第4回 「夢の先進治療」−再生医療を始めました!
2006年7月20日  
 
   ついにと言うか、やっとと言うか、念願の「夢の先進治療」と云われる再生医療を当院で始めることになりました。今、私は非常に興奮しています。28年前、星ヶ丘マタニティ病院を初めて開設した時と同じ位か、それ以上に入れ込んでいます。と云うのも臨床レベルで一般の患者様を対象に再生医療を始めるのは、名古屋ではもちろん、おそらく日本でも初めての事だからです。3月の後半から4ヶ月ほど院内の改造工事をしていたため、皆様に、特に入院患者様にご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでしたが、実はその為の工事だったのです。お陰さまで素敵な雰囲気で設備も整った歯科診療室と、大学、研究室レベルのCPC (クリーン培養室)が出来上がりました。今しばらくは試験治療、培養室の試運転などをしていますが、お盆明けには大々的にスタートの予定です。再生医療と云っても、皆様にはあまりなじみのない言葉だと思います。冷静に考えれば、今回のコラムは、再生医療がどう云うものかと云う所から入らなければいけなかったのですが、結構ハイな気分になっていますので、前置きが長くなってしまいました、すみません。
 再生医療とは簡単に云うと、自分自身の細胞を使って、機能障害や機能欠陥に陥った組織を再生させる治療法です。具体的には自分の体細胞の中の幹細胞を目的に合わせて培養し、必要な組織(細胞)を作りあげ、患部に移植して機能させようと云うものです。これは異物で間に合わせていた今までの移植方法と違って、アレルギーや拒絶反応も起こらず、しかも長期に機能しますので、夢の先進治療と云われ期待されています。特に加齢で衰えていく組織を賦活させるには最適な手段としてあちこちで研究がされていますが、現在大学などの研究機関では皮膚、角膜、心筋、歯槽骨(しそうこつ/歯ぐきの骨)、抗がん免疫細胞、線維芽細胞(せんいがさいぼう/コラーゲンを作る細胞)などでほぼ治療法が確立されました。それぞれに多くの臨床治験がなされ、治療成績も安全性も満足のいく結果が出ていますが、まだクリニックレベルでの治療はなされていません。そこで、星ヶ丘マタニティ病院では名古屋大学口腔外科上田実教授の研究グループと技術提携して、ご指導を仰ぎ、クリニックレベルとして日本で初めて、歯槽骨(しそうこつ/歯ぐきの骨)移植と自己培養線維芽細胞(せんいがさいぼう/コラーゲンを作る細胞)によるしわ治療を始める事になりました。どんな人が対象かと申しますと、まず歯が抜けてインプラントを打ちたくても歯槽骨(しそうこつ/歯ぐきの骨)が衰えているため、インプラントが打てず、入歯で悩んでおられる方、歯槽骨(しそうこつ/歯ぐきの骨)を増殖して移植しインプラントが打てるように再生します。また、顔のしわが気になり出した方、ご自分の線維芽細胞(せんいがさいぼう/コラーゲンを作る細胞)を培養増殖してしわの部分に注入することによってコラーゲンなどの細胞外基質を産生し、皮下組織の再構築を起こさせて若いころの肌を再現します。
 もう少し詳しく説明しますと、歯槽骨(しそうこつ/歯ぐきの骨)治療は、先ず初診で再生医療が適応かどうかを判断し、適応の患者様は、腰の骨(腸骨)から骨髄穿刺にて骨髄液を20〜30cc 採取します。これを1ヶ月から1ヵ月半かけて培養し、歯槽骨(しそうこつ/歯ぐきの骨)細胞を選択的に増殖させます。細胞の増殖には個人差があり、一般的に若い人の方が生えは良いようです。必要な細胞数に増殖した所で歯茎への移植手術を行います。この時インプラントの土台も埋め込みます。こうして2〜3ヶ月待つと移植歯槽骨(しそうこつ/歯ぐきの骨)細胞が化骨して太く丈夫になりインプラントの土台もしっかり固定しますので、ここで義歯を付けて完成です。完治までに5〜6ヶ月と少し長く掛かりますが、治療後の効果は長く安定しています。
 しわの治療も、まず初診で適応かどうかを決め、適応の患者様は、口腔粘膜を5×5mmくらい切除して培養します。培養期間は個人差がありますが1ヶ月から1ヵ月半かかります。必要十分な線維芽細胞(せんいがさいぼう/コラーゲンを作る細胞)が増殖したら、しわの部分に注入します。これを1週間に1度の割合で3度します。 その後コラーゲンの産生が急増して、しわが次第に消えていきます。満足のいく効果が出るまでには2〜3ヶ月掛かりますが、その代わり3〜4年も効果が持続します。将来的には1度増やした細胞を冷凍保存しておいて、効果が薄れた頃に再注入することも可能です。ちなみに今までのコラーゲン注入法の効果は半年位と云われています。
 再生医療はこのようにアンチエイジング医療として体に優しい画期的な治療法です。出来れば将来、角膜や皮膚の治療も進めたいと考えていますが、私の究極の夢は再生医療による骨粗鬆症の治療です。老人は骨量が減ってちょっとした事ですぐ骨折します。特に骨盤骨折や大腿骨骨折をすると、寝たきりになってしまい、骨折は治っても寝たきりは治らないことがままあります。これを防ぐには骨量を増やすしかありません。そこで再生医療を活用して、骨量を増やし骨折を防いで元気な老後を過ごしていただこうと云う訳です。この分野も大分研究が進んでいますので、実用ももうすぐです。ただ難点はいずれの場合も保険適応になりませんので、費用が全額自己負担になることくらいです。もっと詳しく知りたい方はご来院下さい。直接担当医が詳しくご説明いたします。
 ところで、夢の先進治療を始めようと云うのに、世間では近藤が先走って訳の判らんことを始めたとか、歯科や美容整形に手を出したとか揶揄したり、病院の職員までが(!?)、また理事長の道楽が始まったと、冷めた目で見る者もいるようですが、とんでもない。この素晴しい企画を趣味や道楽で終わらせてなるものか。思い起こせば28年前名古屋で初めて、部屋は綺麗、食事も美味しい、患者様に優しい周産期病院を開院した時も、色々云われましたが、妊婦様の絶大なる支持を得て成功しました。そして、今ではどの施設でも当たり前になっています。あの頃に比べ歳は取りましたが、再生医療に対する新たな情熱がみなぎっており、もう1度、老体に鞭打って頑張ろうと今、私は燃えています。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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