第130回   老年学会提言”高齢者は75才から”
2017年1月20日  
 
   日本老年学会と日本老年医学会が高齢者の定義を65才以上から75才以上に引き上げるべきだと国に提言しました。理由は死亡率や要介護認定を受けた人の割合の推移などを分析した結果、医療の進歩や生活環境の改善で10年前に比べて身体の働きや知的能力が10才は若返っていると判断したからだと云うことです。そして65才から75才未満を准高齢者と位置付けて、就労やボランティア活動が出来るよう後押しし、社会の支えとして捉え直すことが望ましいとしています。
 ちなみに、現在日本ではWHOの基準に従い65才以上を高齢者と定義付けています。それを踏まえて、公的年金の受給資格は65才からとし、高齢者医療制度では65才以上75才未満を前期高齢者、75才以上を後期高齢者と区分して整備しています。一方道路交通法では何故か65才以上では無くて70才以上を高齢者対象年齢としています。
 内閣府の意識調査でも65才以上を高齢者とすることには否定的な意見が大半で、男性70才以上、女性は75才以上を高齢者とする意見が最多だったと云うことです。
 確かに我々の周りの人を見ても元気な老人が多く、若い人の方が押され気味な感さえします。私がよく行くゴルフ場でもお年寄りが多くて、半分位はゴルフ場利用税免除者(これは70才以上)のような気がします(少しオーバーかな?)。 
 だから、高齢者の定義を75才以上にしても抵抗は無いかなと思いましたが、この提言は多方面に色々な波紋を起こしました。
 先ず、政府はこの提言に対し大変乗り気です。高齢者の定義を75才に引き上げることで、年金受給年齢や、社会保険の自己負担の給付時期を遅らせて、社会保険費を抑制することが出来ます。一方で定年を遅らせ現役として働き続けさせることで、人手不足を解消し、経済の低迷を食い止めたいとの思惑もあるでしょう。もちろん働くことで税金や社会保険料を負担させ財源も潤います。
 それでは、高齢者自身に取ってはどうでしょう。今まで高齢者だった者が高齢者でなくなることで、高齢者に対する優遇措置が無くなるデメリットが起こりそうです。一番は年金支給開始時期が遅れることでしょう。又、医療保険の自己負担率軽減が遅れる可能性もあります。その他、交通機関や公共施設の無料バスの配布年齢も遅れるでしょう。他方、定年が引き上げられればまだ働きたい人に取っては有難いことかもしれません。
 一方で、車の運転に関しては最近高齢者運転ミスが頻繁し、それも60代後半から頻発するのでこちらは高齢運転者の年齢適応を70才以上から逆に65才以上に引き下げるべきだと云う意見もあります。
 高齢者の定義を75才以上に伸ばすことによってそれ以下の人にまだまだ老い込むのは早いよと発奮させるのは結構だと思いますが、政府がそれに便乗して各種の高齢者補助を75才に引き上げる可能性が強いのが心配です。
 いずれにしても、この改定で高齢者から外れて、やっぱり俺はまだ若いんだと喜んでいる人も大勢いるでしょうが、残念ながら私は既にこの改定でも高齢者から外れないところまで来ていますのであまり感激はありません・・・。でもまだ元気ですよ!

 突然話は飛びますが、幾ら高齢者の定義が変わって75才以上に伸びたからと云っても、妊娠適齢期は伸びていませんので油断しないでください。身体や知的能力は若返っても、卵の劣化率は変わらず、残念ながら生殖能力は昔に比べて進化していません。ちなみに閉経の時期も52才が中央値で変わりません。要するに妊娠適齢期は変わらないと云うことです。高年初産は35才以上、40歳を超えれば経産婦でも高年出産です。
 このコラムでも以前から挙児希望の皆さんにしつこく啓発していることですが、簡単に云えば“初産年齢を早くしてください。出来れば20代前半で産み始めてください。高齢になってからの妊娠・出産は母児共に危険が増加しますよ”と云うことです。私としては主に産科学的な立場から、母児の安全を考えての助言ですが、これは一方で少子化対策にも繋がり国家のためにもなるでしょう。
 何はともあれ、若年高齢者の皆さん。復権おめでとう!!
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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