第21回   どうする!妊娠中のインフルエンザ対策
2007年12月20日  
 
   今年もインフルエンザの季節がやって来ました。例年は12月に入ると少しずつ患者が出始め、1月になると爆発的に増加して、1月下旬から2月に流行のピークを迎えますが、国立感染症研究所の発表によれば、今年はすでに北海道、関東、近畿や山陽地方でインフルエンザ患者が多数報告され、本格的な流行シーズンに入ったとの事です。これは昭和62年以降の20年間では最も早い時期での流行入りだそうで、ウィルスのタイプは近年流行がなかった「Aソ連型」が多いと報告されています。
 さて、このコラムをご覧の方には妊娠中の人も多いと思いますが、妊娠中にインフルエンザに罹ったら私はどうなるの?赤ちゃんへの影響は大丈夫?とご心配だろうと思います。
 先ず妊婦さんご自身の症状ですが、1〜3日の潜伏期間の後、風邪症状(のどの痛み、鼻水、くしゃみや咳)に加えて、38度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠などの一般的なインフルエンザの全身症状は勿論出ます。しかもそれらの症状が重症化することもあり、特に心肺機能が犯されて重篤になることもあります。ですから罹ったら早めの治療が必要です。一方インフルエンザウィルスの胎児への影響は全妊娠を通じてほとんど無いと考えられています。インフルエンザの一般的治療法としては48時間以内に抗インフルエンザウィルス剤を投与することで軽症に抑えることが出来る様になりました。通常は妊婦さんにも使用しますが、これらの特効薬も胎児への影響を考慮して「治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与する」と云う製薬会社の責任転嫁の決まり文句がありますので、実際は使用しにくい面があります。そのため患者さんやご家族の理解を得られない時は安静と対症療法だけで、自然治癒を期待する事になりますが、そんな時本人は辛い思いを長くしなければなりません。
 やはり一番大事な事は、インフルエンザに罹らないように予防する事です。インフルエンザは咳やクシャミで飛び散ったインフルエンザウィルスが鼻やノドの粘膜に付着する飛沫感染が主な感染経路です。ですから、先ず出来るだけ人ごみに出かけないことです。出かける時には面倒くさがらずにマスクをしましょう。帰宅したら手洗い、うがいは常識です。又休養、睡眠を十分にとり、栄養のバランスのよい食事を摂ることも大切です。そして室内の乾燥に注意し、湿度、温度を適切に調節しましょう。しかし、これだけではどうしても避けられない時もあります。
 もう一つの防御策はインフルエンザワクチンの接種です。ワクチン接種によってたとえ罹っても症状を軽く済ませることが出来るからです。現在ワクチンの効果は70%以上と云われていますし、妊婦さんにも是非接種してもらいたいのですが、ワクチンの胎児への影響を心配して躊躇される人も居ます。基本的にはインフルエンザワクチンは病原性を無くした不活化ワクチンですので、胎児に影響を与えることは無いと考えられていますが、それでも安全を期して、日本では接種時期について、自然流産し易い妊娠初期を越えた妊娠12週以降が望ましいと厚労省勧告が出されています。しかしながら妊娠初期にインフルエンザワクチンを接種しても胎児に異常の出る確率が高くなったというデータも無いことから、予防接種直後に妊娠が判明しても人工妊娠中絶をする必要はないとしています。米国では、米国予防接種諮問委員会からの勧告でインフルエンザワクチンは、妊娠のどの時期に接種しても安全である。それゆえにハイリスク条件を持つ場合には妊娠3ヶ月未満であってもインフルエンザの流行が始まる時には躊躇なく接種すべきである。と勧告しています。そして米国疾病管理センター(CDC)のインフルエンザワクチン接種勧告対象者にはインフルエンザ合併症のハイリスクグループの中に、65歳以上の高齢者などと共に妊婦(流行期に妊娠4ヶ月以降に該当する者)も含まれています。
 授乳中の影響についてはどうでしょうか、授乳婦人はワクチン接種が必要なハイリスク(重症化する危険が高い)グループには含まれていません。この理由は、授乳婦人がインフルエンザに罹っても重症化する危険が増すことがないからです。授乳をしていない他の人たちと同じ危険性であれば、ワクチン接種が特に必要とは云えないという考え方です。しかし、授乳中のお母さんにとっては必要がないとしても、もしお母さんがインフルエンザに罹れば、お母さんの顔の近くで母乳を飲む赤ちゃんにもインフルエンザがうつる可能性は十分考えられます。但し母乳を介してうつることはありません、念のため。実際お母さんからの二次感染で赤ちゃんが重症なインフルエンザになったと云う報告もあります。また抗インフルエンザウィルス剤も「授乳中の婦人には投与しない」「投与する場合には授乳は避ける」とされています。したがって授乳中の方もインフルエンザに罹らないようにするのが一番大切な事と云えます。又ワクチン接種の効果が母乳を介して新生児に出現するとの報告もあります。授乳婦人はワクチン接種が必要なハイリスクグループに含まれていないのは事実ですが、日本の厚生労働省を含め接種不適合者としている報告はありません。米国疾病管理センター(CDC)も授乳中のワクチン接種は安全であるとし接種を奨励しています。
 以上ワクチン接種に関する妥当な結論としては妊娠中の場合は米国CDCの勧告を基準とし、接種時期は妊娠12週以降を対象とする。(私の私見は妊娠中何時でも問題ないと考えています)。授乳中の場合は妊娠中と異なり明確な判断基準はありませんが、原則として産後1ヶ月健診以降とする。接種回数は妊娠中、授乳中とも原則2回接種が良いとされていますが、1回でも充分役立ちます。
 妊婦さんで未だワクチンを打ってない人は、今からでも予防接種を受けてください。そのほうが安心だと思います。それから、高齢者、お子さんも是非ワクチンを打ってください。老人は肺炎、子供は脳症など命取りになることがしばしばあります。
 今年もご愛読有難うございました。
それでは皆様、お身体にはくれぐれも気を付けて良いお年をお迎え下さい。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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