2024年7月19日
第220回
“がん経済毒性”って何?
 鬼の霍乱と言うか、2~3日前から風邪気味になって咳が止まらないので、PA錠を飲んだところ尿閉になってしまいました。これは辛いです!。膀胱がパンパンに溜まって尿意は強いのに尿が出ないのです。仕方なく看護師さんに導尿をしてもらって危機を脱しましたが、ベテランの看護師さんが出勤していてくれて良かった。若手だと何となく恥ずかしい・・・。
 と云う訳で今回は入院室からのコラム発信になります。

 皆さん、がん経済毒性と言う言葉をご存じですか?。私は医学雑誌で見るまで知りませんでした。がん患者さんの治療に伴う経済的な負担が問題視されており、それをがん治療の経済毒性と言うのだそうです。
 経済毒性の構成要素は①支出の増加、②収入・資産の減少、③不安感の三つだそうです。治療における毒性としては抗がん剤治療薬の循環器系合併症などの“がんの心毒性”も要注意ですが、この副作用は患者さん本人のみです。
 しかし、経済毒性の対象は患者さんだけでなくパートナーや家族にも甚大な影響を与えます。経済毒性が生ずる背景にはがん治療の進歩で医療費が上昇していること、生存率の向上で治療期間が長期に渡ることなどがあげられます。特に薬物療法の高額化が顕著です。
 化学療法、ホルモン療法、分子標的療法など多岐にわたり高額化していますが、治療法としては手術療法より多く、約8割の人が何らかの薬物療法を受けています。
 特に2000年代に入り分子標的薬の登場で大きく予後が改善しました。しかし、継続的治療が必要ですのでその分患者さんの負担も増えました。
 更に、薬物療法の高額化に拍車をかけたのが2010年代に登場した免疫チェックポイント阻害薬です。高額医療負担を使っても平均給与の15%以上を占めるほどになりました。経済的に治療費が払えないために治療を諦めた人もいるそうです。
 何とも切ない話ですね・・・。一方、がん保険に入っていた人は毎月の自己負担が軽減されて治療が継続できたそうです。2人に1人ががんにかかると言われているこの時代、がん保険も必要のようです。

 医者は費用のことなどあまり考えずに最善、最新の医療を進めがちですが、これからはその辺も考えて治療計画を立てなければいけない時代になって来たようです。
 いずれにしても患者さんは病気の不安と経済的な不安と両方気にしながらの闘病生活ですので大変つらいことだと思います。
 私も入院してみて患者さんの気持ちが身に沁みます(夏風邪くらいでは経済毒性はありませんが、年寄りですので病気本来の毒性が心配です)。