第11回 再生医療効果あり! 2007年2月20日  
 
  当院で再生医療を始めて、早いもので、もう半年が経ちました。
いくら大学では確立された治療法とは云え、なにぶん一般クリニックでは初めての事ですので、いきなり患者さんでスタートする前に準備が必要だと感じていました。そこで先ず自己培養線維芽細胞による、しわ治療の被験者に院内からボランティアを募り、実験的治療から始めることにしました。ところがまだ馴染みのない先進医療に恐れをなしたか、はたまた私の説明が怪しく聞こえて、マユツバものだと思ったのか、なかなか手を上げてくれる人がいません。仕方なく少々飴を与えて半ば強制的に応募させた幹部職員の中から適度にしわがあり効果判定に丁度良さそうな二人を選びました。一人は50代の最もしわを気にする世代の女性、もう一人は60代で細胞の増殖が少し心配な年齢の女性でした。しわが取れて若返り、しかも数年も続く魔法の治療を無料で受けられるという誘惑に負けたのか、勇気ある二人は果敢に未知の治療のモルモットになってくれました(これは冗談、既に大学では立証済みの治療法ですので、安心安全です。念のため)。実験ですから、細胞採取も一人は口腔粘膜から取り、もう一人は耳介後部皮膚から採取しました。幸いどちらも旨く培養出来て細胞数にも差は無く、細胞採取場所は患者さんの好みでどちらでも大丈夫ということが判りました。ただ二人とも、あっちのしわもこっちのしわもとわがままを言い、治療範囲が多くなりましたので、沢山の線維芽細胞が必要となり、2〜3週間培養期間が長くなりました。私としては早く結果が知りたいので、早めに培養を切り上げて注入したかったのですが、なかば理事長命令でボランティアを頼んだので、強いことも言えず希望通り顔中のしわの数に充分な量の繊維芽細胞を培養し注入しました。また注入時に局所麻酔だけではかなり痛いという噂を聞いていましたが、基礎麻酔をしたり麻酔法に工夫をしたりしたせいか、二人ともそんなに痛くは無かったと言っておりましたので、これからやってみようかなと考えている方はご安心ください。さすがに注入したその日は顔が赤くなりやや腫れて他人には見られたくないと言っていましたが、翌日は普通に化粧をして出勤して来ました。傍目には多少腫れぼったい程度で目立つほどでもありませんでした。この注入を約1週間の間隔をあけて3度繰り返して治療終了です。
ここまでは無事に出来ましたが、これからが心配でした。と言うのもこの治療は注入して直ぐしわが取れるのではなく注入された線維芽細胞の働きによってコラーゲンを産出してしわが伸びる仕組みなので効果が出るまでに注入後少なくとも1ヶ月位かかります。しかも徐々に直っていくので、自然な仕上がりでしわ治療をしたことを周りの人には気づかれにくいという利点はあるものの、劇的な変化が無く自覚しにくいなど、患者さんにとって最初の頃は自己満足度が低い治療法だと感じられましたので、これはチョット心配だなと思いながら、二人の顔をそれとなく、しかし注意深く毎日見ていました。治療後1ヶ月目、2ヶ月目の写真を見れば治療前のものと比べて明らかに改善はされていましたが、正直これでは本人は満足していないだろうと思い、高いお金を頂いた患者さんからは叱られそうだなと心配になり出しました。しかし3ヶ月頃から二人ともすっかりしわが減って若返ってきました。本人も肌もつやつやと張りが出てきて、化粧ののりも良く効果が出ましたと、満足度も高いようですので、ホッとしている所です。後はこの状態が少なくとも3年続いていくのを待つばかりです。一方、二人の成功を観て、私も私もと今になって急に職員のボランティア希望が増えてきましたが、“今更もう遅い!最初の不安な時に手を上げてこそパイオニアボランティアとしての価値があるのであって、結果良好を確認してからではボランティアの意味が無いので、一般の患者さんと同じ料金を頂きますよと”今は私も強気になって意地悪を言っています。
この再生医療によるしわ治療は効果が実感できるまでに3ヶ月程度掛かり即効性が無いという欠点がありますが、医学の進歩は早いもので、この期間が長くかかる欠点を補うために、しかも異物を注入するのは抵抗のある人のために、ACR法といって自分の血液から多血小板血漿を分離処理することよって培養もせずに、そのまま患部に注入して即効的にしわを伸ばす方法が開発されました。しかも血液処理にもそんなに時間がかからないので一日で治療が終わってしまいます。但しこの方法は従来のヒアルロン酸やコラーゲン治療と同様で即効性はありますが効果が半年位で消滅するという欠点があります。
そこで今私が考えているのは、このACR法と線維芽細胞培養法との併用です。線維芽細胞採取の日にACR法を施行すれば翌日からはしわから開放されるので、2カ月位細胞培養をして充分細胞を増やしてから、焦らずに注入することが出来ます。しかもACR法の効果が落ちる頃には線維芽細胞培養法の効果が出ますので、治療効果は持続したままという事になります。あるいは何度も麻酔をかけて注入するのが嫌な人には、培養期間中だけは現状のしわ状態で我慢してもらって、培養細胞注入時にACRの血小板血漿と混注すれば効果は即効的にあり、注入回数は1回減らすことが出来ます。多少料金はかさみますが早く綺麗になりたい患者さんには良い方法だろうと思います。
それはともかく、一般の患者さんも治療後3ヶ月経った人が何人か検診にみえる様になりました。皆さんの満足度を恐る恐る聞いていますが、おおむね良好で満足度80%以上の様でホッとしています。それにしても女性の美容に対する関心の高さに驚かされるのは、当院のホームページを見てのことでしょうか、遠方からの問い合わせも多く、それも質問だけでなく実際に中国地方や九州の方が新幹線に乗ってはるばる治療に来院されています。高い電車賃を払って何度も来ていただくので、効果が出なかったら申し訳ないと心配していましたがどうやら大丈夫のようです。いずれにしてもしわ用のインキュベーターは現在フル稼働の状態になり、近々増設も考えています。
今月はしわの話題で紙面制限オーバーになってしまいましたので、もう一方の歯槽骨再生治療については、もう少し症例が増えたところで次回以降にお話ししましょう。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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