第62回   超高年齢出産ドラマ!
2011年5月20日  
 
   風薫る五月になりました。
 しかし、今年は何時までも寒くて春らしくなって来ないので、東日本大震災が起った様な異常な年だから、何か他にも天変地異が起こるのではないかと心配になりましたが、さすがに連休の頃から急に暖かくなり、いつもの五月に戻ったようで、私の通勤路にあたる東山動物園の正面の庭や、ご近所のお宅のつつじも季節通り咲き誇り、何となくホッとしています。

 さて、最近テレビで超高齢出産に関するドラマを偶然でしょうか二つもやっています。一つはCBCの“生まれる”と云うドラマで、もう一つはNHKの“マドンナ・ヴェルデ” と云うドラマです。
 両方とも毎回観ている訳ではありませんので、詳しい内容は説明できませんが、
 CBCの“生まれる”は51才の既に成人した子供を含めて4人の子持ちの女性が妊娠します。ところが主人が突然亡くなってしまいました(死因は観てなかったので、はっきり知りません)。女性は悩み、長女には相談し、彼女の反対も有って、一度は妊娠中絶を決めますが、どうしても出来ずにキャンセルして病院を出てしまいます。無くなった主人が残してくれた命なので、大切にしなければいけない、産もうと決心し、一家が集まった主人の四十九日の法会の時に、そのことを子供たちに告げます。子供たちは動揺し、自分自身にも色々問題を抱えているので、今のところ、次男以外は反対している状況です。
 堀北真希(この女優は品があってなかなか良いですね)演ずる長女が出版社の社員ですが、丁度高年齢出産に関する特集を企画中で、前回は羊水検査を取り上げていました。なかなか真剣に掘り下げており、患者さんの心理について教えられる面もあり、結構重いドラマになっています。その他、体外受精、代理出産等の話題がボンボン出てきます。多少違和感が有る時もありますが、母親の妊娠を肯定するための伏線なのでしょう。一応、こちらのドラマは51才とは云え、まだ妊孕力のある女性が自然妊娠した話ですが。
 NHKの“マドンナ・ヴェルデ”はもっと極端で、何かの病気(観てなかったので判らない)で子宮を取って自分では産めなくなった産婦人科の女医さんが(どうやら不妊症が専門らしい)、手術前に自分の卵を採卵し、夫の精子と顕微授精した受精卵を凍結保存しておいて、それをもう既に閉経した55才の自分の母親の子宮に戻して代理出産をしてもらおうと云うかなり強引な設定のドラマです。最初は躊躇し拒絶した母ですが、結局承諾してしまいます。もちろん日本では代理出産は認められていませんので、内緒で事を運ばなくてはいけません。いくら自分が専門でも受精卵の移植手術は一人でこっそりは出来ませんので、その辺に少し無理はありますが、そこはドラマです。うまく行って、しかも一度の移植で見事着床してしまいました。閉経後の女性の子宮内膜を着床出来るように整えるのは現実にはそれほど簡単ではありません。これもドラマです。
 それにしても、松坂慶子は良いですねぇ・・・。あの全てを包みこむ様な、ふくよかで、穏やかな雰囲気のせいでしょうか、あの年でお腹の大きな妊婦さん役をやっても全然違和感がありません。思わず私も“貴女なら55才でも大丈夫です”と引き受けてしまいそう・・・。(コラコラ!エコヒイキはいけませんよね)
 どちらもドラマとしては比較的良く出来ていて、“命の大切さ”“家族の絆”と言った事では共感できますし、子供が欲しくても出来ない女性の深層心理について教えられる部分もありました。これからどのように発展していくかわかりませんが、おそらくドラマとしては、数々の困難を乗り越えて無事出産し、目出度し、目出度しと云うことになるのでしょう。
 しかし、出産と云うことになれば、いずれも危険な超高齢出産であることは間違いありません。分娩様式は経膣分娩では、あまりに安易に過ぎますので、たぶん予定帝王切開術にするでしょうが、それでも決して安全だとは云えません。
 私が一番危惧するのは、このようなドラマの影響で、特に松坂慶子や、田中美佐子の妊婦姿がごく自然で違和感が無いので、世間の人々が、50代でお産をしても心配ないと思い違いすることです。
 このコラムにも何度も書きましたが、以前から言っているように、“お産は女性にとって一生に2度か3度の大げさに云えば命をかけた大仕事です”。
 出産適齢期の若い女性でもそうなのですが、年齢と共にその心配は増えていきます。50代ではそれが現実のものになる可能性があると考えて欲しいのです。
 女性の体はこの半世紀で子供を産み易いように進化している訳ではありません。それどころか日本人はスタイルが良くなった分、骨盤が狭くなって産みにくくなったとさえ云われています。ましてや年齢が上がれば、妊娠中の合併症も増え、一方で産道も硬くなり益々難産になりがちです。それでも異常になる確率が50年前より極端に減ったのは産科学の進歩のお陰です。しかし、現在の産科学的管理をもってしても50才代以上の超高齢出産に対しては万全とは云えません。その辺を理解して欲しいのです。
 ちなみに、高年齢出産記録に挑戦する勇気のある人は、世界では70才のインド人が、精子卵子の提供を受けて出産(年齢が怪しいとの説あり)、日本では67才の女性が双子を出産したと記録されていますので参考にしてください。唯、そのような方は当院へは受診しないでください。最後まで無事に管理する自信がありません・・・?。
 やはり皆さん、自分のためにも、我々産科医のためにも始めてのお産は出産適齢期の20代でしましょう。そして遅くとも40代前半で産み終わりにしてください。
 お願いします!。
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
▲PageTop  
 
産婦人科・内科・心療内科・小児科・再生医療科(歯科口腔外科・形成外科)
医療法人 東恵会 星ヶ丘マタニティ病院
〒464-0026 名古屋市千種区井上町27番地
TEL : 052-782-6211(代表)
Copyright (C) Hoshigaoka Maternity Hospital All Rights Reserved