第119回   妊婦さんのジカ熱が心配になってきた!
2016年2月19日  
 
   この冬、ジカウイルス感染症(ジカ熱)がブラジルで(ブラジルは夏ですが)大流行していると報道されています。そしてジカ熱に罹った妊婦さんから小頭症の新生児が多数生まれていると云うニュースも伝わってきました。ブラジル政府は、今年8月に行われるリオのオリンピックまでに収束させるべく国家緊急事態宣言を出して、蚊の駆除など対策に必死になっていることも伝わってきます。ブラジルの8月は冬なので蚊もいなくなるだろうと云う楽観説もありますが、一方で、アメリカの女子サッカー選手がオリンピックを辞退したというニュースも出ていましたし、妊婦さんや出産年齢の女性はリオへは行かない方が良いと云うアドバイスもされています。しかし,流行地域が遠い中南米であることや、感染しても軽症で済むことが多いことなどから、日本国内での危機感はいまひとつ乏しく、何となく他人事のように感じていました。
 ところが、2月1日、WHOが中南米で拡大する感染症ジカ熱について小頭症との関連が強く疑われることから、世界的な脅威であるとして、「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。余談ですが、WHOの緊急事態宣言は、2014年8月にエボラ出血熱の感染拡大で宣言して以来となるそうです。一方日本政府も2月15日、患者を発見した医師に保健所への報告を義務づける感染症法の「4類感染症」と、検疫所での検査が可能になる検疫法の「検疫感染症」に指定しました。
 ここに来て、日本でも一気に危機感が増し、政府決定を受けて、成田空港など全国の国際空港では同日から、中南米などから帰国・入国した人や同地区へ出発する人に対する注意呼び掛けを強化し、水際作戦を取ることになりました。まだ日本での新たな感染者は出ていませんが、急に他人事ではなくなってきました。特に、妊娠中の女性は、ジカウイルスが母体から胎児への垂直感染を起こすことがあり、小頭症などの先天性障害を起こす可能性があるとされていますので充分意識してください。
 さて、それではジカ熱とはどんな病気でしょう。
 ジカ熱は、ジカウイルスの感染によって発熱や発疹などを引き起こす感染症で、最初にジカウイルスが発見されたのはアフリカのウガンダ・エンテベ近郊のZika Forestのアカゲザルから1947年に分離されました。ヒトでは1968年にナイジェリアで行われた研究で分離されています。アフリカや東南・南アジア、中央・南アメリカなどで症例の報告があり、近年ではミクロネシア連邦のヤップ島やフランス領ポリネシアで大流行し、日本においてもフランス領ポリネシアからの輸入症例2例、タイからの1例が報告されています。
 感染経路はジカウイルスを持つ蚊の媒介によって発症します。只、血液、性交渉によっても発病するという報告も出てきました。
 症状としては、3日〜12日の潜伏期間の後、急性の発熱、非化膿性の結膜炎、頭痛、筋痛、関節痛、脱力、斑点状丘疹などを起こします。頻度は低いですが、後眼窩痛、食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛を起こすこともあります。通常は4〜7日間症状が持続しますが、感染しても発症しない人もいますし、症状が軽くてそのまま気付かずに完治する人も多いようです。感染症状自体は軽度ですが、ジカウイルス感染症の後にギラン・バレー症候群の発症や、ジカウイルスの流行地域で小頭症の新生児が増加していることが報告され、関連性が示唆されており、この点が問題です。
 診断はPCRによるジカウイルスRNAの検出、IgM抗体検査やペア血清による中和抗体検査など、血清学的に行います。
 ジカ熱に対する特効的治療法はなく、対症療法のみです。又、発症を防ぐワクチンもありません。蚊刺咬を防ぐことが唯一の感染予防対策です。
 でも、どうしてもオリンピックを見に行きたい人は長袖のシャツ、ズボンを着て、出来るだけ皮膚の露出部を少なくするようにしてください。蚊取り線香、虫よけ剤も有効です。
 しつこいようですが、妊娠可能な女性は特に気を付けて行ってらっしゃい。お大事に!!
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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