2021年2月19日
第179回
それ、森発言でしょう!
 森喜朗、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の"女性がたくさん入っている理事会は時間が掛る"と云う発言が女性蔑視発言と云うことで大問題になりました。
 オリンピック・パラリンピック大会の会長と云う特殊な立場の人の発言なので仕方が無いのかもしれませんが、正直言って私は当初、この発言がこれほど世界中から批判を浴びると思っていませんでした。むしろ、確かにその傾向有るよねと同調気味でした。
 森前会長と同世代の私も下手をすると云いそうですので、ジェンダー問題を話題にする時は特に気を付けなければならないと肝に銘じました。
 唯、年寄りを老害扱いして排除するような論評は、これも高齢者蔑視発言ではないかという気がします。高齢者でも仕事が出来る人は大勢います。多様性を云うのなら、我々高齢者も仲間に入れて欲しいと思います(年寄りの戯言ですかね・・・)。

 女性尊重と云う意味では当院はお手本のような病院です。元々女性の患者さんがほとんどの周産期病院ですので女性の応対には常日頃から細かい配慮をしていました。
 その上、職員も看護師、助産師、事務員を始め女性職員が圧倒的に多いので、存在感が強く、彼女らの意見が常に重視されてきました。
 最近は医師もほぼ半数が女性医師となり、産婦人科では常勤医6名の内半分の3名が女性医師で、非常勤医も6名いますがその内3名が女性医師です。内科、小児科、歯科にも合わせて6名の女性医師が勤務しています。
 最も象徴的なことは病院トップの院長が女性医師と云うことです。又、病院運営を取り仕切るジェネラルマネージャー(GM)も女性です。もちろん看護師長も女性です。
 皆さん有能でこのコロナ過での非常時でも、しっかり対応してくれていますので頼もしい限りですが、このメンバーに副院長、男性医師2名、部長、男性医師2名、女性医師1名を加えた幹部会に出席していると前出の森発言もむべなるかなと思います。
(この発言で私も叩かれるかなぁ。私は私人だから院内に留まると思うけど?)

 一方、医者は昔から(少なくとも私が医者になった当時から)男女差別はありませんでした。給料も同じでしたが、仕事内容も同等で当直も男女同じ回数をこなしていました。
 昔の子育て中の女医さんはさぞ大変だっただろうと思います。今は産休、育休、時短勤務など優遇されていますが、その分男性医師に負担が掛っています。
 どちらが男女平等なのかなとふと考えてしまいます。

 女医さんと云う言葉もひょっとすると差別用語で女性医師と云わなければいけない時代かも知れません。日本語の女医と同じようなニュアンスでドイツ語ではエルチン(Arztin)、英語ではドクトレス(doctress)という云い方がありました。今でも使われているかどうかは知りませんが、もしかすると彼の地では既に死語になっているかもしれません。
 当代の女性医師たちは"女医さん"と云われるとどう感ずるのか聞いてみたい気がします。

 その女医さん希望の患者さんが最近特に増えてきました。ちなみに男の医者希望は一人もありません。淋しい限りです。○○先生(男性医師)希望と個人的に指名されることはたまにはありますが・・・。
 産婦人科は診察の特殊性も考えればある程度理解も出来ますが、小児科でも内科でも女医希望があるようです。病院としては患者さんの希望に沿うようにしていますが、我々男性医師としては、逆差別のような気がして、それこそ森発言ではありませんが、不愉快な気分です。しかし、これは男性医師蔑視だと騒いでみても今のご時世では世論は支持してくれないでしょう。
 逆にちょっと女性軽視のようなことを云えば"それ、森発言でしょう"と非難されそうで、男の医者は耐えるしかないようです・・・。

 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の後任に橋本聖子五輪大臣が決まりました。彼女ならオリンピック・パラリンピックの担当大臣なので内容にも精通しているでしょうし、しかも女性です。今度はメディアも納得するかなと思ったら、選考過程が不透明だとか、森前会長の弟子だから院政を敷かれそうだとかケチをつけています。
 いったい誰なら認めてもらえるのでしょう。橋本さんも大変ですね。