2009年2月1日に当院にて名古屋大学大学院教授の上田実先生をお招きして、再生医療セミナーを開催することとなりました。是非ともご参加ください。今回のコラムでは、セミナーの開催に先立ちまして再生医療の予備知識についてお話したいと思います。
再生医療とは障害を受けた細胞、組織などを再生し、あるいは人為的に再生させた細胞や組織を移植することにより、組織を回復させようとするものです。この「再生」という言葉はもともと発生生物学において用いられていた言葉で、失われた生物の体の一部が元通りに戻ることを意味していました。ヒポクラテス以来、病気はその原因の除去および生体防御反応の修飾により、自然回復を待つものと考えられていました。しかし、このような病気による臓器の障害も一定の限度を超えると戻すことができなくなり、機能の回復さえも難しくなります。現在では、原因の除去、現状の維持が治療の限界といった面もありますが、このような疾患の回復に対しましても改善することが可能となってきました。この再生医療は再生能を有する幹細胞、細胞の増殖、分化を促進する生理活性物質、足場という三要素により組織再生を行おうとするものです。主役は幹細胞であり、培養という操作で必要とされる量まで増やしていきます。
名古屋大学歯科口腔外科が開発しました注入型培養骨に用いる幹細胞は様々な間葉系組織(骨、軟骨、神経、筋、歯周組織など)に分化することが分かってきました。培養骨ではおもに骨になる細胞へ分化誘導します。この培養骨は患者様に応じた、ご自身の生きた幹細胞、血液より調製します多血小板血漿(PRP)を混合し応用するオーダーメイド医療であるため、必要とされる組織を効果的に再生でき、免疫拒絶などの問題も回避され易く、安全性も高いと考えています。 形態はババロアのような堅さのゲル状で注入できるため、複雑な形態を呈する歯科、顎顔面領域においては最適で、歯槽骨が吸収してしまった症例(歯周病、インプラントのための歯槽骨再生など)に応用できます。現在、名古屋大学で最初に適応した症例も6年を経過していますが大きな問題は見られていません。また、当院で行った症例でも1年を経過しておりますが問題は同じく見られておりません。自己の若い幹細胞を用いる、体に優しいこの新しいテクノロジーは審美的回復への応用も可能となってきており、高齢社会におけるQOL(quality of life)向上型医療の新たな可能性を持った、究極のアンチエイジング医療、夢の先進医療となりつつあります。
再生医療科歯科口腔外科医長
八島明弘