2025年4月18日
第229回
日本の人口 下落最大!!
今年の初めには今年こそ世界経済は好転し、日本も景気が良くなると専門家が予言していましたが、4ヶ月も経たない内にトランプ大統領の関税ショックで、世界経済は混乱し、日本も好景気は望めないような状態になりました。世界中がアメリカに振り回されています。大国のエゴは勘弁して欲しいですね。
そんな状況ですのでせめてこのコラム位は楽しい話題を書きたいと思っていましたが、15日付けの中日新聞に「日本人89.8万人減 下落最大」と一面トップでデカデカと出ていました。周産期病院の理事長としてはこの話題を無視する訳には行きません。結局今回も暗い話になってしまいそうです。
総務省が公表した2024年10月1日時点の人口推計によると、日本人は前年同月比89万8千人減の1億2029万6千人で、比較可能な1950年以降、最大の落ち込みだったそうです。14年連続で少子高齢化が進み、出生数が死亡数を下回る自然減が拡大しているためだと言うことです。年齢区分別では14歳以下が11.2%。65歳以上が29.3%と高齢人口が3倍弱多くなりました。そんな中で外国人は増加しており、350万6千人で過去最多だそうです。要するに日本人の生産人口が減りそれを外国人で補っている現状です。
今の経済規模を続けたいなら、14歳以下が11.2%しかいない現実では、この傾向はドンドン進み、生産人口の1割以上が外国人になってしまうかもしれません。
県や自治体が独自に企業誘致をして若者の流失を防ぎ、 外国人勧誘によって、人口減も防ごうと努力していると言う記事も見ましたが、これでは資金力にも限界があり、自治体同士の奪い合いのようになって効果も薄いのではないかと思います。やるなら国が積極的にもっと徹底した少子化対策を取るべきです。
政府は少子化対策として、最近突飛に妊娠奨励金みたいなものを出すと発表しました。額が5万円と少額ですので、それが切っ掛けで子供を産もうと考える人がどれだけ増えるかは疑問ですが、子宮内で心拍が確認できたことが条件で、それ以後に流産しても早産しても支払うと言うことです。子供を産もうと頑張ったけれど結果として産めなかったと言うことですので、流早産は良いとして、人工妊娠中絶をしても支払うことになっているのにはビックリしました。この人達は自分の意志で子供を産むことを拒否した訳ですので、少子化対策に協力したことにはならないと思います。この法令を決めた委員会のメンバーの常識が分かりません。色々な法律がこのような常識の人達で決められているかと思うと、なんだか心配な気がします。
一方で、この法令は我々産婦人科医も余分な時間を取られそうで不安です。心拍が確認できたかどうか、患者さんの質問(要望?)に正確に答えなければなりませんので、トラブルになりそうな事例が増えそうです。
出産奨励金も少子化対策の一つかもしれませんが、政府が取り組むべきは、私が随分前から言っているように、出産費用全額負担はもちろん、子供が成人するまでの養育費を大幅に助成することです。それも3人目以降は特別に手厚くし、極端なことを言えば、養育費だけでも生活できるくらいの額を出すことにすれば、きっと子供を持とうとする人は多くなると思います。それとシングルマザーもその子供でも法的に差別しないことも大事だと思います。
こんな話はこのコラムにも何度も書きました。メディアでも取り上げています。それでも国は財政が厳しいのか、或いはそれほど大きな喫緊の問題ととらえていないのか中々動こうとしません。歯がゆい限りです。既にフランスやイギリスなどではこの効果が出て人口が回復し始めています。
日本で深刻なのは既に妊孕力のある女性の絶対数が減ってしまいましたので、合計特殊出生率が2.0では人口は増えません。要するに一人の女性が二人産んでくれても人口は減り続けるのです。
それなら発想を変えて、人口6千万人の国を目指して理想の福祉国家を模索しても良いかもしれません。現に、その位の人口で豊かな福祉国家が北欧にはあります。これもしばらくは「産め、産め」と騒がなくても良しかもしれませんが、いずれは、合計特殊出生率が2.0以上を保たねば、すなわち安定した生産人口を保たねば成り立たない制度です。
今や、お産が減ると産婦人科病院が困ると言った些末な問題では無く、国家100年の大計に関わる問題です。皆さんも真剣に考えてください。
