第33回   髄膜炎予防のHib(ヒブ)ワクチンがやっと出た !!
2008年12月19日  
 
   今年も又寒い季節がやって来ました。去年の今頃は全国的にインフルエンザが流行し“今年の流行は早いですよ。妊娠中のインフルエンザ対策を考えましょう”という様な事を書いた覚えがあります。今年は昨年ほどではありませんが、それでも観測史上3番目の早さの流行の様で、その対策について、新聞、テレビなどが呼びかけています。このコラムの読者の皆さんは、ゆめゆめ予防策に抜かりは無いと思いますが、インフルエンザ・ワクチンの投与など、万全なインフルエンザ対策をして、先ず罹らないように、よしんば罹っても重症にならない様に気をつけて下さい。
 さて、今までの話はインフルエンザ・ウイルスによる感染症の話でしたが、これからお話するのは、大変紛らわしいのですが、インフルエンザ・による感染症のお話です。
 何故こんな紛らわしい名前が付いたかは後で説明しますが、この病気はHi(ヘモフィルス属インフルエンザ菌)という細菌が、髄膜炎、敗血症、肺炎、急性咽頭蓋炎等の深刻な感染症を引き起こすものです。特にHiの内でも大部分がb型(Hib)によると云われ、病型では髄膜炎がほとんどを占めています。そして通常5歳以下の乳幼児が罹患し、日本では年間約600人もの子供がHibによる髄膜炎にかかっていると推定されます。年齢別にみると、1歳台に半数以上が発症し、生後3ヶ月以内と5歳以上の発病は少ないと言われています。この内、死亡する子供が約5%、硬膜下水腫、聴力障害、てんかん等の後遺症を残す子供が約24%、合わせて約30%が予後不良となります。初期症状は高熱、頭痛、悪心、嘔吐、不機嫌、痙攣などであり、風邪などの症状とよく似ているため早期診断が難しい病気です。一方、髄膜炎は通常アンピシリンと云う抗生剤を注射して治療するのが基本ですが、アンピシリン耐性菌が増え、治療も難しくなってきましたので、予防のワクチンの必要性が議論されていました。1980年代後半には欧米を中心に予防効果が高いHibワクチンが導入され、米国ではこのワクチンによる定期予防接種により、Hib罹患率はワクチン導入前の1%、100分の1にまで減少しました。その後、世界保健機関(WHO)がHibワクチンの乳幼児への定期摂取を推奨する声明を出したことから、西欧の多くの諸国を含む100ヵ国以上で使用されるようになり、現在では、世界的に見ればHib感染症は稀な疾患になりました。
 ところが残念な事に、日本ではこれまでHibワクチンが承認されていない為、細菌性髄膜炎の罹患率は下がるどころか上昇傾向にあります。何故WHOの勧告まであったのに、承認されないか?これは偏に厚労省の臆病体質にあると思います。以前に予防接種の副作用で、少数の子供に重篤な症状が出て、定期予防接種プログラムが批判された事がありましたので、それ以後各種のワクチン接種が任意接種に変更されました。その結果、今では先進国の中では異例のワクチン後進国となり、はしかのために大学が学校閉鎖になったり、若い人の外国旅行に支障をきたしたりしています。役所と云うものは、大所高所に立って、社会全体を懸案し、長期的な判断を誤らないよう冷静に対応して貰いたいものです。話が横道にそれましたが、この厚労省の体質が新しいワクチンの導入に慎重となり、もう既に外国で実際に使用されているにもかかわらず、臨床治験を延々と続けて、なかなか承認しなかった原因だと思いますが、それでも、やっとHibワクチンの一つが2007年1月末に承認されました。しかし、その後も理由は知りませんがなかなか発売されず、2年近く経った今年の11月にやっと発売されました。
 さて、それではこのワクチンを、誰に何時打てば良いかという事ですが、理論的には、5歳以下の乳幼児は全員が受けるべきだと思います。今回が最初のスタートですので、年齢によって接種回数や時期が異なりますが、原則的には、生後3ヶ月から接種し始め、4回接種が基本です。この事については、当院ホームページ、小児科ニュース“Hibワクチンについて”の欄で小児科の井口副院長が分かり易く解説していますので、一度目を通して下さい。しかし、お子さんの年齢など、個人によって接種時期、回数が変わりますので、詳しい事は当院小児科に直接聞いてください。只、日本ではまだ“任意接種”ですので、接種が徹底されない事、費用負担が多い事などが課題です。環境からHibをなくす為には、集団免疫効果が必要であり、そのためには、このワクチンの早期の“定期接種”採用が望まれる所です。ところで、小児科ニュース“Hibワクチンについて”で、最初の入荷分の予約受付を12月10日から始めますとお知らせしたら、驚いた事に2日で予約が一杯になりました。普通は“Hibワクチンて何?”から始まって、“どうすれば良いですか”という事になり、なかなか予約までは行かないだろうと思っていました。 ところが、このホームページをご覧になっているお母さん方の(たぶん理事長コラムも見てくださっている方々だと思いますが)関心の深さ、理解度は抜群で、すぐ予約に結びつきました。改めて、皆さんの知識レベルの高さに感心した次第です。
 最後に、インフルエンザという名前の付いた云われについてです。此処まで読めば聡明な皆さんには、ほぼ“落ち”は解ったと思いますが、一応念のために書きますと、この菌が発見された時には、冬に流行るインフルエンザの原因菌と誤って考えられたので、インフルエンザ菌と言う名前が付いてしまいました。後になってインフルエンザの原因はこの菌ではなくて、ウイルスだと分かったのですが、菌の名称は現在まで訂正されずにそのまま残って、ややこしい事になっています。只、このワクチンをインフルエンザ・ワクチンと云ったのでは、それこそインフルエンザ・ウイルス・ワクチンと間違えてしまうので、Hib(ヒブ)ワクチンと云って区別しています。    
 
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
▲PageTop  
 
産婦人科・内科・心療内科・小児科・再生医療科(歯科口腔外科・形成外科)
医療法人 東恵会 星ヶ丘マタニティ病院
〒464-0026 名古屋市千種区井上町27番地
TEL : 052-782-6211(代表)
Copyright (C) Hoshigaoka Maternity Hospital All Rights Reserved