第10回 妊婦さんにお酒は禁物 2007年1月19日  
 
  皆様、あけましておめでとう御座います。

今年もよろしくお付き合いの程お願いいたします。

 新年のご挨拶をするには少し遅きに失しましたが、今年初めての理事長コラムですので、お許しください。又今年も多くの患者様より年賀状をいただき有難うございました。お返事を出さない無礼も重ねてお許しください。いただいた賀状のほとんどは昨年当院で出産された患者様からのものでした。いずれも新しく家族に加わった可愛いお子様の顔写真を中心にお礼の添え書きのある心温まるものばかりで、「そうそうこの方は結局帝王切開になった方だ」とか、難産になった方のほうが印象深く思い出されて、今はお元気そうなのを嬉しく、また楽しく拝見しておりました。そんな中で、赤ちゃんの手形のみを載せた賀状がありました。写真は無く、多分原寸大と思われる手形の朱肉の赤の鮮やかさと漆黒の文字との対比もセンス良く強烈な印象を受けました。素晴しい年賀状有難うございました。いずれのお子様も健やかに成長されますよう心よりお祈りいたします。
 さてお正月も明けて外来診察が始まりましたが、かなりの妊婦様から、「お正月につい飲んでしまったが大丈夫でしょうか」と言う質問を受けます。以前は「確かにアルコールは胎児への影響がありますが、それは多量に常用している所謂アルコール中毒のような人で、お正月にチョット呑んだ位では平気です」と答えていました。勿論、それが学会の認識でした。ところが最近事情が変わってきています。
 取りあえず先ず、アルコールの胎児への影響について説明しますと、妊娠初期では種々の奇形を生じて、流産、死産の原因となり、妊娠中後期では胎児発育障害、中枢神経障害が生じると云われています。これらの典型的なものは胎児性アルコール症候群として知られています。次に飲酒量との関係ですが、以前云われていたチョットの量と云うのは、一日摂取量アルコール15ml位で、ビールなら350ml缶1本、ワインで云えばグラス一杯、日本酒だと1/2合位の量です。余談ですが、ある医学雑誌にチョットの酒の量を酒好きの医者(産婦人科医とは限らず)はそうでない医者より多めに患者様に云う傾向があると云うデータが載っていました、面白いですね。いずれにしても、日本人の女性にはアル中の人などほとんど居ないこともあって、アルコールに関してはどちらかと云えば寛容で少々の飲酒は胎児に影響が無いと考えられていました。それどころか、アルコールが陣痛を抑えることが判っていましたので、切迫早産の治療にアルコールを使っていた時期さえありました。これも余談ですが、昔のハリウッド映画で妊婦さんがお腹が張ったので張止めにウォッカを飲んで寝ると云うシーンがありましたが、これはアルコールが陣痛を抑えることが、生活の知恵で民間でも知られていたと云う事だと思います。
 ところが最近「これ以下の飲酒量であれば胎児に影響が無いと云う安全量は確立されていない」要するに「少ない量でも胎児に影響を及ぼす可能性がある」と云う論文がアメリカを中心に出てきました。厚労省も「健やか親子21」の中で妊婦の飲酒ゼロを目標とするとうたっていますし、今や禁酒の方が主流となりました。ですから飲まないに越したことはありません。しかし一般的には胎児性アルコール症候群は大量のアルコールを常用している母親から生まれていることが多いのも事実です。そこで以前から示されているアルコールの一日摂取量アルコール15ml以下の場合は許容範囲で、90ml以上になると奇形の発生が明らかに高くなるので危険と云う様に考えてくだされば良いかと思います。またまた余談ですが、以前から時々触れている様に、医者を40年もしていますと、過去に善しとされていたことが急に禁忌となったり、以前は無効とされていたことが、有効になったり、矛盾したことが度々起こります。医学の進歩の結果で仕方の無いことですが、患者様への説明には大変苦労します。
 それはさて置き、妊婦の飲酒に対する結論ですが、「妊娠中は全期間を通じて禁酒を慣行する」と云うことになります。妊娠と判明したら禁酒を原則としてください、但し、少量飲酒に対する負のエビデンスも確立されていませんので、お正月に少々飲んだからと云って、それで直ぐ不安になることもありません。今後に気を付けてくだされば充分です。
 ついでに、タバコについても一言。喫煙により子宮内胎児発育遅延が起こる事は有名で、ヘビースモカーでは約450g小さくなると云われています。また流産、早産、前置胎盤などの異常も増加し、特に早産率は喫煙本数と明らかな相関があります。したがって妊娠が判明したら速やかに禁煙をしてください。多くても一日5本以下にしましょう。
 色々気になる事を書きましたが、妊婦の皆様、あまり神経質にならずに、おおらかな気持ちで過ごしてください。 そして良い子を産みましょう!
 
 
星ヶ丘マタニティ病院 理事長 近藤 東臣  
 
 
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