2020年5月20日
第170回
コロナ自粛で読書三昧
方や、我々医療機関は院内感染を起こさぬよう細心の注意を払いながら診療を続けてきました。もう2ヶ月以上続いていますので、当院のようなコロナ指定病院でなくても、この緊張感の連続に正直言って少々疲れてきました。
しかし、緊急事態が解除されても急に事態が好転する訳では無いので、ここでホッと一息と云う訳には行きません。この緊張状態がこのまま続けば、職員の疲労度は頂点に達してほころびが出るのでは無いかと心配です。
唯、私個人については、医師会や、産婦人科医会、ロータリーなどの会議や飲み会が全てキャンセルになって、午後から夜にかけてやることが無く全く暇になってしまいました。
夕食の後、奥さんとずうっと一緒にいてもお互いにイベントが無いので話すことも無く、ツイ余分なことを云って険悪になってもつまらないし、テレビも再放送ばかりで面白くない・・・。
そこで思いついたのが読書です。眼が悪くなってからは小さな活字が読み辛く頭が痛くなるのであまり本を読まなくなりましたが、昔は評判になった本はジャンルを問わず乱読していました。
思いついたらすぐ実行と書斎の本箱を開けたら、真っ先に派手な背表紙の隆慶一郎作”影武者 徳川家康”がアッピールしてきました。確か30年位前に三船敏郎主演で映画化もされた当時評判の小説で結構面白かった記憶があります。
作者の了解なしで内容を書いて良いかどうか判りませんが、「関ケ原の合戦の最中に本物の家康が暗殺者に殺された。家康の死が両軍に知られれば、戦況は一気に東軍に不利になる。そこでその場にいた少数の重臣が影武者に家康に成りすますよう要請する。影武者はこの合戦が終わるまでとの約束で偽家康に成りすます」。
ここからこの物語は始まります。「関ケ原には勝っても徳川の天下を安定させるには未だ”家康”の存在が不可欠のためお役御免とはならず、結局元和2年(1616年。史実の家康の没年)まで16年間も影武者が家康として君臨することになる。しかし、早く実権を握りたい2代将軍秀忠(この小説では親孝行の仮面をかぶった冷血無残、酷薄極まる陰謀家として描かれている)との暗闘が続く」。
”徳川実記”などを基に史実は正確に追っているが、なぜ起きたかの理由が影武者ならではの独特の解釈で普通の歴史書とまるで違うのが面白い。次々起こるお互いの攻防、策謀がサスペンス物のようにハラハラ、ドキドキさせ、両名とも途中で殺される訳は無いことは史実として分っていても絶体絶命の危機に立たされると、どう切り抜けるのかその章を読み終わるまでは止められず、結局毎晩夜更かしする羽目になってしまいました。
買った時に読んだはずなのに、上下巻それぞれ600ページもあるボリュームたっぷりの長編小説の性もあるかもしれませんが、個々のエピソードをほとんど覚えて無くて、初めて読むように新鮮な興奮を味わいました。
今は井沢元彦の”逆説の日本史”に挑戦中です。コロナ自粛のお蔭で秋の夜長ならぬ春の夜長を読書三昧で楽しんでいます。
皆さんも暇な夜は是非本を読んでください。新しい発見がありますよ!