2009年2月20日
第35回
貴方のマスクは何用マスク?
そんな地球の環境悪化に対する自己防衛のためでしょうか。“外出時にはマスク着用が常識”と云う訳で、街ではマスクを掛けて歩いている人が随分増えました。思わず、「貴方は何用マスクですか? インフルエンザ? 風邪? あるいは花粉症? それとも伊達マスク?」と聞いてみたくなります。最近のマスクは機能的にも優れていますが、素材、デザインもカッコ良く、色彩に富んだものまであって、伊達マスクにもなり得えます。それでなくても昔からマスク美人と言って、マスクは七癖隠す優れものです。“七癖隠す”で思い出すのは、遥か遠い昔、私が医学部6年生の冬の事でした。スキーの滑降競技で勢い余って骨折し、(骨折したので大きな事は云えませんが、私は学生時代アルペンスキーの結構好選手でした。)春からインターンとして勤務予定の病院で手術を受けました。その時大きなマスクを掛けて、ほとんど目しか見えませんでしたが、でも凄い眼美人の手術室の看護師さんが優しく看護してくれました。春になればこの美しい看護師さんと一緒に働けるんだと、これから始まる手術の恐怖も忘れて、あらぬ期待に胸をときめかせながら何時しか麻酔で眠りに落ちました。やがて骨も治り、春が来てオペ室(手術室)勤務となったのですが、あの時の凄い美人看護師さんが誰だったかどうしても判明しませんでした。余談ですが、私は予防的にマスクを掛けて診察する事はありません。なんだか患者さんの病気を嫌がっているようで、患者さんに不快感を与えるような気がするからです。もっともこの季節、内科や小児科の医者は、背に腹は変えられません。相手が風邪やインフルエンザの患者さんばかりですから、自分が病気になっては仕事になりませんので、自己防衛的にマスクを掛けている人も多い様ですが、こればかりは格好つけてもいられないので仕方がありません。勿論私でも自分が風邪をひいている時は患者さんにうつさない様に配慮してマスクをする場合もあります。一方、患者さんでマスクをして病院へ来る人が多くなりました。確かに病院の待合室は病気の人ばかりですし、特に今の季節は感染症の人が多いので、余計な病気に罹らない為に予防するのは賢明だと思いますが、診察室に入られたら、予防的マスクなら外して頂いた方が良いと思います。我々スタッフが病原菌扱いされて好い気がしないと云う事もありますが、貌が見えないと病気の本質が見え難く診断を誤ることが有ります。これは脅しだけではありません。(少しは脅しもありますが)私はそこまで出来ませんが、昔の名医は患者さんの貌を診ただけで、ピタリと病気を当てたと言います。本当です?・・・。
さて、今回は花粉症の話をする積りでしたが、他愛も無いマスク談議が長々と先行してしまいました。これから本題に入ります。花粉症とは、スギ花粉などの、特定の花粉が眼に入ったり、鼻から吸い込まれたりする事によって起こるアレルギー症状の事を云います。原因となる花粉は50種類位ありますが、わが国では、スギ花粉症、ヒノキ花粉症が代表的です。特にスギ花粉症は日本独特のもので、平均温度が10度を超えると飛散し始めます。花粉に対する過敏症体質は歳と共に徐々に増強され30~50代で遂に発症すると云ったケースが多く見られます。一度発症すると自然に治る事は滅多に無い厄介な病気です。私も昔は花粉症は勿論、アレルギーには無縁だと思っていましたが、数年前からどうも様子が怪しくて、今年もくしゃみなどが出始めました。年の性で免疫力が落ちてとうとう発症したのかと心配しています。しかし、最近は低年齢化も進んでおり10人に1人が花粉症に罹患していると云われ、いわば国民病になってしまいました。原因は勿論、花粉の飛来が増加した事が一番ですが、飛来量だけでなく、車の排気ガスによる大気汚染や、舗装道路の増大、ハウスダスト、ダニアレルギー、生活環境の変化によるストレスなども原因だとされています。症状は鼻、眼、喉に来ます。先ず鼻の症状として、くしゃみ、鼻水、鼻つまりが3大アレルギー性鼻炎症状です。次に眼の症状は、アレルギー性結膜炎の症状として、目のかゆみ、充血、涙眼などがあります。喉の症状は、いがいがする、咳が出るなどアレルギー性咽頭炎の症状です。対策としては、今のところ根本的な根治療法がありませんので、“花粉との接触を断つこと”が基本です。しかし、最近は抗原の回避・除去療法、脱感作療法等の免疫療法や、薬物療法、手術療法など種々の治療が試されてそれなりの効果を挙げている様です。同病の方は具体的に耳鼻咽喉科の専門医に相談してみて下さい。きっと良い治療をしてくれると思います。そして出来れば今年はマスク美人ではなくて、マスク無しの本来の美貌を見せて下さい。期待しています!!