第113回   今頃、乳幼児のビタミンD欠乏症が増えている!?
2015年8月20日  
 
   異常な夏の暑さもお盆を過ぎて多少和らいできましたが、まだまだ厳しい残暑が続いています。このコラムの愛読者の皆さんも熱中症予防はもちろん、紫外線予防にも最善の努力を払われていることと推察しますが、実はその過剰な紫外線予防がビタミンD欠乏症の原因になっているのです。
 栄養状態が悪かった一昔前にはビタミンD欠乏症によるクル病は珍しくない病気でした。しかし、日光浴の推奨や栄養状態が良くなってからは、ほとんど見られなくなり過去の病気になったはずでした。ところが最近、又ビタミンD欠乏症が世界的に増加しており、日本でも乳幼児のビタミンD欠乏症が相次いで報告され、クル病も増えてきています。
 成長段階の子供の骨は、先ず軟骨が形成され、そこにカルシウムやリンなどが入って石灰化して硬骨化されます。ビタミンDは腸からカルシウムを吸収し、体のカルシウムを維持する働きをしていますが、ビタミンDが不足すると骨の石灰化が充分出来ず、骨が曲がったり変形したりする状態になります。これがクル病です。
 最近、又ビタミンD欠乏症が増えだした原因は3つほどあり、第一は紫外線不足、次に完全母乳の推進、そして食事制限や偏食によるものだと考えられています。
 ビタミンDは皮膚で紫外線によって合成されますので、クル病が多かった昔は赤ちゃんに日光浴を奨めていました。母子手帳にも日光浴させるように書いてありました。ところが紫外線と皮膚がんの関連が明らかになり、小児期の紫外線曝露も関与すると云うデータもあって、赤ちゃんにまで紫外線予防対策が広がりました。その結果、紫外線曝露を過度に避けるようになりビタミンD産生不足に陥る事態になったのです。紫外線は過度に浴びると有害になりますが,適度に当たることは大変重要なことだと思います。
 母乳は赤ちゃんにとって完全な栄養源だと考えられています。もちろんその通りですが、唯、ビタミンDやビタミンKについては充分含まれているとは云えません。ビタミンK不足については良く知られていて、出産後速やかに補充しますが、ビタミンD不足に対しては充分な対策が取られていません。ビタミンD欠乏症の乳幼児はほとんどが母乳栄養児で、症状の出ない子でも母乳栄養児はビタミンDが低いことが分かっていますので、完全母乳の場合は離乳食を極端に遅らせないことも大事です。
 クル病になった子供は、アレルギーのために食事制限をしている子に多くみられると云うデータがあります。アトピー性皮膚炎があるために卵や動物性たんぱく質を親の判断で控えている子供がいますが、ビタミンDは卵、魚、キノコなどに多く含まれていますので、これらの食物が制限される時には適切な代替食品の提供が必要です。それから、菜食主義や偏食によってもビタミンDが不足することがあるので気をつけなければいけません。
 通常は医学的に良いとされている、紫外線を避けること、完全母乳で育てること、アレルギーに対して制限食を食べさせることが、ビタミンD欠乏症に関しては良くないことになってしまうのが皮肉です。
 予防するには、先ず適度な日光浴をすること。日焼けしない程度に衣服をつけたままで夏季は10分程度、冬季は1時間位が適当だと云われています。次に母乳栄養児にはビタミンDの予防投与が有効です。人工ミルクはビタミンDを多く含んでいますが、牛乳は母乳と一緒であまり含まれていませんので気を付けてください。そして、アレルギーなどで食事制限のある子は親の判断だけでは無く、主治医と相談して卵や魚なども選択する必要があります。最近は乳児用ビタミンDサプリメントもあるようですので活用してください。
 一方、ビタミンD不足は乳幼児だけでなく成人でも大きな問題になっています。特に日焼けを気にする若い女性はビタミンD不足が多く、妊婦の90%がビタミンD不足と云われています。ビタミンDは胎児に移行しますので、子供のビタミンD欠乏症の予防のためにも妊婦さんはビタミンD摂取を心掛けてください。
 もちろん、ビタミンDは一般の男性や女性にも必要です。骨粗鬆症の予防に重要な役割を果たしていることはご存じだと思いますが、その他に大腸がん、乳がん、糖尿病、心疾患にも関与しており、ビタミンD不足が死亡率と関連することも解ってきました。
 どうやら、ビタミンDを充分に摂取することが健康で長生きする秘訣の一つのようです。
皆さん頑張りましょう!!。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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