第111回   子宮内膜症は現代病?!
2015年6月22日  
 
   最近子宮内膜症の患者さんが増えてきました。十数年前から増え始めていましたが、ここ数年また一段と増加して、生殖年齢にある女性の10〜15%に存在するといわれています。その理由として診断法が進歩したこともありますが、初産年齢が上がっていること、出産回数が減少したことが重要な要因だと指摘されています。子供を大勢産んでいた頃にはあまり発病しなかった病気ですので、少子化傾向がもたらした現代病と云えそうです。
 そこで今回は子宮内膜症について考察したいと思います。皆さん、この病気についてはある程度ご存じだろうと思いますが、一応簡単におさらいします。
 子宮内膜症は、子宮内膜あるいはそれと似た組織が子宮腔以外の部位に発生し、エストロゲンと云う女性ホルモンの刺激を受けて増殖する疾患です。子宮内膜症の大部分は骨盤内に発生し、その病変部は月経時に子宮内膜と同じようにはがれて出血します。それが骨盤内癒着を起こし、月経痛や性交痛の原因になります。又、卵巣内で増殖すると、毎月、卵巣にチョコレート状になった古い血液がたまり、いわゆるチョコレート嚢胞を形成します。一方、子宮筋層の中に生じたものを子宮腺筋症と云って区別していますが、一般的には両者合わせて子宮内膜症としてお話しする場合が多いです。
 原因についてはさまざま考えられていますが、子宮内膜移植説と体腔上皮化生説の2つが有力です。子宮内膜移植説は、卵管を経て逆流した月経血中にある子宮内膜細胞が腹腔内に到達し、腹腔面に生着するという説です。しかし、この説では90%以上の女性で逆流が起こるのになぜ子宮内膜症を起こすのは一部なのか、月経血内の内膜組織は変性した物なのになぜ腹膜に生着するのかという疑問が残ります。一方、体腔上皮化生説は、腹膜がエストロゲンや月経血の刺激を受け、子宮内膜組織のように変化して子宮内膜症が発生するというものです。その他にも諸説ありますが、現時点では、子宮内膜移植と体腔上皮化生のいずれもが重要であると考えられています。
 因みに、初産年齢が18〜20才で5人位子供を出産していた頃の女性は妊娠・授乳期間が10〜15年位続きますので、一生で300回位の月経回数でしたが、現在の女性は450回位の月経を経験します。この病気はエストロゲンの刺激を受けて増殖する疾患ですので、月経周期が多ければ多いほど子宮内膜症になりやすい訳です。一方妊娠中や授乳中はエストロゲンを抑えますので、内膜が発育せず、逆に治療的効果があります。もちろん閉経すれば、卵巣機能がなくなり低エストロゲン状態になりますから、病巣は自然に萎縮し、症状もなくなります。このように以前は子宮内膜症になりかけても早めの妊娠により自然な治療が行われ、重症な状態にならずに経過していたのが、最近は初産年齢が上がったために、初潮から妊娠までの月経回数が増えました。そのため子宮内膜症が発病しやすく、その上妊娠回数が少ないので自然治癒もしにくくなったと考えられています。
 是非皆さんは早めの妊娠を考えてください。これは子宮内膜症のためだけでなく、母児共の安全のためにも大事なことです。
 さて、主な症状は、疼痛と不妊です。子宮内膜症女性の約90%が月経困難症を訴えております。又月経時以外の下腹部痛は約50%、性交時痛・排便痛は約30%にみられます。一方、卵管周囲の癒着によって卵の捕獲や輸送が損なわれれば不妊の原因になります。
 治療法には薬物療法と手術療法がありますが、いずれを選択するかは、症状の程度、進行度、年齢、挙児希望の有無などによって総合的に判断します。
 薬物療法としては、月経時だけ鎮痛薬を服用する対症療法もありますが、主流はホルモン療法、それも経口避妊薬による偽妊娠療法が第一選択になっています。若い患者さんでは、避妊の目的で飲んでいて、副効用として月経困難症が軽減することを実感していた人も多く、その内の2種類の薬が保険適応になったこともあり、使いやすい薬として普及しています。経口避妊薬で効果の無い人にはダナゾールやGnRHアゴニストによる偽閉経療法や、ジエノゲストという黄体ホルモン製剤による治療が行われています。それぞれに副作用もあり、使い方に工夫が必要ですし、いずれにしても薬物療法は根治的なものではないため、再発することも多く悩ましい病気です。
 ですから、もう一度繰り返しますが、早いうちに妊娠し、しかも大勢産んで子宮内膜症を回避し、少子化にも役立って下さい。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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