2021年1月20日
第178回
新型コロナウイルスワクチンに期待する!!
 ”愛読者の皆様。新年明けましておめでとうございます”。
今年はこの新年のご挨拶に今一つ力が入りません。新型コロナウイルス感染症が未だ収まっていないので気持ちの隅にわだかまりがあり、心からおめでとうと云えないからだと思います。
 振り返ってみれば、昨年は新型コロナ騒動で病院業務も私生活も翻弄されっぱなしの1年でした。
 今年頂いた年賀状もほとんどの方が新型コロナで狂ってしまった非日常から早く解放されて、平穏な日々が戻ってくる年にしたいと云う願望に満ち溢れたものばかりでした。私も今年の病院の書初めに、おだやかな新年を切願して“平穏新春”と書きました。
 しかし、新しい年を迎えてもう20日ほどが経ちますが、コロナは終息するどころか増々増殖し、再び緊急事態宣言が出される始末です。今年もしばらくはこの話題ばかりになるのでしょうか。
 早く新型コロナウイルスワクチン接種が実施され、同時に特効薬が開発されて、鎮静することを願ってやみません。

 伝染病を早く終息させるためには、大勢の人にワクチンを打って集団免疫を作ることが一番有効な手段ですので、世界中の人々がやっと実用化された新型コロナウイルスワクチンに多大の期待を寄せています。全世界で迅速に実施して、夏には終息させて欲しいものです。

 ワクチンとは感染症の予防に用いる医薬品の総称で、病原体から作られた無毒化あるいは弱毒化された抗原を体内に投与して、病原体に対する抗体を産生し、感染症に対する免疫を獲得させて発病を予防、或いは軽症化させるものです。
 感染症予防においては最も効率的な手段ですので、現在では種々の感染症に対するワクチンが作成され、多くのものが乳幼児の内に定期接種されています。その結果、天然痘は根絶に成功し、ポリオ(小児麻痺)もほぼ根絶しています。
 ワクチンには生ワクチン(弱毒化ワクチン)と不活性化ワクチン(死菌ワクチン)があります。生ワクチンは毒性を弱めた病原体を使用するので、液性免疫だけでなく細胞免疫も獲得でき、不活性化ワクチンに比べ獲得免疫力が強く、免疫持続時間も長いですが、弱ったとは云え生きた病原体を使うため副反応が発現する可能性があります。代表的なものはBCG、ポリオ,おたふく風邪、麻しん・風疹混合ワクチンなどです。
 一方不活性化ワクチンは死んだ病原体を使用するので、生ワクチンより副反応が少なく安全性は高いですが液性免疫しか獲得できないため、免疫持続時間が短く、複数回接種が必要になります。代表的なものはインフルエンザ、肺炎球菌、Hibワクチンなどがあります。又、ワクチンには、ポリオワクチンや麻疹ワクチンのように一生抗体が付くものと、ある期間しか効かないものがあります。例えばインフルエンザワクチンのように毎シーズン接種が必要で、しかもワクチンを打っても、重症にはならないがインフルエンザには罹る場合もありと云う効果の低いものもあります。
 今回のCOVID-19ワクチンは弱毒化ワクチンで、2回接種が必要ですが、一生抗体ではなさそうです。

 さて、接種施行となると具体的には大変です。ファイザー社製の場合は-75度C前後での保管が必要で、最小保管単位も約1000人分と云うことですので、一気に接種しなければならないし、又感染しないようにソーシャルディスタンスを取っての接種、および注射後管理が必要となり広い場所がいります。普通の病院では精々1日に20~30人程度しか無理だと思いますので、大勢の人をまとめて接種するためには体育館のような大きな空間が必要かもしれません。そうなると医療者が出張しなければなりませんが、誰が行くのでしょう。
 尚、当院でも接種病院の申請をしており、春頃から1日10~20名ほどのワクチン接種が出来るようになると思いますのでご希望の方はお申し出ください。

 一方でインフルエンザに対するタミフルのような特効薬が開発されれば有難いのですが、未だ新薬のニュースは聞いていません。未だに抗ウイルス剤のレムデシビル(一時は効果に疑問を持たれていましたが・・)やアビガンの適応範囲を重症のみから中等症まで広げたり、ステロイド剤のデカドロン。関節リウマチに使われる抗体医薬品アクテムラ(この薬は免疫力をあげるので予防薬としても期待されている)等の既存薬が使用されているのが現状です。

 蛇足ですが、実は私は関節リウマチの治療のため7年ほど前からアクテムラを定期的に打っています。だからかなり免疫力が上がっていて多少のコロナウイルス位なら撥ねつけてしまうだろうと密かに自信を持っています。
 冗談です。油断大敵!コロナを甘く見てはいけません!