2011年7月20日
第64回
なでしこジャパン。女子W杯優勝おめでとう!
こんな快挙を観て黙ってはいられません。自称辛口スポーツ万能評論家の私としても今回は思い切り賛美の論評をしたいと思います。
決勝の相手は世界ランク1位のアメリカで、今まで1度も勝った事の無い国です。平均身長で7センチも違い、体重差は(女性のため?)公表されていませんが、体格的には大人と中学生のような差が有ります。しかも、パワーとスピードだけではなく、技術的にも優れています。案の定、前半はそのパワーとスピードで圧倒的に攻めて来ました。それでもボール支配率は日本が51%と少し良かったようですが、見た目には攻められっぱなしで、シュートの雨あられとヒヤヒヤものでした。強烈なシュートの幾つかがバーやポストに跳ね返されて、日本は命拾いをしていましたが、この内の1本でも決められていたら、試合は一方的になっていただろうと思います。試合の神様が小さな日本に判官贔屓をしていたような気がします。やっとの思いで前半を0対0で折り返せたのが、先ず大きなポイントでした。後半24分にアメリカに先制されましたが、後半は流石のアメリカも少し攻め疲れしたのか、攻守五分五分になり日本にも得点のチャンスが出て来ました。そして後半36分、宮間がゴール前での混戦からすばやくボールタッチして同点に追い付いてくれました。彼女は両足で同じ様にキックが出来る器用な選手で、コーナーキックやフリーキックを任されていますが、この時は機敏性も発揮しました。
延長戦に入って、前半14分にアメリカのエース、ワンバックに“これがアメリカ”と云うような豪快なシュートを決められた時には、正直云って私もこれまでかと思いました。唯、延長も後半になると両軍ともに疲れて足が止まり気味で、お互いに危ない場面が起こっていましたし、特にアメリカは守りの姿勢になっていましたので、日本の攻撃場面が多くなり、コーナーキックを奪うことが出来ました。ここでキッカーの宮間と澤がニヤーで勝負と話し合い、澤が後ろから飛び出してニヤーから斜め後ろのゴールへ右足で角度を変えて蹴り込みました。このシュートは本当に芸術的で難易度の高いもので、何度もビデオで見ましたが、正に神懸りです。幾ら二人で示し合わせてもあんなに上手くは二度といかないでしょう。正に澤の執念が実ったシュートでした。これも大きなポイントです。もう一つポイントに挙げたいのは、終了間際の岩清水のファール。一般的には、あんな時間にあんな所でファールをしてはいけない。折角同点で終わりそうなのに、フリーキックで得点されたらどうするんだ、と云われそうですが、あの場面、あそこでシュートを打たれていたら、デフェンスはほとんど出来ていなかったので、よっぽど相手がミスキックをしない限り1点入れられていただろうと思います。レッドカードは審判のやりすぎだと思いますが、イエローカード覚悟で、あそこは止めるべきです。事実、選手たちは皆そう思って彼女に感謝したようです。
そして、最後がPK戦。これは日本の若いキーパー、海堀が最初のキックを止めたことでほぼ勝負は付いたと云えるでしょう。あれも左へ飛びすぎて足で止めていますが・・・。
耐えて、しのんで、最後まで諦めずに粘ったパスサッカーの勝利と各国メディアは一様に賞讃しています。体格に劣る日本女子サッカーをここまで昇華させた選手、関係者の努力の賜物だと私も心から誉めたいと思います。
そしてその象徴が澤穂希選手です。澤さんMVP本当におめでとう。
だけど一方で、今回はそれ以上に幸運と云う女神が終始ついていたような気もします。順当にいけば予選リーグを1位で通過して、準々決勝で2連覇中のドイツとは、当たらない筈でした。処が、イングランドに破れて、予選2位通過となり、いきなりドイツと当たる羽目になりました。大方の予想は(私も含めて)ここで終わり。今回もメダルに届かないだろうと云う事でしたが、しかし、イングランドに敗れた事で、大型選手に対するパスサッカーの学習がしっかり出来たようです。災い転じて福となり、粘りに粘って延長戦の末、強豪ドイツを破ってしまいました。一方でアメリカも予選2位となって、別のゾーンに行ってしまい、ドイツに勝っても次はアメリカと当たる筈がスウェーデンに変わっていました。これも日本に取って幸運だったと思います。アメリカよりはやり易い同じタイプの相手と先に当たったからです。そして勢いを取り戻したアメリカと決勝で戦うと云う最高の舞台が出来たのです。アメリカに比べれば失う物の無い日本はプレシャーが少なかったかもしれませんが、それでも、最初に書いたように幾つかの幸運が重なってこの一戦もものに出来たと思います。でも運も強さの内と云います。今回の“なでしこジャパン”の優勝は全てが満たされて成就したのでしょう。
余談ですが、“なでしこジャパン”とは素敵なネーミングですね。2004年アテネ五輪に女子サッカーが出場を決めた時、日本サッカー協会が愛称を公募して約2700件の応募の中から選ばれたものだそうです。元は花の名前ですが“撫子”と語意が通ずるので、昔から、いとしい子供や女性になぞえられ、万葉集にも出てくる響きの優しいやまと言葉で、日本女性を表すには最高だと思います。英字新聞に“Nadesiko”とローマ字で書いてありましたが、この“ひらがな”で書かれたニュアンスを上手に英訳してくれているでしょうか?・・・。
一方、直接対決で負けたにもかかわらず、ニュ―ヨークではエンパイアステートビルの先端を“白、赤、白”と日の丸を模したライティングをして祝福してくれたとの事です。アメリカ人の心の大きさにも胸打たれます。
さて、この感動の物語に比べれば、どうでも良い事ですが、今回も午前3時半からの、早朝の決勝戦を観戦しました。当日が海の日で休みでしたが前の轍(アジア大会の優勝戦)を踏まない様にゴルフの予定は入れませんでした。もっとも、前日にラウンドしましたので、この暑いのに年寄りが2日続きのゴルフなどしないのは当たり前ですね・・・。