2007年6月20日
第15回
ジューンブライド(6月の花嫁)
一方、ジューンブライドとは限りませんが、梅雨の時期になると帯下(おりもの)が増えたり、外陰部が痒くなったり、所謂膣外陰炎の症状の人が増えます(これも統計を取っていませんので、私の推測ですが)。おそらく、梅雨の時期は湿気が多くて、湿度が高いのが膣外陰炎の増える原因だろうと思われます。その起炎菌のほとんどはカンジダ(真菌)、たまにトリコモナス(原虫)と云うばい菌でこれは性行為感染もしますが、空気中にも存在し、昔は銭湯などで、今でもプールや、スポーツジムなどの更衣室でうつる事もあります。一旦感染すれば夫婦だけでなくお風呂などで家族的にも感染しますので要注意です。又夫婦の一方だけ治療しても、行ったり来たりでなかなか治りませんので、夫婦両方の同時治療が必要なことが多いです。しかし、カンジダやトリコモナスは自然発病的で、ある程度仕方がありませんが、私が危惧しているのは、同じ膣炎の症状でも、クラミジア・トラコマチスとか、淋菌と云った性行為感染症(所謂性病)が増えていることです。これは季節とは関係ありません。行いの問題です。実はこのような性病が風俗営業の人達だけでなく一般の人にも増えてきたと云う事は4~5年前から云われていましたが、星ヶ丘マタニティ病院では、罹患者はごく稀で私には増えた実感がありませんでした。“それは星マタが患者さんの層が良いからだ”と、ほかの医者から言われていて、成る程と納得もし、自慢でもありました。しかしここに来て特にクラミジアの感染者に時々遭遇します。星ヶ丘マタニティ病院の患者さんの層は変わらないと思いますので、所謂良い層の人達にまで、浸透してきたのは由々しき事だと心配しています。クラミジアは最初のうちは多少帯下が多い程度でほとんど無症状ですが、放っておくと子宮内膜炎となり、腹痛や発熱を伴い、もっと進むと、骨盤腹膜炎となって、命に関る重篤な症状を起こすことがあります。治ってもこれが原因で不妊症になる人も多く、厄介な病気です。新婚旅行から帰ってきて、ハネムーン膀胱炎なら微笑ましいが、クラミジア頚管炎では洒落にもなりません。でも現実にはそんな症例が幾つかあります。一方、未婚の人では、新しく就職したり、進学したりした人が、早くもセックスパートナーを得て、その結果感染するのかなと勘ぐったりもしています。これは新しいタイプの5月病と云うことでしょうか。本来は新しい環境に馴染めなくて、親元へ帰りたい、国へ帰りたいと云うホームシックが5月病だったのに・・・。
いずれにしても、クラミジア感染症の人がごくごく普通の人にも増えて来て、当病院でも多くなりました。これも性の開放というか、性に対する考え方の変化の結果で、世の中の流れなのでしょうが、私などには決して良い変化とは思えません。もう少しお互いに相手を思いやり、そして自分も大事にしたいものです。私は今の性教育の方向性に付いて行けなくて、性教育の現場から撤退した産婦人科医ですので現在の性教育の主流からは外れていますし、今更とやかく言っても詮無いことですが、中学校や高校の性教育は避妊や性病に罹らないテクニックを指導するだけでなく、情操教育にも力を入れて欲しい、せめてセックスは遊びの道具ではなく、愛の最終的表現法として大切に扱いなさい位の事は指導して欲しいと改めて痛感しています。話がそれましたが、今年も大勢の幸せなジューンブライドが誕生しますよう心からお祈りしています。