、「妊娠とつわり」だろう。今まで親身に聞いていた分、つい邪険な気持ちになりましたが、グッと抑えて冷静に診察しました。結果的には、「ストレスによる卵巣機能不全症」所謂「五月病」でしたが、何となく釈然としないのは、恋人が居るようなら、五月病には成らない様な気がするし、逆に五月病なら恋人など出来ないような気がしますが、今時はそれとこれとは別物なのでしょうか?
 それはさて置き、五月病は医学的には「適応障害」と言います。4月から新生活をスタートさせた人は、激変した生活環境や人間関係の中で知らず知らずのうちに心身の疲れが蓄積され、それがストレスとなり、色々な症状を出します。
 精神的な症状としては、やる気が出ない。イライラする。憂鬱になる。焦りや不安を感じる。何をするにも億劫に感じる。学校や職場に行きたくなくなる。周りの出来事に関心がなくなる、などです。
 身体的な症状としては、朝起きられなくなる、夜なかなか寝付けないなどの睡眠障害。免疫力の低下により病気にかかりやすくなる。食欲不振、頭痛、めまい、動悸、女性では月経異常などの症状が挙げられます。
 このような五月病の症状には個人差があり、几帳面で真面目、周囲に気遣いをする人がかかりやすいようです。また、心の準備を充分にしないで新生活に入ってしまった人も、要注意です。一過性のものがほとんどですが、長引くとうつ病に進行する場合もありますから、症状の重い場合はきちんと治療を受ける事が必要でしょう。
 対策としては、先ず、気分転換に心がけてください。心配や悩みを考えすぎるとさらに大きなストレスになります。気持ちを切り替えるために、好きなことに打ち込んだり、美味しいものを食べたり、好きな音楽を聴いたりして気分転換を図りましょう。
 次は休養をしっかり取る事です。疲れをためて無理をせず、睡眠時間は充分とりましょう。一人暮らしを始め、外食や加工食品に頼りがちになっている人は、栄養が偏らないように気をつけてください。食べすぎや、アルコールの飲みすぎにも気をつけましょう。何よりもまず、3食を規則正しく取る事です。そして体を充分休ませ、疲れを残さないようにすることが大切です。
 それから、悩みを抱え込まない事も大事です。不安や心配を一人で悩まずに家族や友人に相談すると良いでしょう。話を聞いてもらうだけでも、心が軽くなり、気持ちが落ち着きます。
 しかしどうしても症状が軽くならない場合は、症状がさらに重くなる前に病院にいって治療を受けることも必要でしょう。心療内科や神経内科で適切な治療を受けると回復も早く、深刻な症状に陥らずに済みます。精神を安定させる良い薬もありますので、症状が回復しない場合は躊躇せずに病院に行くことをお勧めします。
 当院にも、毎年大勢の新人職員が入社します。残念な事に五月病がどうしても回復せず退職する人が時々いましたが、今年も軽い五月病になっている人がいるような気がして心配です。新人の状態をいち早く察知して適切な対応を施し、彼らの気持を少しでも早く安定させ定着してもらう様に、医者としてではなく、雇い主としても努力しなければなりませんので経営者は大変です。
 何はともあれ、全国の新人諸君、五月病になったと感じたら、それはあなたが新しい環境で頑張っている証拠です。心と体を大切にして、この時期を上手に乗り切って一日も早く、学生は勉学に、社会人は仕事に邁進してください。大いに期待しています!
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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