2017年8月21日
第137回
女性の健康寿命を延ばそう!
 今年は猛暑と云う予報でしたが、お盆頃から意外と涼しい日が続いています。今年の天気予報は外れたなと思っていましたら、NHKの気象予報士が"最近の温度が低めなので、その様に思われるかもしれませんが、6月から今日までの今年の夏全体の平均温度は例年に比べて0.3度高く、やはり猛暑です。"と云っていました。長期予報は間違っていなかったようです。何事によらず直近の状況に左右されて全体を見失う、このような錯覚は起こしやすいので注意しなければいけませんね。
 それどころか、雨や曇りの日が多く、湿度が例年に比べて異常に上がっているので、温度が低めでも逆に熱中症に掛かる危険性が高いと云うことです。たまたま前回熱中症について述べましたが、暑さ指数(WBGT)は温度、湿度、輻射熱が1:7:2の割合ですので、湿度が上がると温度が低くても熱中症に掛かり易くなります。救急車の出動率も例年より多いようですので、皆さんお気を付けください。

 前段が長くなりましたが、今回のテーマは女性の健康寿命についてです。
最近、健康寿命が注目されるようになってきました。元々は2000年にWHO(世界保健機関)が初めて健康寿命について提唱したことから始まります。WHOは健康寿命を"平均寿命から日常的・継続的な医療・介護に依存して生きる期間を除いた期間"或いは"日常的・継続的な医療・介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間"と表現しています。これに基づて発表された最新の日本人の健康寿命は男性が平均71才、女性が74才と云うことです。一方、厚生労働省の平成28年簡易生命表によると日本女性の平均寿命は87.14才と世界第2位の長寿で、男性でも80.79才ですので、男性で約9年間、女性で約13年間が要介護。即ち他者の支援が必要な期間になると云うになります。この期間を"寝たきり期間"と表現していますが、日本女性はこの期間が約13年もあります。これは本人にとっても家族にとっても不本意ですので、改善が望まれるところです。
 一般的には、健康寿命は要介護状態になるまでの平均年齢と考えるのが普通ですので、健康寿命が男性71才、女性74才と云うのは少し若いように感じますが、これは定義を厳しく採用しているためで、現実的には健康寿命は男女とも5才位は高いと考えられています。例えば私は今年77才ですが、"普通に働いていますし、ゴルフもしています。しかし、体力はかなり落ちて、物忘れも激しくなりました"と云う状態だと一般的には健康の部類だと思いますが健康寿命からは外されます。
 余談ですが、健康寿命は日本が男女平均74.9才で世界1位でしたが、寝たきり期間も日本は男女平均11.8年。特に女性では12.7年にも達していて、こちらも世界一になっています。ちなみに日本以外の先進国では、寝たきり期間が7年程度です。長寿がなせる業だとは思いますが、幾ら健康寿命が世界一でも、寝たきり期間も世界一では自慢にもならないでしょうね・・・。
 と云う訳で、昨今健康寿命を延ばし、寝たきり期間を少しでも短くする施策が1億総活躍政策として掲げられました。中でも女性の寝たきり期間が特に長いことに関して婦人科学的に検討がなされています。
 女性の寝たきり期間が長い原因には、閉経が大いに関係しています。閉経による女性ホルモン(特にエストロゲン)の極端な減少が様々な疾患の発端となります。脂質代謝が急激に悪化して高血圧、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病に掛かりやすくなり、心血管系疾患も増加して動脈硬化や心筋梗塞、脳の機能低下が起こりやすくなりますが、その頻度が男性に比べて更年期以後逆転してきます。又骨粗鬆症、アルツハイマー型認知症などの発症も増加します。老健施設への入所者も骨折などがきっかけとなり女性が約70%と圧倒的に多いのが実情です。これらから更年期以降の変化に如何に対応するかが重要なことが解かります。
 対応策としては第一にホルモン補充療法(HRT)が挙げられます。女性ホルモンを補充して極端なエストロゲン減少を防ぐことによって上記疾患の発症を抑えます。その他、漢方薬療法、食事療法、適度な運動も効果があります。
 女性に限らず、健康寿命が延びることは本人に取って幸せなのは言うまでもありませんが、家族の介護負担も減少し、国家的にも就労可能年齢の延長、社会医療費節減など社会全体の生産性が向上することが期待されます。
 女性の皆さん(男性も含めて)、折角の長寿を健康に全うしましょう!!