第78回   愛する人を守るため、風疹ワクチンを接種しょう!
2012年9月20日  
 
   今年、久しぶりに風疹が流行っています。昔はほぼ5年ごとに大きな流行があり、"今年は風疹が流行りそうですから気をつけてください"と妊婦さんに声をかけていましたが、最近は大流行にならないので、何時が最後だったか忘れてしまうほどでした(調べたら1994年(平成6年)が大流行の最後の様です)。ところが、今年は先ず、大阪、兵庫など近畿地方で流行り始め、今は東京など関東地方でも勢いを増しています。通常風疹は春先から初夏にかけて流行し、真夏過ぎれば収まるのですが、今回はいまだに増加傾向が続き、8月の時点ですでに通年の5倍に達しているとのことです。
 我々産婦人科の医療機関では、梅雨明け頃から妊婦さんに注意を呼び掛けていましたが、まだ名古屋ではそれほど流行っていませんので、皆さん、あまり実感が無いようで、反応がイマイチです。しかし、名古屋でも、そろそろ患者さんが出始めましたので要注意です。
 そこで今月のコラムでは風疹について特集し、当院の妊婦さんだけでなく広く愛読者の皆さんにも注意を呼びかけようと張り切っていたのですが、先週位からテレビで2〜3局が放送し先を越されてしまいました。ムムッ!残念と云うことですが、テレビ局と張り合っても所詮無理で、それよりもテレビで取り上げたと云うことはいよいよ名古屋にも迫って来たと云うことですので心配です。
 なぜ風疹がそんなに心配かと云うと妊娠初期の妊婦さんが罹った場合、胎児が風疹ウイルスに感染し、先天性風疹症候群と云う、先天性心疾患、難聴、白内障、精神、身体の発達障害を持った赤ちゃんが産まれる可能性が強いからです。先天性風疹症候群の起こる確率は、妊娠12週までに罹った場合、50%を超えると云われています。二人に一人を超えると云うのはものすごい確率です。因みに40才の高年齢出産では染色体異常の確立が急に高くなりますが、それでも1/110位です。
 では風疹について少し説明します。風疹は風疹ウイルスによって起こる急性の発疹性感染症で主な症状として発疹、発熱、リンパ節の腫れが見られます。風疹ウイルスは飛沫感染し(唾液のしぶき)、感染力があるのは発疹の出る2〜3日前から1週間位ですが、麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)ほど感染力は強くありません。三日ばしかとも云われ子供では比較的軽症ですが、稀に脳炎などの合併症を起こすこともあり注意は必要です。又、大人が罹ると子供より症状が重めになり、1週間以上仕事を休まなければならなくなることもあります。いずれにしても風疹そのものは一過性でそれほど重篤な病気ではありませんが、胎児に重篤な後遺症を残すことがあるので妊婦さんが罹らないように注意を呼び掛けているのです。
 風疹を予防するには風疹ワクチンの接種が最も有効です。風疹ワクチンは弱毒株ウイルスを培養・増殖させ、凍結乾燥したものですので、接種してもほとんど風疹の症状は出ませんが風疹ウイルスに対する免疫を得ることが出来ます。しかしながら、2006年度からは、麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)を1歳と5歳で2回接種するようになりましたが、それ以前は1回だけの接種だったり、中学生女子だけの接種だったり、不十分でまちまちな時代があり、現在十分な免疫を持っていない妊娠世代の若い人がたくさんいます。因みに今年の流行でも、年齢別では20〜30代の人が大半を占め、男女別では、男性が女性の約3.3倍も多いと云うことです。
 それでは今年の流行に備えてどう対処するかですが、先ず、妊娠を予定している女性は風疹ワクチンを打って免疫をつけてください。唯、風疹ワクチンは一応弱毒性ですので、安全を期して接種後2ヶ月は避妊することになっています。次にすでに妊娠している方は、風疹の抗体検査を受けてください。(現在は妊娠初期検査の中に風疹抗体価検査が公費負担で必須項目となっていますので、妊娠初期に産婦人科を受診すれば全員検査を受けることが出来ます)。結果が、適正な抗体価を持っていれば再感染の心配はまずありませんので安心です。しかし、抗体価が高すぎる場合は、最近罹った可能性がありますので、IgMと云う感染時期を調べる精密検査が必要です。これが陰性なら以前に罹った時の抗体が高いレベルを保っているだけですから安心ですが、IgMが陽性の場合、3か月以内に風疹に罹った確率が高いので、胎児が先天性風疹症候群に罹患する可能性も考慮しなければなりませんから、専門医に相談してください。抗体価が陰性の場合は感染する心配があります。また抗体価が低い場合も再感染の可能性が少しですがありますので、罹らないように予防をしなければなりません。しかし、妊娠中は風疹ワクチンが弱毒性のため安全を期して打たないことになっていますので、妊娠5か月末までは人込みや、幼稚園など小さな子供の集まるところに行かないと云った消極的な予防が第一となります。しかし、いくら人込みを避けても家族が持ち込んでくる可能性もあります。東京の出張から帰ったご主人が拾ってくるかもしれません。今働き盛りの男性は予防接種行政のひずみで免疫を持っていない人が多いので、他人事とは思わずに、是非ワクチンを打ってもらってください。又、上のお子さんもきちんとMRワクチンの定期接種を受けてください。尚、授乳中は問題ありませんので、次の妊娠を考えている人には出産直後に接種するよう勧めています。また既に免疫を持っている人がワクチンを打ってもブースター効果で、抗体価が上がるだけで副作用は有りませんが、それが嫌な人は抗体検査を先にして、陰性だったり、抗体価が低かったら打つと云う方法もあります。
 今当院では、そろそろ名古屋でも流行り始めた風疹に備えて、"愛する人を守るため、風疹ワクチンを接種しましょう!"と云うちょっとキザなキャッチフレーズで妊娠を希望する女性、あるいは妊婦さんのご家族に風疹ワクチンの接種をお勧めしています。未だ実感がわかないかもしれませんが、転ばぬ先の杖が大事ですので、是非ご検討ください。
 ご希望の方は小児科、内科で(もちろん産婦人科でも)対応しておりますので、お尋ねください。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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