2016年12月18日
第117回
テレビドラマ“コウノドリ”が好評!
 最近、テレビドラマの“コウノドリ”が話題になっています。綾野剛演ずる“ある時は冷静な判断力と患者にあたたかく寄り添う、心優しき産婦人科医。またある時は、情熱的で謎多き天才ピアニスト。二つの顔を持つミステリアスな鴻鳥(こうのとり)サクラ”が主人公のシリアスな医療ドラマです。毎回産科疾患や胎児異常の妊娠・出産が取り上げられ、それに対する周産期医療チームの真摯な活躍、家族の苦悩、葛藤などが感動的に描かれていて、涙なしでは見られない感動のドラマと云うことで巷では大好評です。
 実は産婦人科の医者の間でも話題になっていて、しかも、概ね評判が良いようです。毎週金曜日の午後10時から放映され、昨夜(12月18日)が最終回でした。私も評判を聞いて観よう、観ようと思ったのですが、以外と金曜の夜は忙しくって(何が・・・?夜遊び?)結局3回ほどしか見ることが出来ませんでしたが(昨夜も忘年会が有って・・・、観れませんでした)、観た限りではいずれも素晴らしいドラマだったと思います。産婦人科の医者としての立場で見ると妊娠の異常、胎児の疾患などが医学的に正確に客観的に捉えられていて我々が患者さんに説明するのと同じニュアンスで描かれているので違和感がありません。一方状況を知らされた患者さんの反応も実際の現場の雰囲気と大差なく自然です。唯、我々には見えないところで患者さんや家族には葛藤や苦悩が有ることを教えられました。又、早産、前置胎盤、胎盤早期剥離などの産科疾患や、風疹症候群、口唇口蓋裂、無脳児など胎児疾患を一般の人に正しく理解してもらう良いきっかけにもなっていると思います。必ずしも予後の良くない事例も出てきますが、生命の誕生は神秘、お産は奇跡の連続と云う観点から構成されていて、医者は何も起こらないように細心の注意を払い、もし何か起こった時には全力で対応するが、あくまで生命の神秘に対しては脇役と云う立場で描かれているので、感動的になるのでしょう。
 話は飛びますが、このドラマが始まった丁度2か月前の金曜日の夜、日本産婦人科医会学術集会の会長招宴が新潟の老舗料亭で開催され、私も招待されていたのですが、その席に“コウノドリ”のモデルとなった大阪大学の荻田和秀先生も出席されていました。“今夜から産婦人科医療の最前線を真面目に感動的に捉えたドラマが始ますが、そのモデルになった荻田先生です。明日の総懇親会では得意のピアノを演奏してもらいます”。と云う紹介があり、ひとしきりその話題で盛り上がりました。ドラマの中の鴻鳥サクラのように、如何にも優しそうで物静かな先生でしたが、地味なメガネをかけて口ひげをはやした風貌は綾野剛の華やかなイメージとは少し違って真面目な産科医と云う感じでした。出席者の皆さんが一緒に写真を取っていましたので、私も1枚撮らせて貰いましたが、“私の写真が視聴者の夢を壊すといけないので、あまり他人には公開しないでください”とのことでしたので、このコラムで載せるのは控えますが、ご謙遜で結構イケメンでした。翌日の総懇親会のピアノ演奏はステージ衣装でビシッと決めて、ドラマのベイビーのように緑色の鬘まではかぶっていませんでしたが格好よく、ピアノの腕もさすがプロと云う素晴らしいものでした。
 話題を戻して、このドラマの原作漫画を描いた鈴ノ木ユウがドラマの紹介で“漫画コウノドリは、僕に子供が生まれたときに感じた「人生においてこれ以上ない感動」から生まれました。僕も出産に立ち会って人生が変わった一人です。あの現場で、僕が妊娠・出産したわけではないのでおこがましいですが、妻と感動を共有したと思っています。妻に本当に感謝しています。なので今でも頭があがりません”と書いています。
 余談ですが、正直云って産科の医者は余計な気を使うので必ずしもご主人の立会分娩を歓迎してはいませんが、このように人生が変わる位感動してくれるならそれも悪くないかなと改めて思いました。
 それはさて置き、その時の立会医が萩田和秀先生だったようです。生命の誕生の神秘に触れて感動した作者が、是非、産婦人科医療を描いたヒューマン医療漫画を書きたいと云うことで、萩田先生のアドバイスを得て、講談社の雑誌「モーニング」に連載したのがテレビドラマ“コウノドリ”の原作です。赤ちゃんが無事に生まれてくることは当然ではなく、実は妊娠・出産にはさまざまなリスクや危険があり、元気に無事に赤ちゃんが生まれてくることは奇跡の連続である。そして“命”の現場ではさまざまな葛藤があることなどを決して大げさではなくリアルに描き、男性誌では異色の大ヒットだったそうです。
 これが感動を呼び、涙なしには読めない漫画と云う事で評判となって、今回のドラマ化が実現した訳です。皆さんもぜひ見て感動の涙を流してください!