2005年11月18日
第9回
厚生労働大臣賞を貰った
予定では<奥方の更年期障害と亭主の対応その2>を書くはずでしたが、大臣賞を頂いたので感激 ( ? ) がさめないうちに、その事について触れてみたいと思います。
母子保健に対する特別な研究をした訳でもなく、又家族計画に対し、積極的に活動した訳でもなく、医者になって40年、ただひたすらに元気な赤ちゃんが生まれるように働いてきただけですので、多少面映い気もしましたが、折角ですから遠慮なく頂けるものは頂いてきました。
しかし、考えてみれば母子共に健全な分娩が出来るように対処する事が、もっとも大事な母子保健かもしれません。お役所もそんな所に目を向けて、一介の開業医である私などを推薦して下さったのだと、納得することにしました。
確かに立ち会った、又は管理した分娩の数の多さでは、現在活躍中の愛知県の産婦人科医の中でも5本の指に入るだろうと思います。勿論ただ数が多いだけでは自慢にもなりませんが、自慢したいのは、統計的にも星ヶ丘マタニティ病院の産科データは、世界で一、二を競う高水準のわが国の周産期統計よりもなお20%くらい良い結果を出していると云うことです。
と言っても残念ながら今の医学レベルでは100%結果オーライと言う訳にはいきません。残念な結果になり、悲しい、口惜しい思いをした事も時としてありました。
これは特にこれからパパやママになる方に知っておいて欲しいことですが、現代の産科学を持ってしても助ける事の出来ない早産、死産、脳性麻痺、母体死亡などがまだあります。世間ではいつの間にか、お産は安全だと言う、お産神話のようなものが出来あがっていますが、それは間違いです。お産は昔も今も変わらず女性には危険な一大事業です。産科学の進歩と、産科施設、スタッフの努力によって管理が良くなって、異常の数が減っただけです。
当院においても、私が全ての分娩に立ち会うのは物理的にも肉体的にも無理ですが、分娩が近づいたら全ての妊婦さんの分娩経過予想とその対策を検討します。この人はこんな風に進みそうだから、こうなったら気をつけろとか、こんな時にはこうしろとか言う事です。年の功か、経験の量か、勿論学問的知識も踏まえて、大体予想どおりに経過します。その対処法を担当の医師や助産師に前もって指示していますで、落ち着いて、しかも早く対応が出来、良い結果を得ていると思います。
自慢ついでにもう一つ自慢しますと、私がこれだけ多くの分娩に関われたのは今までに沢山の妊婦さんが当院に来てくださったからです。どうしてこんなに妊婦さんの支持を得られたかと考えますに、「患者様に優しい周産期病院」をめざして「安全でしかも快適な分娩を!」をモットーに努力し続けたのが、患者さんの考えと一致して、共感を得られたのかなと思います。
これからは分娩に対する考え方も益々個性化し、多様化してきますので、安全性を軽んぜずに、どこまで多様化に応えられるのか、悩ましい面もありますが、患者様に優しい周産期病院として、安全性と快適性の両面を追求していきたいと思っています。
さて、今年の表彰式は奈良の奈良県文化会館でありました。大臣表彰だから是非出席するようにと云われて、しかも大臣表彰者は少ないから、会長表彰の人達とは違って、一人一人舞台に上げって表彰状を受けるのできちんとした服装をして行くようにも云われました。推薦を受けて書類を書いたら通ってしまったので、それほど大した賞でもないと思っていましたが、周りの人から大臣賞はチョッと違うよとか、なかなか貰えないよとか色々云われて、だんだんその気になって、当日は木曜日でしたが、石丸副院長に無理を言って病院を休ませて貰い、朝早くからいそいそと出かけました。
奈良県文化会館は県庁や美術館、奈良公園に隣接しており、緑豊かな素晴らしいロケーションの所にありました。鹿も居ました。受付の職員も丁寧親切で、何となく偉くなったような気分で案内された席に着きました。ところが周りを見ると同じリボンをした人が沢山目に付き、又別な色のリボンの人も大勢いて、渡された式次第の中にあった受賞者名簿を見たら、大臣表彰だけで58名もいました。他に会長賞、議長賞などの人を加えると、優に150名を超えていたと思います。今年は多人数のせいかも知れませんが結局大臣表彰も他の表彰と同じ様に代表受賞で、しかも厚生労働大臣は欠席で、若い課長が代理で出席していました。ちなみに文化の日の文化勲章の表彰式は天皇陛下も総理大臣も代理ではありませんでした ( 例えが違い過ぎるか ) 。表彰式が終わって頂いた、わりご弁当が侘びしかった事もあって、やはりそれほど重みのある賞では無いような気がして病院を休んでまで来た価値があったのかなと思いながらの帰路でした。
愚痴っぽくなって、話が面白くなくなりました。今回はこれ位にして次回は<奥方の更年期障害と亭主の対応その2>を掲載予定です。もし今月の掲載を期待して待っている方がいらしたら御免なさい。