第82回   妊娠適齢期
2013年1月18日  
 
   愛読者の皆様、明けましておめでとうございます。すでに松の内も過ぎて、今更の感もありますが、今年最初の理事長コラムですので、恒例(?)により、新年のご挨拶をさせていただきます。
 さて、昨年末に安倍内閣が誕生して、アベノミクスとか云う、デフレ脱却、円高修正などの強気な経済政策が叫ばれ、すでに円安、株価上昇など実体の無いままに前景気を煽っています。ここに来て、補正予算などの裏付けもなされ始めましたが、果たして思惑通りの好況な一年に成るのでしょうか・・・?。
 でも最近は不況、不況と暗いニュースばかりでしたので、経済が活性化して世の中が明るくなれば、それはそれで喜ばしいことだと私も思います。
 一般的に、病気は好・不況に関係なく罹りますので、病院は景気にはあまり左右されないと云われていますが、正直云ってお産に関してはそうばかりとも云えません。妊娠世代の人達の収入、特に雇用が安定しないと、出産後の養育費の不安などから産み控えが起こると云われています。だから、我々産婦人科医にとっては、景気が良くなって若い人たちが経済的にも、性的にも活力を出てくれるとありがたいと思うのですが・・・。
 そんな産婦人科医の姑息な利害はとも角、今は唯でさえ子作り意識が希薄になり、しかも高齢化して欲しくても不妊になってしまった人もいる時代ですから、本当は好・不況など云っている場合では無いのです。
 私がこのコラムでも再三云っていることですが、妊娠・出産にはそれに適した年齢があります。ぜひ適齢期の内にお子さんを産んでください。この件に関しては今年もしつこく繰り返しお話しする積りでいますので、お覚悟を・・・!?
 昔、結婚適齢期と云う言葉がありました。結婚後は妊娠・出産と続きますので妊娠適齢期と云う意味も言外に含んでいたと思います。以前は、結婚適齢期を過ぎても独身でいると、何か欠陥のある人のように思われて、社会的に一人前として認められない風潮がありましたが、今は結婚したい時が適齢期と云う訳でほとんど死語になりました。ただ結婚適齢期は消滅しても、妊娠適齢期は今も厳然と存在します。
 日本産婦人科医会でも、今年度の重要課題として、この妊娠適齢期について啓蒙しようと取り組んでいます。簡単に云えば“初産年齢を早くしてください。出来れば20代で産み始めてください。高齢になってからの初産は母児共に危険が増加しますよ。”と云うことですが、男女共同参画など社会的な問題との絡みもありますので、女性が子供を産むための道具のような印象を与えない配慮が必要となり、どのように啓蒙すれば良いか難しい問題も含んでいますが、ここでは医学的な理由に絞ってお話しします。
  “妊娠適齢期とは如何に?”と云うと、“最も安全に妊娠・出産が出来る年代”と云うことです。それは何時かと云うことになると、初産年齢が20才代、出来れば20才代前半がベスト。第2子以降も若い方がベターと云うことです。逆に云うと高年齢妊娠・出産はリスクが高いので避けましょうと云うことになります。その辺のことを少しデータでお示しします。
 昭和45年の平均出産年齢は26才でしたが、平成22年では31才と5才上昇しました。平均年齢の上昇もさることながら、年齢分布で40才以上の出産が昭和45年では0,5%とわずかでしたが、平成22年では3,4%と7倍強に跳ね上がっています。これを35才以上の出産年齢分布に拡大すると何と25%が該当します。このように高年齢出産が激増することによってさまざまな問題が起こってきました。
 一つは流産の増加です。ちなみに20代の流産率は15%以下ですが、40才の流産率は25%以上と2倍弱になります。又妊娠が継続出来ても、妊娠高血圧症、妊娠糖尿病など、妊娠合併症の頻度が高くなり、妊娠中のリスクが上がります。分娩では帝王切開が増え、当院でも30年前は帝切率5%以下でしたが、今では17%まで増えました。増加のほとんどが35才以上の高年出産です。その他、鉗子分娩や、吸引分娩も増え、高年齢出産のほとんどが何らかの異常を抱える難産で、とても安産は望めない状態だと云っても過言ではありません。
 一方、高年齢妊娠による卵の老化は胎児の異常にも影響します。主に染色体異常児の妊娠が増え、前述したように先ず流産が増加します。新生児でも、例えばダウン症の場合、25才では1/1250位の確率ですが、40才では1/110位に10倍強も増えます。ダウン症児も最近は個性と云われるようになりましたので、発言には気をつけなければいけませんが、ダウン症の子供を産むのが嫌な人にとっては大変なリスクです。
 もっと基本的なことで、高年齢の人は妊娠したくても出来ない人が大勢います。しかし、不妊治療の進歩により自然では妊娠できない高年齢の人が妊娠可能になりました。裏を返せば、自然界では妊娠出来なかった人が妊娠するようになったのです。子供が欲しくても出来ない夫婦にとって、この不妊治療の発達は大変な福音ですが、一方で自然の摂理に反することになりました。ある年齢を過ぎれば子供を産むことが母児双方にとって危険なので、妊娠しにくくなる自然の摂理から云うと、このような妊娠は潜在的に多くのリスクをかかえていると考えなければなりません。
 すでに時が過ぎた人は不妊治療の力を借りても良いから少しでも早く妊娠して欲しいのですが、若い人が“子供は40才になってから考えれば良いワ、何時でも出来るワ”と思っているとしたら“それは大変な間違いだよ。リスキーな事だよ。妊娠適齢期に産んでください!”と声を大にして教えてあげなければいけないと考えています。
 皆さん!貴女のライフサイクルの中に、是非、妊娠適齢期を組み込んでいただいて、安産でハッピーな子宝計画を立てましょう!!
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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