2024年6月20日
第219回
この症状、フレイルかも?
 30℃超えの暑い日が続いていて、梅雨の気配もありません。ニュースでは連日熱中症の注意を呼び掛けています。梅雨はジメジメ鬱陶しくて決して好きではありませんが、爽やかな春が過ぎ、梅雨を過ぎて暑い夏が来るのが昔からの日本の風情でした。いったい日本の四季はどうなってしまったのでしょうか。
 私はこの急な気候変化に付いて行けないようで、あまり元気がありませんが、皆さんはくれぐれも体調に気を付けて元気にお過ごしください。

 私が元気が無いのは「フレイル」かもしれません。皆さん「フレイル」と言う単語をご存じでしょうか。このコラムの愛読者の皆さんは若い人が多いと思いますので、知ってはいるが関係が無い、あるいは興味が無いと言う人がほとんどだろうと思います。しかし、80才を超えた私は大いに気になります。
 「フレイル」とは加齢や疾患によって身体的、精神的機能が徐々に衰え心身のストレスに脆弱になった状態のことで、要するに健康な状態と介護が必要となる状態との中間点にある状態のことです。このため身体的、精神的に明らかな異常が見られないことがほとんどで、血液検査や画像検査をしても診断出来ないことが少なくありません。
 そのためフレイル状態にあるかどうかを判断するのに指標が使われます。一般的にはFried氏の基準が用いられますが、以下の5つの項目の内3つ以上が該当する場合は「フレイル」。1~2つ該当する場合はフレイルの前段階の「プレフレイル」と診断します。
  1.体重減少(意図せずに1年間に4.5kgまたは全体重の5%の減少)
  2.疲れ易い(何をするのも面倒だと感じる日が週に3~4日以上ある)
  3.歩行速度の低下
  4.握力の低下
  5.身体活動量の低下
皆さんは如何ですか?年齢のせいと考えられる症状が多く、瘦せてきた、ペットボトルの栓が開けにくい、横断歩道が青信号の途中からでは渡れない、会合などへの出席が面倒になって来たなどの状態はこの診断基準に入ります。私などは皆該当しているようで心配です。
 フレイルを引き起こす原因は領域別に身体、心や認知、社会性の3つに分けられます。身体的な面では骨・関節・筋肉など運動機能に関わる器官の衰えが挙げられ、歩行や立ち座りなど日常生活を送るうえで必要な動作に支障をきたしているロコモと呼ばれている状態。筋肉量が減少するサルコペニアと呼ばれる状態などが含まれています。一方、心や認知の面では加齢に伴う認知機能の低下や抑うつ気分などがあげられ、家事や買い物など様々な場面で適切な行動や判断が出来にくくなることが問題になります。社会性の面では社会的に孤立しがちになり、引きこもりや孤食などが問題になります。又、これら3つの原因が重なることでさらに状態が悪化していくことです。身体機能の衰えによって外出が億劫になって引きこもりがちな生活になり、それが社会性の低下を引き起こします。又、引きこもりがちな生活が続くことによってさらに身体機能や認知機能が低下することに繋がり、心身の機能がどんどん衰えていくと言う負のスパイラルに陥るのです。
 一方でフレイルは適切な生活改善とか治療によって生活機能が以前の状態に改善する可能性があります。高齢化が進む長野県で松本市立病院がフレイル外来を開設し、健康寿命を延ばそうと街ぐるみでフレイル予防に当たっていると言うニュースが中日新聞に載っていました。又国立長寿医療研究センターが高齢者向けの在宅活動プログラム「HEPOP」を開発し、3ヶ月続けることでフレイルやプレフレイルが改善し健常な人が倍増したと言うデータを発表しました。
 高齢化が進む中で、フレイルに関する啓発と予防や治療の進捗が期待されます。