第58回   緊急避妊ピルはあくまで緊急手段だ!
2011年1月20日  
 
   理事長コラム愛読者の皆様、明けましておめでとうございます。遅ればせながら新年のご挨拶をさせていただきます。本年もお付き合いの程、よろしくお願いいたします。
 さて、世間では今年は兎年と云うことで、長引く不況を脱却すべく、飛ぶんだ! 跳ねるんだ!と願望をこめて色々取り沙汰していますが、皆さんは今年にどんな期待を寄せ、又どんな1年の計を立てられたのでしょうか?
 私は今年も政治や経済には余り期待は持てないような気がしますが、個人的には相も変わらず過大な1年の計を立てました。これはあくまで計であって、実行ノルマを伴う義務はありませんので、又、例年の如く年末に振り返ってみるとその半分も実行されていないのではないかと心配です。毎年有言不実行では恥ずかしいので、今年は内容を公表するのを控えます。
 但し、ひとつだけ発表すると、“理紗(初孫の名前)を物心両面で可愛がる”。これは計画以上に実行するだろうと確信できます。取りあえずお雛様を考えなくちゃあ・・・。
 爺馬鹿は程々にして本題に入ります。
 最近、緊急避妊ピル(EC)を希望して来院される10代の若い患者さんが増えました。しかし、其の内の何人かがこの方法について考え違いをしているような気がしましたので、ここで改めて緊急避妊ピル(EC)についてお話したいと思います。
 彼女たちは“特に真剣に避妊を考えなくても、セックスしたらその都度、緊急避妊ピルを飲めば良い。医者も簡単に出してくれるから問題ない。予備も2丈余分にくれるから、残しておけば3回に1回はそれで賄える”位にセックスに関してもECに関しても安易に考えているのではないかと推測されます。
 さすがの私も今更“高校生のうちから性行為をするな”とは云いませんが、せめて“妊娠を望まないなら安全な避妊を施して、又性感染症予防も考えてしなさい”と忠告したくなります。
 先ず第一に知って欲しいのは、ECはあくまで緊急避難であって、決して推奨される避妊法では無いということです。
 現在日本ではまだ正式に緊急避妊ピルとしての薬剤は承認されていません。だから、今は医師の判断と責任の元に、既存の類似薬剤を転用しているのです。実際にはヤッペ法と云って無防備な性交後72時間以内とその12時間後に卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合剤を内服する方法が取られています。当院でもこのヤッペ法を実施しており、配合剤を一度に2丈ずつ飲むよう指導しています。
 理論的には、排卵前なら、近づいた排卵を抑えるか、延すように、排卵後なら子宮内膜の環境を変えて着床しないように作用させる訳ですから、一度にある程度以上の卵巣ホルモンを投与しなければなりません。これは現在承認されている低用量ピル(OC)の1日量の何倍かの量になりますので、人体に悪影響を与える可能性があります。(OCは卵巣ホルモン(特にエストロゲン)の量を減らして、人体に与える副作用を最小限に抑えるように開発されました)。又、避妊率も96%位で、OCはもちろんのこと、コンドームに比べても劣ります。唯、服用後効果がなく妊娠しても胎児にこの薬の影響はありません。一方、服用の副作用として悪心、嘔吐がかなり発現し、服用後2時間以内に嘔吐した場合は、同量のピルを追加内服することになっています。そのために予備の錠剤を2丈余分に処方している訳ですが、これを余分に飲んでも効果が上がらないだけでなく、むしろ副作用の危険が強くなるので、上手に飲めたら予備の薬は破棄するように指導しているのです。ところが全部飲んだほうが効果があるような気がして余分に飲んだり、逆に、残しておいて次の機会にちゃっかり使おうと考えている人がいたり、この方法の危険性についての認識が薄いのが危惧されます。
 もう一度云います。ECはあくまで緊急避難の方法であって、決して日常的に使う方法ではないと云うことです。それからこのヤッペ法では遅れて排卵する場合がありますので、数日後からの無防備な性交は新たな妊娠の可能性が生じます。次の月経が来るまでは、念のため、別な避妊をしてください。場合によっては、EC服用翌日からOCを開始しても良いと思います。あくまで避妊に失敗した時の緊急避難だと考えてください。
 日常的に性交渉があるのなら、むしろOCの方が安全でしかも避妊率も高いです。蛇足ですが、OCだけでは性感染症は予防できません。コンドームを併用するのがベターです。
 ここまで書いて、フト気づいたのですが、このコラムの愛読者の皆さんはECについて充分理解しておられる方たちばかりだと思いますので、こんな説教がましい話は場違いで失礼な気がしてきました。御免なさい!。
 唯、今年に入って2人ほど、続けて安易な考えの高校生(?)に当ったので、もちろん当人にもしっかり説明(説教?)しましたが、それだけでは収まらずにこのコラムでうっ憤晴らしをしてしまいました。私もまだ血気に逸れるようで若いですね!? 
 ついでにもう一つ憤慨するのは、日本や、北朝鮮などを除く、世界各国ほとんどの国で、ヤッペ法に比べて避妊効果が高く、副作用も少ない、卵胞ホルモン単剤の緊急避妊ピルが既に承認されています。これはWHOも推奨している方法です。ところが日本ではもちろん申請されていますが、未だに承認が降りていません。
 ワクチンの話で何度も書きましたが、どうして厚労省は対応が鈍いのでしょう。もはや国際的にはグローバル・スタンダードになっているのに・・・。低用量ピルが承認されるのに40年掛かったそうですが、これもその位掛かるのでしょうか・・・。
 気の遠くなるような話です。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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